第76話 ハルリ
「ハルリ、そろそろなんとかならないかな?
実は来週からモンスターのタスクに同行させてもらうことになったんだ
今の実力では足を引っ張ることになりそうなんだ」
「待ってくれ、俺も大変なんだよ
戦場ではみんな薬を欲しがってる、そっちの方がお前より切迫してる
なんせ敵味方両方に売りつけられるんだ、物がいくらあっても足りない」
セムとハルリはバルムド中央から少し外れたスラムの一画に居を構えている。
二人の家は数軒しか離れていない。
同じ長屋の一部のようなもので、セムの部屋はハルリにとっては自分の部屋のように慣れ親しんだ場所だった。
「ハルリ、それはないよ
俺たちは金のために活動したことなんか一度もない、全ては女神様のためだろ?
今律動連盟に取り入っておかないと、政府の弾圧に耐えられるか?
戦場で捨て駒にされているのだって同じ女神真教の仲間たちじゃないか
それを黙って見てるばかりか、薬を売りつけてボロボロになるまで戦わせる気か?」
セムは普段から口が達者ではないが、ハルリにだけは別だ。
「…セム、俺は自分の考えだけで動いてるわけじゃない
組織に入ってる以上そっちの言うことも聞かないといけないんだよ
一人で薬屋をやってた頃とはわけが違うんだ
……でも、わかった、来週だな、用意する
だが、いつまでも後払いは無理だぞ
金は用意できるのか?1粒で効き目は2時間
ランクは低い代物だから、振動倍率は1.2倍かな
500ピアルでいい」
「……わかった、2粒くれ」
「オーケー、あさっての朝受け渡しにくる
お前も薬だけに頼らず少しは修行しろよ?」
「…ありがとう」
ハルリは余計な捨て台詞を言って去っていった。
セムも薬を使わずに強くなれるのであればそれでいいと思っている。でもそもそもの入団試験において薬を使ってしまっている以上、履いてしまった下駄を脱ぐわけにはいかない。
「女神様…ご加護を」
セムは部屋の中心に置いてある小さな女神像に祈りを捧げる。彼にとってはこれが救いの象徴だ。




