第72話 ドル
「いや、内戦なんていうのは一度も聞いたことがないよ
それどころか、どこに移動するにもこの国は盗賊や山賊も少ないらしくて、あまり危険性がないんだって
王様や、その周りの人たちの治政が良いらしいんだけど… 」
「恵まれてるよ、むしろ恵まれすぎていると言えるな
王様に感謝しないとね」
「もしかして…君の仕事って傭兵か何かなの?」
「そんな奴らと一緒にしては欲しくないな」
青年は少しだけ言い方を強めた。その雰囲気にシュンは若干たじろいだ。
「ごめん、怒らせるつもりはなかったんだ」
「いや、こちらも何も話さないでおいて悪いな
あまり言えないけど、戦闘の指揮官という意味では一緒かもしれないね
君は戦争に参加した事は無いんだろう?
それならおれとはもう会う事は無いかもな」
「戦場で会う必要なんてないよ
生きていれば、またどこかで必ず会えるんじゃない?」
シュンの言葉にパッと表情を明るくする青年。
「平和な世の中なんて来るのかな?
その言葉に踊らされて、こうやって旅をしているような気がするけれど」
「どういうこと?旅をしながら平和になる方法を探しているの?」
「ふふふ、そうだよ
クロック王国の人たちとは、仲良くやれそうだな」
「それは嬉しいよ、みんなが仲良くできればいいんだけど」
「君の国のトップは今グレディモール王だろ?
彼の時代はもう15年続いてる
おそらく、あと20年しないうちに隠居だろう
次の王でも同じように平和なままと思うか?
王政が続く限り、民が自らの意思と関係なく危険にさらされる可能性をいつも孕んでいる
それは君たちが、政治に参加する権利がないからだ
そうだろう?」
「そうか、クロック王国には選挙とかは無いのか…」
「グレディモール王も、その右腕のハシュフリードだって、君たちが決めた為政者ではない
民にとって最良の政治がいつまでも続くとは、おれは思わない」
青年は言い切った。その声に力強さを感じる。
その時、シュンを呼ぶライドンの声が聞こえた。
「おい、シュン!何してる?
もういいってさ!」
「あ、ありがとう!今行くよ」
シュンはその場を立ち上がった。
「君、シュンって言うんだね」
「そうだよ、君はなんていうの?」
「おれは…
おれは、ドルだよ」
「ドル…じゃあね、また会えたら!」
二人は別れた。彼らがまた再び出会うことになるかはまだわからない。




