第68話 スウィング
「なんだ、シュンはスウィングがやりたいのか?」
「あ、はい
とっても興味があります」
エイジーンは右手のスティックをくるくると回し、ピタッとライドシンバルの前にスタンバイして見せた。
「俺のやり方になっちまうけどな
スウィングはほとんど右手だけでリズム構成するんだよ
左手は添えるだけというか、味付けだな」
ツーーツーツツーーツーツ
ツーーツーツツーーツーツ
(これだ、このリズムだ…)
ライドンはこれにやられた。シュンも初見でこれを出されたら、何をどう表現したらいいのかわからない。
「シュン、お前もスティックを使うんだろう?
アップダウンはやるか?」
「え、それが…
最近ようやくやり始めた位で、まだ全然染み付いてません」
「そうか
それがお前の弱点かもな
それだけの多点構成だと、アクセントによる色分けがなくてもある程度の表現ができちまうからな
見てな、スウィングは確かに8分の6拍子のように思えるが、よく聞くと表の1、2、3、4拍目に強くアクセントさせている」
「ツ」ーー「ツ」ーツ「ツ」ーー「ツ」ーツ
「ツ」ーー「ツ」ーツ「ツ」ーー「ツ」ーツ
言われてみると、そのようになっているのはすごくよくわかる。
だが、自分でやるとなると全くの別物だった。
どう考えたって難しすぎる。
しかしそれを乗り越えた先には、何か新しい世界が思いっきり開けるような…シュンにはそんな気がしていた。
「エイジーンさん、もし可能でしたら、
これから4日間毎日ぼくにそのリズムを教えてもらえますか?」
「え、本気かよ?
ゼロからこれを習得しようってのか?」
「だめでしょうか…?
お金はいくらかなら持ってますが」
「はは、いいよ
今回の5日間の護衛料の中に入れてやる。
この旅で1ヵ月余裕で暮らせる位の金をもらってるからな
この国の為にもお前には成長してもらわないといけないことだし」
「やったー…!
あ、ちなみにアミリアさんはどんな技を使うのでしょうか?」
「え、ウチにも聞くの?
まあ、ドラム見せてもらったし、別にいいけど…」
アミリアはラトローシュ使いだった。
彼女はリバウンド技術に長けていて、手首を素早くスタッカートさせる技術はこの国一だということだ。
二人からの指導は、シュンにとってタラブの商人に会うこと以上にこの旅の重要な出来事となった。
※補足
スウィングの技術はジャズスタンダードでよく出てきます。
右手でライドシンバルを4分音符っぽく刻むことで、日本ではフォービートと言われることもあります。
左手は自由に8分の6の中で踊らせることになりますが、この旅でシュンはそこまで習得できるのでしょうか?
アミリアの持つリバウンドの技術は、スティックを使うプレイにおいて大いに活躍するものです。
打面にアタックすることで反発する力をそのまま上に逃がして、連続的に音を出し続ける技術をいいます。




