第53話 護衛
「君も行くの?」
「当たり前でしょ
こんな面白そうな話、ついて行かないんじゃ損よ」
そう言うなり、華麗に馬車に乗り込んでみせるサビアラ。
「あのさ、知ってるとは思うけど、ドルリダントまではだいぶ危険な場所も通過しないといけないんだぜ」
あのライドンもサビアラにはどうしても遠慮がちだ。
「知らないわけないでしょう
だから護衛をつけるんだってば
お父様が用意したんだからそりゃ優秀な人よ」
有無を言わせない雰囲気のサビアラ。
当然スポンサーである彼女の言う事は絶対であるため、シュンもライドンもこれ以上は口を挟めない。
三人を乗せた馬車はクロニア聖拍院へと向かって進み始めた。
馬車の寝室兼荷台には、大きくディアニルズの紋章、そして律動連盟の紋章をつけた旗が掲げられている。
これは明らかに、盗賊や山賊などの輩を遠ざける目的と思える。
中を見ると、寝具以外にもいくつかの木箱が積み上げられていた。
「サビアラ、後ろの木箱は何なんだい?」
「砂糖と塩、香辛料と、あとはビブラハーネス、振動計などの装置よ」
「へえ、それって」
サビアラはシュンにニンマリと笑顔を向けた。
「ただ行くだけってわけにはいかないでしょ、当然仕事よ」
サビアラの話によると、クロニアはモデロ川を中心に発展した都市なのだそうだ。
この世界の物流は基本的に水路が主で、川を使う場合、下流へは船で運び、上流へ向かう際は陸路を使うことになる。
今回は高地へ向かう陸路での移動となるため、砂糖や香辛料などの高級品を、この機会に内陸の街へ運ぶのだという。
当然利が乗る。護衛にかかる費用も十分に賄えるらしい。
ビブラハーネスや振動計は、紛争を抱えるタラブ王国が最も欲している品であり、とにかく急ぎ性能の高いものだけを積み込んだそうだ。
ドルリダントは港町で、外島は海に面した場所にある。
本来であれば海路を通るべきなのかもしれないが、今回は陸路を選ぶ。
まず今回の目的は荷運びそのものではないため、船の積載量という利点を活かす必要がない。
そして一般的には、盗賊や山賊の被害が少ない海路の方が安全とされるが、その点においても今回は陸路の方が適しているようだ。
6年ほど前にハシュフリードが宰相となって以来、クロック王国では徹底した賊の取り締まりが行われてきた。
さらに政治の安定によって失業者も減り、犯罪に手を染める者自体が少なくなっている。
ディアニルズにとって賊は物流の大きな障害であったため、ハシュフリードの政策はまさに追い風だった。
クロニアの商家が一団となって支援したこともあり、クロック王国の陸路はここ数年で非常に安全になっている。
その上最強の護衛をつければ、そもそも脅威は大きく下がる。
万が一、難破や沈没が起きた場合、いくら優秀な護衛がいても意味をなさない海路と比べれば、なおさら陸路の方が理にかなっている。
そして、その最強の護衛の待つクロニア聖拍院に馬車が到着した。
すでに目的の人物はこちらに気がついたようだ。
サビアラは手を振って答えている。
「こっちよ、二人とも」
「サビアラ、おは
世話になるわね」
どこかで聞いたような声が外から聞こえる。
かちゃ。小さな手が馬車のドアを開けた。
「あれ?どういうこと?
あんたたちが今回の依頼主ってこと?」




