第52話 出立
翌日、授業が終わるとシュンとライドンはサビアラに呼び出された。
学院からほど近い商館のひとつだ。
そこは3階建ての石造りで、白に近い淡い灰色の外壁は丁寧に磨かれていて、周囲の建物よりも一段だけ清潔に見える。
入口の上には、金属でDの紋章板が掲げられていた。
「よく来たわね、こっちよ」
サビアラは慣れた様子で2階の一室に二人を連れて行った。
「お父様に話したのだけど、タラブの商人と接触するのは全く問題ないそうよ
むしろわたしが貿易商売に興味を持ち始めたと思ったみたいで、嬉しそうにしてたわ」
「本当に?やった」
シュンはただ強くなり、この世界を救うことを使命に感じていた。
でも今はそれだけじゃなく、前の転移者に会うことが何よりの『自分の目標』になっていた。そのための手がかりは何だってほしい。
何事も受け身になりがちだったシュンが、これだけは自ら前のめりになって志願するようになっていた。
「じゃあ、もう馬車を用意してあるから、行きましょう」
「…は?いや、何日もかかるんだよね?
いろいろ用意するものもあるけど」
「大丈夫だわ、着替えだってあるし、必要なものはだいたいあるわ
制服は目立つから、ここに普通の商人に見える服があるから着替えてね
学校にも連絡してあるから、登校は来週からでいいのよ
ドルリダントに着いたら、壁に囲まれた外島と言われる区域があるのだけど、その中にディアニルズの商館があるわ
すでに連絡済みだけど一応通行証もここにあるからね
大丈夫と思うけど護衛も二人つけたから、これから聖拍院に迎えに行くからね」
二人はサビアラの手際の良さに舌を巻いた。
その話ぶりから人を使わずに自ら手配したように伺える。
外に出ると、あのつい先月イーサップを往復したのと同じタイプの高級馬車がそこにあった。
乗車席と寝室が分かれていて、4頭の馬はそれぞれビブラハーネスを装着済みだ。
「またこの馬車に乗れるのが嬉しいぜ」
ライドンが乗車席に飛び乗った。
続いてシュンも乗り込む。
「いろいろありがとう、サビアラ
頑張ってくるよ」
「…は?
わたしも行くんだけど」
「え?」




