第51話 タラブの商人
「フリック大陸…ちょっと聞いたことないわね
わたしもユルシールを出てしまうと、正直よくわからないわ
お父様からはタラブ王国との貿易だけやってれば良いという風に言われてるし」
シュンは少し残念な素ぶりを見せた。
「そっか…いや、無理なお願いだったかも
ごめんね」
その態度がサビアラに火をつけた。
「待って、このクロック王国にいる限り、外国の事はよくわからないけれど、タラブ王国の商人と会ってみれば色々と聞くことができるわ
それでどうかしら?」
「本当に?それは願ってもない話だよ
でもいいのかな?お父さんには怒られない?」
サビアラは確信に満ちた余裕の笑みを浮かべてみせた。
「お父様がわたしを叱るだなんて、そんな事は今まで一度だってないわ
ましてやお仕事のことに興味を見せるんだもん、喜びこそすれ怒られることなんてありえないわ
貿易は常に行っているんだもの
今夜お父様にお伺いを立てれば、明日にでもタラブ商人と会う準備ができるはずよ」
なんと頼もしい返事だろうか。
この世界に来て以来、シュンは常に人には恵まれてきたが、もしかしたら彼女は一番の協力者となってくれるかもしれない。
「あなたの行きたいところに連れてってあげるわ
明日、学校で会えるの楽しみにして」
サビアラは嬉しい一言投げかけて去っていった。
さっきまで騒がしさが嘘のように静まり返る。
「なあ、シュン
お前、サビアラと結婚するのか?」
「そんなわけないよ
おれはまだ16才だし、今はまだそんなことを考えるのは早いだろう?」
ライドンは不思議そうな顔でシュンを眺めている。
「おれの地元だったら16やそこらで結婚するやつはいっぱいいたけどな
まあクロニアとか、こっちの都会だと少し早いかもしれないけれど」
ここにもシュンの世界とのギャップはあった。
確かにこっちの世界の人たちが多産なのは、早く結婚していることも理由としてあるのかもしれない。
「でも、タルネの告白を受けたのはつい二週間前の話だろ
そんな簡単に移り気できないよ」
「ふぅん
そしたらタルネは側室でいいんじゃないか?」
「側室!?やめてくれよ
そんなシステム知らないよ」
慌てふためくシュンが、ライドンには面白い。
「まあいいけどさ、サビアラのとりなしでタラブの商人に会えるとなったらお前、行くのか?」
「もちろん行くさ!知りたいからね、外の世界のことが」
「なるほど
向こうの商人に会おうと言うなら、国境の港街ドルリダントに行く必要がある
鎖国している手前、その街から外国人は出られないことになっているんだ」
「そうなんだ…結構遠いのかな?」
「かなり遠いよ、この国の西端だからな
多分徒歩なら片道一週間くらいかかるんじゃないか?
しかも、途中盗賊や山賊に襲われない保証があるのか?」
「確かに…危険な旅になるのかも…」
「だろ?
仕方ない、おれも着いていってやるか
お前のためだ」
「…ありがとう」
(…絶対一緒に行きたいだけだよな)




