第50話 二大商家
「この国最大の財閥…ってことか?」
珍しく声が小さくなるライドン。
こう見えて、彼はかなりの庶民派である。
「一人っ子なんだ…おれと同じ」
シュンはこの世界に来て初めて一人っ子に出会った気がした。
ライドンも兄弟がたくさんいるらしいし、イストも二人、タルネも三人兄弟だ。ネリに至っては八人もいるという。
「そうよ、だからお父様にもお母様にも、相手はよくよく見定めるように
なぜならその人は後のディアニルズ家を背負っていく人物になるのだから
と、いつも言い含められてるの」
ライドンは開いた口が塞がらない。
「シュン、ディアニルズの姫さまなんて一生かかってもお目にかかれない相手だぞ…」
「そうよ、というか
それを言うならスジャータはエヴァンス家だわよ」
「エヴァンス、まじかよ
あの、御無礼な態度すみませんでした」
シュンは、あの貴族に対しても噛み付いていくライドンが商家相手には縮こまってしまうのが面白かった。
「ディアニルズとエヴァンスが仲良くしてるなんて不思議だなあ
てっきり商売敵かと思ってたけど」
「エヴァンス家は銀行や保険等、金融全般よ
それに対しディアニルズ家は物流が中心だから、かち合う事はないわ
むしろ、ディアニルズの運搬業務等はエヴァンスの保険を大いに頼っているの
お互い持ちつ持たれつの良い関係だわ」
「あのさぁ、シュン
タルネとか、やめた方がいいんじゃないか?
ディアニルズとエヴァンスはこの国最大の商家、二大巨頭だ
なかなか出会える存在じゃないぞ」
「ふふ、どうやらわかったみたいね」
「ライドン、おれは人を家柄で見たりはしないよ
それに約束を破るわけにはいかない」
その様子に改めて感嘆するサラビナ。
「もう、そう言われるとどうしても自分のものにしたくなっちゃうわ
いいわよ、今すぐ翻意してくれなくても、わたしはわたしの持ってる力を全部使って絶対好きにさせるから」
サビアラは自信があった。もちろん彼女自身の魅力も大いにあったが、その恵まれた背景を生かして、今までもたくさんの望みを叶えてきたから。
「サビアラ、ディアニルズってこの国の物流のほとんどをやってるんだろう?
もしかしてタラブ王国との貿易もやってるの?」
シュンは一番気になること投げかけた。
「あら、貿易に興味があるのかしら?
もちろんよ、タラブとは庶民の行き来は禁止されているけど、貿易はやって良いことになっているもの
それどころか、あそこの国を介してなら、このユルシール大陸全体や、それ以外の世界中の国とも貿易していいのよ」
「本当に?
すごい!それならサビアラはフリック大陸というところを知ってるかい?」




