第48話 最強チーム
シュンの足元には、もう一つドゥンバが何やら器具に固定されて転がっていた。
さらにそこには、ドラムのペダルがしっかりと置かれている。
そして、シュンの左側には、シンバルが重なって顕現されている。
「どういうことなの?わからない
何をしようとしているの?」
当然、サビアラにはじめての体験である。
シュンの不思議なスタイルに、彼女は今までの態度とは打って変わって若干の焦りを見せ始めた。
「じゃぁ、行くね」
BPM 100
ドチタチドドドタチタ
ドチタチドドドタチタ
「待って、何なのよそれ?
足を使っているの?どうやって…?」
サビアラはパニック状態だ。ひとまずシンバルを具現化しようと試みるも、うまくいかない。
仕方なくドゥンバでやってみる。
BPM85
ドンタンドドタント…
「だめだわ…全くわからない」
雲行きが怪しくなってきた。もっとも、サビアラが悪いわけではない。
ドラムセットの無いこの世界で突然足を使えと言われてもどうしようもない。
「もう一度やろうか?」
「……見せてもらえるかしら?」
BPM 100
ドチタチドドドタチタ
ドチタチドドドタチタ
「…え?
わからない、わからないわ
何がなんだか… 」
がくっと、膝をつくサビアラ。
その瞳からは涙がこぼれ落ちる。
「サビアラ…大丈夫?」
スジャータが心配そうに、肩を落とすサビアラに近づき声をかけた。
「おい、シュン
お前初めてゲームに勝ったんじゃないか?」
「それを言うなよ、ライドン
サビアラ、大丈夫?」
今さっきコテンパンにやり込められたその相手にまで優しく気を遣われて、サビアラの心は情けなさでいっぱいだ。
「あなた…何者なの?
強いわ、私よりずっと
なぜ隠してたの?」
ドキリとするシュン。
「いや、隠してるつもりはないんだけどな
最近になって強くなった実感はすごくあるんだけど」
「シュン、言ってやれよ
お前のレベルは300近くあるってさ」
「なんですって!?」
サビアラとスジャータはその場に尻餅をついた。レベル300の若者がいるだなんて聞いたことがない。それこそ伝説の律動師ジルを除いては。
「どういうこと?信じられない
あなたたちってわたしたちと同じ16才よね?
スーノとデコイですらそんなレベルには達してないわ
この王立学院高等部最強の二人がよ」
「そうだね、おれもつい1ヵ月前は大したことなかったんだけど、いろいろあってね」
そう聞いて、サビアラは自分の心当たりを探ってみた。
「……もしかして
先週噂になった、ドラゴンをやっつけた若い律動師のチームがあるってあなたたちじゃないでしょうね?」
意外な質問に顔を見合わせるシュンとライドン。
「なんでそれを知ってるの?」
途端に、パッと表情が明るくなるサビアラ。
「やっぱりそうなのね!なんてことでしょう
ジル様が集めた最強の若手律動師チームがいて、その子たちがグレイグで大活躍したという話が出回ったのよね
それなのに、どんな口止めが入ったのかその後一切その噂はしぼんじゃって何だったのかしらと思ってたのよ
まさかあなたたちがあのジル様の作ったチームの一員だなんて
素晴らしいわ、女神様に感謝しないと」
サビアラは何かと情報通らしい。というか、噂話が何より大好きといった感じに見える。
「そうとなれば話は別だわ
あなたたち、これまでの非礼を詫びます
わたしが全面的に悪かったわ」
態度を180度変えるサビアラ。
むしろ気持ち良さすらある。
「いや、おれのせいで授業が遅れてしまったのであれば、怒るのはもっともだよ
だからこちらこそ申し訳ない
それより大丈夫だった?怪我はないかな?」
地面に座り込んだままだったサビアラに、そっと手を伸ばすシュン。彼女はその手をとって、ゆっくりと立ち上がった。
「ありがとう、大丈夫よ
さすがね、あのジル様のお弟子さんだなんて、心も美しいみたい」
少し間を置いて、サビアラは何か考える様子だった。
「シュン、明日の放課後、時間があるかしら?
もしよかったら家に来てくれない?」
「明日?特に何もないから放課後なら大丈夫だけど
君の家に行ってもいいのかい?」
「ぜひ来て欲しいわ、お父様に紹介したいの」
突然のことに驚くシュン。
「お父様だって?何か緊張するな」
「緊張しなくていいわ、シュン
わたしのボーイフレンドになってくれるかしら?婚約者でもいいわ」
「えーーーーっ!」




