第37話 エイカー
バクバク、バクバク。
ティンタは戦いのあとの食事の時間だ。
リトムに奢らせてほしいと言われ、皆は街の食堂の奥の部屋で遅い昼食を取ることにした。
もちろんここは組織の経営する店だ。
「ドロイアンさん、ティンタはどこでここまでの実力を付けたのですかな?
正直目の前で見せていただいた今でも、まだ信じられない
彼女はまだ十代ですよね?」
「16才です
彼女もまたヌァンラの影響が大きいでしょう
ヌァンラはティンタの成長がそのままエイカーの拡大に繋がると周りにも言っていた
それが彼女を奮起させる力の源となったと言えるでしょう」
「またヌァンラ様ですか、彼はエイカーの存在そのものと言えそうですな」
「まさにそうです
ヌァンラはバルムドの律動連盟とも深く関わり、たくさんの支援を受けていた
結果的に連盟のおかげでティンタも成長できたわけです」
「ティンタは連盟入りはしていないのですか?」
「…こちらとしてはそうしたいですが、そのためのお金はティンタが自分で捻出したいのだそうです
今回の対抗戦もティンタが連盟の正規律動師だったら選ばれる可能性もあったでしょうに…」
「これほどの実力がありながら代表入りするのもひと苦労とは、階級制度の弊害が出ましたな」
「ディルモ教はそもそも拍に重きを置いてません
律動連盟や女神真教は、拍の力を女神さまからの授かりものとして大切にしている
そこに大きな違いがあるのです
でも、40年前はディルモ教徒がこの国の9割を占めていました
女神様崇拝を是とする律動連盟など取るに足らない存在だった
そのため問題なく各地に聖拍院の認可を与えられていたのです」
「それが今は6割まで減りました
手前味噌ですがヌァンラ率いる階級制度撤廃組織、我々エイカーの活動も大きいとは思っております
ですが、一番はやはり市民がそれぞれ目を覚ましているのが大きな理由です
王の取り巻きの十侍僧はもうのっぴきならない状況と見て強行手段に出ました
それがヌァンラの投獄です
彼を救出できたとき、それがこの国の変わるときなんです」
「わかりました
そのときこそ我々が協力するときですな
ただ、ヌァンラ様が解放された暁には織物とアプリコットやドライフルーツは必ず我が方から仕入れていただけるのでしょうな?
それを確約してくださることで我が元首ムスィキ様は新政権をお認めになると仰っています」
キムルは横に控えて二人の話を聞いていた。
リトムとドロイアンの会合の目的も理解した。
気配を消し、まるでそこに誰もいないかのように沈黙しているが、会話の内容は全て記憶している。
ドゥール(奴隷)として普段は発言権が無いのも手伝って、キムルはそんな特技が身についていた。
そういう点も買われてドロイアンの側付きになっている。
多少の機密であっても、ドロイアンはキムルなら問題ないと思っている。
ヌァンラやドロイアンのいなくなった後は、このキムルが…とまで考えているのかはわからない。




