第36話 レベル300
「悪いが、少し店を貸してもらうぞ」
地下のアジトを出て階段を上がると地上は古びた酒場になっていた。
まだ昼時だ。この時間じゃ店はやっていない。
店主は察したように入り口の鍵を閉めた。
テーブルと椅子は片付けられていて、充分戦えるだけの空間がある。
ティンタとオハングでは体格がずいぶん違う。
ティンタはせいぜい身長160センチ。
だいぶ痩せ型で、運動はできそうだがパワーは無い。
逆にオハングはさすが護衛をしているだけあって、鍛えられた体をしている。
身長も180センチ近くあり、まともに戦えばティンタはひとたまりもないだろう。
だが、これは拍の戦いだ。体格など何ら関係は無い。
ティンタが自分の拍を顕現して見せる。
タラブ王国の代表的な楽器といえば、そう。ラトローシュだ。大小二つの太鼓を使う。
バスケットボールとサッカーボールくらいのサイズだ。
オハングが出したのは、ジギダウの楽器、トゥテカだった。
これは丸い木枠に皮が張られたようなものだ。
「こっちから、いいかしら?」
ティンタは行く構えだ。
「どうぞ」
オハングは先手を譲る。
少し前屈みになり、リズムを繰り出す姿勢を作るティンタ。
体には自然と白い光が浮かび上がる。
「はっ!」
BPM180
タカタカタカタカタカタカタカタカ
タカタカタカタカタカタカタカタカ
「なんだと?
いきなりフィルの連打か!?」
リトムはリズムのことを少し知っているようだ。
「リトムさま大丈夫です、対処します」
オハングは片手使いだ。
左手にトゥテカを持ち、構えを作る。
彼の体は黄色の光に包まれた。
「はっ」
指先を器用に使ってトゥテカを打ち鳴らす。
BPM180
タタタタタタタタタタタタタタタタ
タタタタタタタタタタタタタタタタ
「早いっ!」
ドロイアンも初めて目の当たりにするトゥテカの演奏に興奮する。
「小娘、なかなかやるじゃないか
こっちも行くぞ」
BPM110
ドンスタタンスドドンスタタンスド
タカタカタカタカシャシャーン
気づくと、オハングの右前方にシンバルが2枚顕現されていた。
「あらら、そっちもいけたのね」
ティンタはシンバルを2枚、こちらは左前方に顕現するティンタ。
「痛くても我慢してね、ゲームだから」
BPM110
ジャンスタタンスドドンスタタンスド
タカタカタカタカ「タカタンタ, タカタンタ」タ
「なっ…早い」
BPM110
ジャンスタタンスドドンスタタンスド
「タカタンタ, タカタンタ, タカタンタ, タカタンタ, タカタンタ」タ
「うぐ…なにを…ぐわっ!」
一瞬ティンタの白い光が増した気がした。
その瞬間にオハングは2メートルほど後ろに飛ばされ、尻もちをついていた。
初めての経験に目を丸くするオハング。
リトムもただ呆然としていた。
ティンタは当然といった表情だ。
ニヤリと笑う白い歯が光る。
「高速バケラッタ3つ割りよ
片手使いにはきついでしょ」
「はは…こりゃまいった
おれもドゥンバでいけばよかった
リトムさま、この娘の実力は確かです」
※補足
バケラッタは16部音符2回と8分音符2回の組み合わせの技です。
ティンタはそれを32分音符と16部音符でやりました。




