第103話 雨 2 《挿し絵あり》
カフェガンボは、こじんまりとした木造の建物だ。席はテーブル席が5つあるが、こんな雨の日じゃ客は誰もいない。
三人は雨の雰囲気が見たくて窓際の席に腰かけた。
「ハーブ入りのパンをくれ
あとはチーズな
それにオムレツと
飲み物はミルクでいい」
ライドンは早い。食べるものが決まってるからだ。
これでたったの550クラン。
人気があるわけだ。
「安いですね、すごくいいお店です」
「ネリは何にする?はちみつとかもあるよ」
「腹減ってたらメインディッシュも出してくれるぞ、ステーキだって、頼めば朝から焼いてくれるぞ」
「さすがにそれはいいですよ
そうですね、迷いますね…」
ネリは楽しそうだ。
昨日のショックはもう見られない。
やっぱりネリは笑ってる方がずっと可愛い。
「…あ、」
ライドンが何か思い出したかのように一瞬青ざめた表情になる。
「やばい、おれ、花園のタスクがどうなったかボスに報告しろって、師匠に言われてたんだ」
「え?それっていつまでなの?」
「まずい、昨日には伝えないといけなかった…
おれ、ステラに会わなくてよくなったから、浮かれてて忘れてた」
「大丈夫なのか?それって」
ガタッ、急いで立ち上がり、コートを羽織るライドン。
「すまん、待っててくれ!
すぐに聖拍院に行って戻るから!
1分で戻る!」
ライドンは慌てて駆け出していった。
1分で戻れるわけないだろ?
二人は笑っている。ライドンは面白いやつだ。
ーーーーーーーー
タルネはひとまず聖拍院に向かった。
シュンがいる可能性が一番高い。
ビジスは常宿だが、もう十時になる。そこにはもういない気がする。
(何かタスクに向かったかしら?
受付の人に聞いてみよう)
タルネはとにかくシュンに会いたかった。
その一心しかない。
ぬかるんだ道を踏みしめてゆく。
雨は少しずつ強くなっていた。
タルネは足元を見ながら一歩一歩進んでゆく。
ガチャン!!
バシャッバシャッ!!
その横を大きな音を立てて走り去る人物がいた。
(ん?)
ーーーーライドンだ。
でも今日は制服を着ていない。
しかも雨用の大きなコートにマントを羽織っているためそれがライドンであることにはタルネは全く気づかない。
ふと顔をあげた。
(慌ただしい人…)
そのまま横を見た。
この世界のガラスはシュンのいる現代のものとは違う。
透明度はなく、まるですりガラスのようだ。
ーーーーでも。
だれがそこにいるのかは、わかる。
ハッキリと、わかる。
タルネは見た。
シュンと、向かい合って座っているのはーーーーネリだ。
二人は楽しそうに話している。カフェで。
ライドンはーー?
いない。
シュンはいつもライドンと一緒だった。
まさに相棒。
その姿がーー。
店全体を見渡しても、いない。
どこにもいない。
タルネには何がなんだかわからない。
自分の感情がなんなのかもよくわからない。
ただ、頬を滴り落ちてくるものが雨の雫ではなく涙だということだけは、わかる。




