第8話 『地下の冒険』
しばらく待つとリチアがまた指輪から現れた。
『待たせたわね』
「一体何を調べてきたんだ?」
『このアデルハイトに昔からある大規模な地下通路を調べてきたの』
「地下通路?」
「アデルハイトは長い歴史がある都市です、今は殆ど使われていませんが、張り巡らされた通路がアデルハイトの地下全域に存在します」
俺の疑問にラシエが答えてくれた、そしてリチアが話を続ける。
『先程見せて貰った地図だけど、アデルハイトであそこまで入り組んでいて、規模が相当な場所となるとその地下通路しかないわ、そう当たりをつけて調べてみたら……』
「どうやら当たりじゃったみたいじゃな」
ちっこいリチアがふふんとドヤる。
見た目は理知的にも見える女性だが、精神面にはまだまだ小生意気な小娘の部分を持っているようだ。
「なら早速行ってみるか」
『ええ、頼むわよ。私は用事があるからしばらく外すから、何か面白い事があったら呼びなさい』
「どうやって?」
『ラシエが知ってるわ、いい? 何か面白い事があったら必ず呼ぶのよ?』
ちっこいリチアはそう言い残して消えた。完全にノリが動画配信の視聴者のそれだな。
本当に自由な令嬢様である。
「それじゃあ出発なのじゃ!」
こうして俺の『オデッセアの七宝』と言う宝探しの冒険が始まった。
冒険者ギルドを後にし、俺達は市街地の外れにある地下通路への入り口から地下に入る。
先ずは階段が続いた。そして地下にたどり着く、通路の天井付近にはほのかに光る球体が嵌め込まれていて視界は確保出来ている。
「地下通路はその名の通り地下に迷路のように広がっています、迷子にならないようにお願いします」
「了解、まあ都市の地下だし魔物なんていないんだろう?」
「いますよ、まあ駆け出しの冒険者でも対処可能な魔物くらいですが」
嘘だろ、ゲームとかなら有り得るだろうけど現実にそんな近くに魔物が潜んでいるとかヤバくないか?
「たまに城の兵士が巡回して魔物を掃除しているので大丈夫ですよ」
「そ、それならまあ……」
「なんじゃ? モンスターマスターのくせに魔物を恐れているのか?」
「当たり前だろ、普通に怖いって。こんな暗くてジメジメしてる所に出る魔物とかさ、でっかいネズミとかコウモリみたいなヤツじゃないか? あとクモとか、ああ言うのがデカくなってる魔物とか超苦手なんだよな~」
「カズミ様にも苦手な物があるんですね」
「意外じゃな~」
「どういう事だよ!」
「いえ、リチア様にもほぼ同じ態度でしたので…」
「……?」
「つまりじゃ、貴族相手にもそんな明け透けな態度のヤツがそんな生娘みたいなノリで怖がっておる事に驚いとるんじゃ」
なんでだよ、リチアの方は向こうが呼び捨てにして良いって言ってたし、話し方とかも特に何も言われなかっただろ。
「あのな~そう言うのを気にするタイプのヤツはリチアみたいな接し方はしてこないの。もっと粘着質と言うか、口では立派な事を言っても小物臭い気配が直ぐにバレるんだよ」
「……なるほど、年の功と言うものですね」
「俺まだ三十代半ばだからさ、そう言うのを言われると傷付くからね?」
「すみません」
「心が繊細な中年じゃの~」
うるせぇよモチバア。
「…………今、わしに失礼な事を考えなかったかの?」
「いやいやまさか、そんなね……」
モチのくせに勘が鋭い。
地下通路を移動していく、すると魔物が普通に現れた。
赤い目と黒い身体、そして翼を持つ魔物だ。なんかコウモリを少し愛嬌良くした感じの魔物が現れた。
犬っぽい頭は多少デフォルメされている、だが如何せん敵意が凄くて可愛い~とはしゃぐ気にはなれない。
数は四体もいる。
「キーキーキーッ!」
「シャドーバットじゃな。おぬしが言う通り、暗い所を好む魔物じゃ」
「てか、魔物は兵士が退治してくれてるんじゃなかったのか?」
「おかしいですね」
ラシエは頭を捻るだけだ、仕方ないので俺とシロミが前に出る。
何気にこれが初のモンスターバトルだ。
「シロミ、分かってると思うが俺は雑魚だ、何も出来ん、だからお前の力が頼りだぞ!」
「任せるのじゃ! おぬしにはわしに美味いごちそうを用意する使命があるからの、傷一つつけさせんぞ!」
やる気満々のシロミがシャドーバットを迎え撃つ。
ラシエがいるが、ここはもう一つのスキル『魔物ステッカー』でヤツらの情報を得るべきか?
ラシエに見られるとまずリチアにも話がいくだろうし、悩むな。
「キーッ!」
「言葉も話せぬ手合いか、まっ最初から話し合う気もなさそうじゃがのう」
シャドーバットが連続で上から体当たりしてくる。
それをシロミは余裕で躱す、結構闘い慣れしてるんだな。
上手くヤツら全員の注意を引いている。
「シロミ! ここで爆弾とか出すなよ!」
「爆弾?」
「出すわけなかろうが! この程度の連中などこの黒き兜だけで十分じゃ!」
ヘルメットを兜とか言うのやめてくれる?
シロミは懲りずに体当たりをしてきたシャドーバットにヘルメットを使った頭突きで応戦した。
地面に落ちるシャドーバット、ヘルメットの方が硬かったみたいだな。
「まだまだー! 魔力結晶を更に食べて力をちょっぴり取り戻したのじゃ、こんなものではないぞ!」
言うとシロミはポヨンポヨンと地面を移動する。
それが結構速い、シャドーバットの一体にお返しとばかりに体当たりをかましてぶっ飛ばした。そのシャドーバットは壁に叩きつけられ気絶する。
慌てた残りのシャドーバットが通路の天井付近まで飛んで逃げる。
「甘いわ! 魔黒鋼飛来棘!」
シロミのヘルメットから黒い棘が無数に生えた。
さらにそのヘルメットをシャドーバットに向けると、棘が小さなミサイルみたいに発射され、シャドーバット達を打ち落とした。
コイツ……ガ○ダムみたいな攻撃方法を覚えやがった。
「シロミ、お前いつの間にそんなエグい技を覚えたんだよ」
「わしはおぬしが出してくれる食べ物を食べれば食べるほどに強くなるのじゃ、だって呪いが弱まるからの」
「モチメットがこんな攻撃能力を持つとは知りませんでした、カズミ様の連れている魔物は只者ではありませんね」
「まぁの~~」
シロミはシャドーバット達に完全勝利した、そして調子に乗った。モチモチの肌が更にテカテカと艶めいている。
調子に乗ったシロミはズンズンと前を進む、俺達はそれについていき、地図を確認しながら進んでいくと今度はまた別の発見があった。
なんか、傷だらけの兵士が四人いた。
「うう、くそ」
「……っ!」
「おい、そこの兵士さん達、大丈夫か!?」
「お、お前たちは?」
「俺達は冒険者だよ、依頼でここに来たんだ」
話しかけると兵士達は無事ではあるが、それぞれ身体のどこかを怪我していた。
どうやら魔物に襲われたらしい。
「俺達はアンダーラットに襲われたんだ」
「アンダーラット?」
「ソイツらも暗い所を好む魔物じゃな」
「連中は犬くらいの大きさだ、一体ずつなら大した事はないが群れで行動する、しかもアレはこれまで見た中で一番大きな群れだった」
デカいネズミの大群とか鳥肌もんだな。
それがこの先にいるの? 帰りたくなってきた。
「カズミ様、私は回復魔法が使えます。この方達を助けてもよいですか?」
「回復魔法!? そりゃ凄いな、是非助けてやってくれ」
「あ、ありがとう」
「助かります」
ラシエが兵士達を数分で回復させてしまった、回復魔法凄いな。
兵士達はラシエに感謝しまくりだ。
怪我が治った兵士達はやる気満々、これから仲間を呼んでそのアンダーラットの群れを退治すると息巻いてる。
「お二人とモチメットも」
「シロミじゃ!」
「……お二人とシロミもこの先に行くのはお勧めしません、今日中に我々がアンダーラットを排除するので引き返しませんか?」
「もちろん無理にとは言いません、助けられた我々が言える立場でもないのですし」
まあ街の兵士から見れば本来守る立場なのに助けられてるしな。
しかしお宝探しをしている俺達としては大勢の兵士に来られて場を荒らされるのも困るって話で。
「まあ様子を見ながら行こうと思います、無理はしませんから」
「連中は食欲の塊でやたらと鼻もいい、食べ物などを持ってると襲われる危険性が増えます」
「と言うか我々は持ってた食料を連中に投げつけて、その隙に逃げて来ました」
「それでは我々は失礼します」
兵士達は足早に去って行った。
「さて、これからどうするんじゃ?」
「兵士の方々が仲間を連れて戻ってきて、アンダーラットを排除するのを待つのも手ではあります。探索の進行は遅れますが」
「……いや、俺に一つ考えがある。それを試してみたい」
シロミとラシエが俺に視線を向ける。
俺も自称モンスターマスターだからな、少しは魔物相手に人間様の知恵を見せてやろうって話だよ。
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