第4話 『冒険者になった』
「はい、ではこの書類にサインをお願いします」
「分かりました」
俺は受付の女性がカウンターに置いた一枚の紙に名前を書く。
もちろん漢字じゃない、しかし意味は和盈真と言う俺の名前なのだと理解出来る文字だ。ミミズが様々なポーズをとってるような文字である。
アデルハイトの城門に辿り着き、並ぶ人々の列の最後尾に立ち、そしてその列が進み俺の番となった。
城門の左右にはカウンターと受付の人がいて中に入りたいって人とやり取りをしていた、俺もその受付の一人と話をする。
受付の女性曰く、中に入りたい人は名前や入りたい目的を説明する必要があるらしい。それとカウンターに置いてある水晶に触れる必要があるとか。
この水晶明らかに犯罪歴とかを看破するファンタジーアイテムか何かだろ、触れたが何も起きなかったが明らかに受付の人の態度が軟化したからな。
書類にサインをした、内容はもちろん確認したが都市内での犯罪はしない、した場合は都市の法律によって裁かれる事に同意するって内容だった。
「ありがとうございました、アデルハイトにようこそ」
「どうも、ところでここって余所者の俺でも働ける場所って何処かありませんかね?」
受付の女性はシロミをチラッと見た。
「モンスターマスターの方でしたら」
「モンスターマスター?」
「はい、そちらのモチメットは貴方の連れている魔物ですよね?」
女性がシロミを指差す、確かにヤツは俺の連れなので頷いた。
「はい、シロミは俺の連れです」
「モンスターマスターの方なら近々闘技場で大会が開かれますから、そちらで良い成績を残せば賞金が出ると思いますよ?」
闘技場でモンスターマスターの大会か、なるほどそう言う文化があるお国柄とか世界観って訳ね。
それなら魔物をうまいこと仲間に出来そうなスキルを持つ俺でもやっていけるかも、問題は今はまだこの爆弾メットしか仲間がいない事とコイツが未だに弱体化中らしいって事か。
大会の賞金も魅力的だが、やはりコツコツ稼げる仕事が知りたいな。
「大会ですか、けどまだシロミしか仲間がいないしお金もないので出来れば余所者でもお金を得られる仕事が知りたいのですが」
「それなら冒険者ギルドに登録して冒険者になるのが早いですね」
うおっマジか、やっぱりあるんだ冒険者ギルド。
そして冒険者とかいうファンタジージョブ。
「確かに貴方の考える通り余所の国や街から来た人が就ける職種は限られます、これは世の中の常識です」
「そりゃそうですよね」
外人がどんな職にもつけますとかなったら社会が狂う。
素性も分からない変なのが大量に入り込んで来て大変な事になるからな。
何の責任も取る気のない権力者とか本物の馬鹿以外はそんな事は内と外できっちり線引きするくらい当たり前だわ。
「もちろん誰でもなれる反面、冒険者は危険も多い仕事ですのでオススメ出来るとは私も言えません。しかしモンスターマスターは連れている魔物を鍛えたり、依頼で各地を巡り新しい仲間を探すのを目的として冒険者ギルドに登録する方もいますよ」
「それなら一度見に行ってみようと思います」
「分かりました、それでは冒険者ギルドまでの道順ですが……」
ギルドまでの行き方を教えてもらい、受付の女性に礼を言って城門からアデルハイトに入る。
それにしても冒険者は危険らしい、ファンタジージョブではないっぽいな。
まあリアル異世界だからな、楽で儲かる仕事なんて根なし草と化したアラサーが就ける訳ない。
「シロミ、色々と大変かもだけど頑張ろうな」
「よいぞ、但し食い物は用意してもらうからな」
「ああ、分かってるよ」
元手はタダだからな、本当に良いスキルをゲットしたもんだ。
俺達は説明された道を進み冒険者ギルドに着く、冒険者ギルドは3階建てくらいの木造建築でかなり立派な建物だ。
両開きの扉は開放されていて如何にも冒険者って感じの格好をした様々な武器を持った人間が出入りしている。
強面、優男、チビ、美女、デブと本当に色んな冒険者がいるもんだ。内心、異世界で冒険者ギルドに来たので少しドキドキしている36歳の俺。
中に入る、冒険者達の多くは入って右奥にあるカウンターに向かっていた。俺もそれを真似て向かう。
カウンターには数名の受付嬢がいてそれぞれが冒険者に対応している、丁度空いている受付嬢がいたので話しかけた。
「すみません、今日このアデルハイトに来たばかりの者なんですが。冒険者ギルドに登録したいんです」
「当ギルドへの登録ですね、それではこちらの書類に記載をお願いします」
茶色の長髪と茶色の瞳を持つ受付嬢は慣れた感じで一枚の書類をカウンターに置いた、俺も内容を確認しながら記入していく。
名前、年齢から始まり生まれ故郷や得意な事など様々な質問が記されていた。
あと自分のジョブについて質問された……流石に無職と書くのは嫌なのでさっきのやりとりで出て来たモンスターマスターとやらを俺のジョブにする事にした。
書類を書き終わり、受付嬢に提出する。
彼女はうちのシロミをチラッと見て書類に目を通していった。
「……はい、問題ありません。それではカズミ様、今日から冒険者として依頼をこなしますか?」
「いえ、実は朝から移動しっぱなしでご飯も食べていないんです。今日は旅の疲れを取りたいので明日か明後日から依頼を受けようと思います」
乾パンと水筒はいつ街に着くか分からなかったから残してたんだよな、アデルハイトが見えてからはここで美味い食事がしたくて腹ペコでも我慢してここまで来たんだ。
「分かりました、カズミ様の冒険者としての活躍を当ギルドも期待しています」
ザ・社交辞令をいただきました。それでも若くて綺麗な女性に言われると嬉しいな。
何はともあれ今日の目的は終了と言う事にした、と言う訳で俺とシロミは何か食べに冒険者ギルドを後にする。
もちろんお金は人攫い共から頂戴した袋の銀貨とか銅貨だ、金の価値に関してはアデルハイトに入る時に並んだ列にて前に並んでた商人のおっちゃんにそれとなく聞いてみたのでぼったくられる事はないと思う。
「ふぅ~にしても腹減ったな、シロミは何か食いたい物とかあるか? 俺、この街の事なんて何も知らないから名物とか知ってたら教えて欲しいんだけど」
「いやわしも攫われてここまで来た魔物じゃからな? そんなの知らんのじゃ、適当にそれらしい店に入れ、それと食後には……」
「はいはい、食後のデザートはちゃんと用意してやるから」
本来は、報酬ってのは働きに応じて与えられるものだ。
そしてこの爆弾メットの働きとは俺を人攫い共から助けてくれた事……なんだが、その時に俺も爆発で吹っ飛ばされて全身痛かったんだよな。
プラマイゼロ、と言うか個人的にはむしろマイナス。
そんな真似をしておいてこの厚かましい態度はやはり魔物とは人間と思考回路が違うんだろうな。
まあ先行投資みたいなもんだ、今後のこの爆弾メットの活躍に期待しよう。
そんな事を考えながら俺は飲食店を探した。
読んでいただきありがとうございます。
面白い。先が気になると思ってくれた方はブクマと【★★★★★星評価】をお願いします。
それが作品の継続に繋がります。




