第3話 『ニックネーム』
「おお~アデルハイトが見えて来たぞ~」
「やっとか、ふぁ~あ、おらっ起きろヒロ」
「う~ん? キヒヒッすいやせん頭」
どうやら人攫い共は目的地の近くまで来たらしい。
俺は自由になり既に着替えて取り上げられた旅行カバンも取り返している、てかよ、自由になってから結構な時間が経ってんのに本当に一度も様子を見に来なかったぞアイツら。
どんだけ油断しまくりなんだよ。そんなんだから人攫いなんてする人生送るんだぜ。
まあいいか、俺はモチメットを見る。
「それじゃあ先生、お願いします」
「うむ、任せるのじゃ」
このモチ、割とノリが良いな。
モチメットの回りに黒い金属片が現れる、それが合わさっていき、球状の黒い塊が完成した。
それを人攫い共がいる、馬車の前方にポイッと放るモチメット。
「魔黒鋼爆弾」
……は?
「ちょ、お前今ボムって言ったよな!?」
ボカァアアアアーーーーーーーーーーンッ!
「どわんごぉおーーーっ!?」
「なんだばぁああーーーっ!?」
「えむぼまぁあーーーーーーっ!?」
「おっぴろげーーーーーーーっ!?」
「ふう……ガード成功じゃ」
爆発に巻き込まれた人攫い共と爆発に吹っ飛ばされた俺はそれぞれ個性的な叫び声を上げる。
俺もモチメットも宙を飛んだ後は地面に落ちて転がった。
痛い、もう全身が痛いんですけど。
「おいっお前ふざけんなよ! 流石に爆弾かますとか何考えてんだ!?」
「悪いが今のわしの使える攻撃手段はアレか体当たりくらいしかないのじゃ、それにわしは無傷ですんだからの」
「そりゃあ、その背中の黒いヘルメットで守れば自分だけは平気だろうな!」
モチメットは本当に防御力は高いらしく、さっきの爆発でも余裕そうだ。
馬車の方を見ると大破していて2頭の馬が逃げている姿が見えた、一応見に行くと人攫い共は爆発で頭がアフロになってはいたが気絶してるだけで生きていた。
流石に命を取るまではしたくなかったので良かった。
まあ地獄には落ちればいいとは思うけど。
「どうするんじゃコイツら?」
「別にどうもしないぞ、流石に街が近いって言っても大人を3人も運べないしな。馬車の荷台からは食料とか水とかは貰えるだけ旅行カバンに入れてるし……後はコイツらが所持してる物の中から使えそうなのを全て貰って見逃してやろうと思う」
「おぬしは本当にイイ性格をしとるの~」
「それ、褒めてんのか?」
そして倒れた人攫い共から銀貨や銅貨が入ってた袋と剣を一振り頂戴した。
武器も手に入れたので見た目は本当に冒険者だな俺。
用事も済んだので連中が目指してた街に向かう事にする。
「あっお前も来るか?」
「もちろんじゃ、おぬしと共にいればまたあの魔力結晶を食わせて貰えるんじゃろ?」
「現金なヤツだな~まあいいさ、いこう」
まだ距離はあるが立派な城塞都市が見えているので迷う事はないだろう。
にしても荷物が結構重いな。
気を紛らわせる為にモチメットに話を振る。
「なあ爆弾メット」
「誰が爆弾メットじゃ」
「冗談だよ、実はさっきこのステッカーに触れた時にお前の種族的なのがモチメットってのは分かったんだが個人名とかは分からなかったんだ。そっちが良ければだけど自己紹介とかしないか? あっ俺の名は和盈真だ、よろしく」
「カズミマコトか……わしの名前は……そうじゃの~おぬしが付けよ」
「えっ何でだよ」
「今のこのみすぼらしい姿では本来の名なんぞ名乗れん、じゃからテキトーでいいから呼び名くらい好きに呼ばせてやると言っとるんじゃ」
ニックネームって事か? ポケ○ンかよ。
「じゃあモチメットで婆さんみたいなしゃべり方をしてるから……モチばあとか」
「許さんぞ」
「………んじゃあ黒いメットしてるからクロメットールとか」
「嫌じゃ」
「わがままだな~お前~」
後は何かあるか? う~~~~んと。
コイツの特徴はその白い餅のような姿か黒いメットだ、んでメットの方を意識したニックネームは嫌らしい。
ならやっぱり白い餅みたいな姿から考えるか。
う~んこのアイスの雪○大福を思わせる姿から取るか。
ユキミ? ダイフク? シロフク? ユキシロ?
俺は悩んだ、そして決めた。
「なら、シロミでどうだ? 俺の故郷でお前の身体の色はシロって呼ばれてるんだよ、んで女性っぽい感じを足してシロミだ」
「ほう、まあ先の二つよりかはマシじゃの。それでよいぞ、わしはシロミと名乗る。それではこれからよろしくのマコト」
「おう、よろしく」
子供の頃はよくマコトと呼ばれていた、高校くらいからは名字がカズミだからカズと呼ばれていたな。
マコトと下の名前で呼ばれるのはかなり久しぶりだ。
そんなやり取りの後、しばらく歩き続けていたら俺達は目的地に辿り着いた。
「これはまたすげぇな」
「アデルハイト、人間の国でも有数の大都市らしいぞ。わしは魔物だからあまり知らんが」
そこにはまさに中世ヨーロッパ的なファンタジーな城塞都市があった。
高く巨大な城壁が円形に近い形で都市を囲んでいる、入り口と思われる場所には結構な人の姿が見えた。
きっと入るのに手続きとかあるんだろう、俺みたいな余所者が果たしてあんな街で生活出来るのか?
不安が大きい、しかしここで立ち止まっていても何も現状は好転しない。
なら進まなきゃな。
「いいね、ここから俺の新たな生活が始まるんだ……多分な!」
「何故多分なのじゃ?」
そりゃあお前を連れてるからだよ。
魔物は連れていては入る事は出来ません、とか言われたらどうしょうか、今から考えなければ。
大した交渉スキルもない俺はない頭を働かせながら異世界の大都市へと歩きだした。
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