第2話 『ボコられて、魔物と出会う』
いや~まいったまいった。
何とか話し合いをしたかったが連中は相当に短気な人間の集まりらしく話しかけたら秒で拳が返ってきた。
ボコボコにされ、動けなくされた後は連中が持ってる屋根付きの馬車に放り込まれた。
その後は足枷をされた、短い鎖が繫がっていて馬車から逃げられないようになってる。
しかも旅行カバンも来ていた服も剥ぎ取られパンツ一丁になってしまった。殴られた顔と身体が痛い、泣きそうだ。
僅かな収穫として普通に連中の言葉が分かった事とこちらの言葉の内容は連中が理解していた事が分かった。
何しろ連中が笑いながら「話し合いだと? 馬鹿かテメェはッ!」と言いながら人をボコボコにしてくれたからな。
いつか見てろよ、あの野郎共。
ともかく現状の確認だ、放り込まれた馬車の中には木箱や樽が幾つかあった。馬車は馬2頭で引いてるヤツで結構大きめのヤツだったな。
そこに鎖に繋がれたパンイチの俺、そして牢屋に入れられた謎生物がいる。
そう、謎生物である。まさかコイツは魔物なのか?
「……」
「………なんじゃ、ジロジロと見おって」
喋った、当たり前のように喋ったぞこの謎生物。
丸くて白い餅みたいな身体、赤いルビーみたいに綺麗な目、そして背には黒いメットみたいな物を背負っている。
カタツムリとかヤドカリ的な? まあ餅みたいな姿だけど。
「一つ聞いてもいいか? お前は魔物ってヤツなのか?」
「当たり前じゃ、それ以外の何に見えると?」
「そうか、魔物は初めて見るから驚いた」
「あ? 魔物をその歳まで見たことがないじゃと? おぬしは長年何処ぞの屋敷の地下にでも監禁されていたのか?」
「そういう訳じゃないが……」
なんかあの人攫い共よりも普通に魔物との方が会話が成立している事に複雑な気持ちになる。
「お前も捕まっているんだよな」
「見ての通りじゃ、せめてわしの力が僅かでも回復していればあんな汚らしい連中など瞬殺だったのじゃがの~」
のじゃ系モチモチはどうやら弱体化してるらしい。
「力の回復か~お腹空いてるのか? もしかしたら食べ物くらいなら何とかなるかも知れないぞ」
「パンツ一丁のおぬしがどうできると言うんじゃ、そもそもわしが力を失ったのは過去に色々とあって、してやられた呪いの類での、何かを食べたところで回復せんのじゃ~」
「………そっか」
くそ~もし本当にこののじゃ系モチモチが強かったら食べ物を恵んでやるから助けて欲しかったのに。
いやまてよ……このモチの現状をもう少し詳しく知れば何か変わるんじゃないか?
幸いな事に人攫い共は馬車の先で無駄話をしていてこの荷台には一人もいない、見張り役くらい用意しとけよバ~カとは思うがそれが今はチャンスだ。
俺は自分の持つスキルを試してみることにした。
何をどうすればいいのか分からんけど、とりあえず念じてみる。
まずは『魔物ステッカー』とやらだ。
ステッカーよ生成されろ~このモチモチの魔物ステッカーよこ~~い!
「む、魔力の気配が……て、おぬし何をしとるんじゃ?」
念じると俺の目の前にキラキラと光が発生した。
その光が形を変える。そこには1枚のステッカーが現れた。
デフォルメされたこのモチモチ魔物のステッカーだ、それを俺は手に取った。
途端にこのモチの情報が頭の中に入ってくる。
種族はモチメット。
呪われていて弱体化している。
危険度は低く弱い。
戦闘力は低いが背中のメットの防御力は高い。
好物は硬い魔力結晶。
魔力結晶とは様々な色合いを持つ美しい結晶で大量の魔力を含み浄化の力も宿す結晶である。
備考として……強力な魔力結晶を食わせればその弱体化の呪いを弱める事が出来る!?
これが『魔物ステッカー』とやらで得られる情報か、悪くないじゃないか。
何気にステッカーの完成度も高いし、これはコレクションとかしたくなってしまうな。
ってそんな話は後にして。
「このステッカーは俺のスキルで生成されたもんだ、そして俺はお前のステッカーを生成した」
「何故そんな事をしたんじゃ?」
「この魔物ステッカーには触れるとそのステッカーの元になった魔物の情報が触れた俺に流れてくるんだ、お前の言っていた封印とか呪いとかについてだが。もしかしたらその呪い弱める事なら出来るかも知れないぞ?」
「なんじゃと?」
その方法とか俺はもう一つのスキル、『魔物のエサ』だ。
魔物の好物を生成するスキルならこのモチメットの好物を見事生成してみせろよ。
さっきステッカーからの情報で魔力結晶とやらの事もある程度は分かってるからいける筈。
スキルを発動だ。
魔力結晶よ生成されろ~~、なんか美しい結晶で魔力とやらを含んでいて浄化の力も宿してる結晶よ出てこ~い。
それ、本当に食べ物なのか?
そんな疑問とは関係なくモチメットの前にキラキラと光が現れる、そしてそれはステッカーの時と同様に形を成して別の物に変わった。
魔力結晶とやらが本当に現れた。
「どうだ、魔力結晶ってのはこれで間違いないか?」
「ま、まさか……これ程の品質の魔力結晶などわしは見たことがないぞ。これをわしに与えると本気で言っとるのか!?」
「ああっそして出来れば人攫い共から俺を助けてくれ。ギブアンドテイクってヤツだ」
これはさながら初期投資ってところか、このモチメットがどれだけ使えるかは分からないが魔物の力ってのを見せてくれる可能性に賭ける。
「……分かった、お主の話に乗ってやるのじゃ」
モチメットは自身が閉じ込められてる牢屋の中に出現した魔力結晶にモチッと触れる、すると食べ始めた。
あんな柔らかそうなのがあんな硬そうなのをバリバリ食ってるとか不思議な光景だな。
その勢いは凄まじく、数分で魔力結晶はモチメットが食べてしまった。
「うむ、美味かったぞ~」
「それで調子はどんな感じだ?」
「悪くない、これなら多少の力は使える筈じゃ……それ!」
モチメットが気合いを入れると背中の黒いメットから黒くて四角い金属片みたいなのが現れた。
それは牢屋の鍵が掛かってる所にフヨフヨと移動する。
金属片が集まると鍵になり、牢屋の鍵を開けてしまった。
「えっすご」
「おぬしの足枷の鍵も外してやろう、人攫い共も叩きのめす事は出来るがどうする?」
「本当か? う~んそれなら……いや、もう少し待ってくれるか?」
「何故じゃ?」
足枷を外され自由になった。
そしてモチメットのこの余裕な態度を見るに本当に人攫い共を何とか出来る自信があるんだろう。
なら急ぐ必要はない。
「いつでも自由になれるなら、あの人攫い共が俺達を売る予定の街か都市まで運んでもらおうかと思ってな」
タクシーの代わりだ、客への対応はマイナス100点のゴミカスタクシーだな。
俺の提案にモチメットは「おぬしも相当にイイ性格をしとるの~」と言い、生暖かい視線を向けられた。
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