2
車に戻り、スマホを見た。
レイからメールが来ている。
「ダオを動かしてた奴が分かった。そいつは2人、殺し屋を雇って、あんたたちを殺すつもりだ」
「教えて」
「頼みがある」
「現在進行で殺し屋に狙われてるんだけど」
「先に片方を教える。その代わり、2つ頼みたい」
「2つ!」
キャットは呆れた。
「こいつから、ひねっちまおうぜ」
タイガーが笑った。
「おれたちを狙う者は消す」
ジャガーが、ぼそりと断言する。
3人は頷いた。
キャットは「教えて」とメールを送った。
1人目の殺し屋の詳細が送られてくる。
そして、その後、ひと組の兄弟の情報も。
「ザッパ兄弟。極悪人だ。今はラバーン荒野の遺跡で、大昔の宝を漁ってる」
「この2人を片付けながら、こっちを狙ってくる殺し屋も始末しないとね」
「フリーメン4なら楽勝だろ?」
「いつか締め上げてやる」
レイの返信を見たタイガーが、豪快に笑った。
フリーメン4殺しを請け負った2人の殺し屋の1人、ゼルガはラバーン荒野の丘陵のひとつに陣取り、うつ伏せに寝ていた。
視線の遠く先には、曇り空の下、巨大な遺跡が威容を誇っている。
悪名高いザッパ兄弟とその手下たちが、数多ある入口の1カ所の前に、いくつかテントを張っていた。
もう何日も、彼らを見張っている。
ザッパ一味はまだ、目当ての物を見つけられていないようだ。
ゼルガはフリーメン4がザッパ兄弟を狙っているという情報を掴んでいる。
4人が兄弟を襲う瞬間を逃さずに、仕留める腹だ。
フリーメン4の1人、ジャガーという男は早撃ちの名人で、あらゆる銃の扱いに長けていると聞く。
ならば、こちらと同じようにスナイパーライフルの使用もあり得た。
ゼルガは愛銃を構え、スコープを覗き込む。
ザッパ兄弟たちの動向を確認した。
彼らは盗掘の装備を整え、遺跡に侵入しようとしている。
あの兄弟を狙撃するなら、ジャガーはどこに位置取るか。
ゼルガは考えた。
彼の居る丘から左に、遺跡への距離が同程度の丘がある。
そちらにスナイパーライフルを向け、スコープで探った。
瞬間。
こちらにスナイパーライフルの銃口を向ける人物を発見する。
(ジャガーか!?)
しかし、予想との明確な差異に、零コンマ何秒かの混乱を生じた。
(何!?)
相手は、その隙を見逃さない。
ゼルガは眉間を撃ち抜かれ、死んだ。
「さすがね」
キャットが感心する。
ジャガーは無言でスナイパーライフルを分解し始めた。
フリーメン4はレイを通じて、殺し屋の1人ゼルガに、ザッパ兄弟を彼らが狙っている情報をわざと掴ませた。
そして、この荒野でザッパ一味を見張りつつ、ゼルガが来るのを待っていたのだ。
「これで邪魔者は消えたな」
チーターが笑った。
「もう1人の殺し屋は大丈夫かしら?」とキャット。
「なあに、現れたら、オレが首をへし折ってやるよ」
タイガーが請け合った。
ジャガーはバラした銃をアタッシュケースに、しまい終える。
「行くぞ」
彼が、皆を促した。
4人はエアバイクで丘を下り、遺跡へと向かう。
ザッパ兄弟が入口に残した見張りの2人の男を、ジャガーが瞬く間に撃ち殺した。
バイクを停め、一味の後を追う。
見張りと連絡が取れないと気付かれる前に、片付けたい。
暗視ゴーグルをつけ、足早に進んだ。
ザッパ兄弟たちは痕跡を消すような配慮はしていない。
宝を探すことに注力しているのだろう。
さして時を要さず、彼らに追いつけた。
敵は兄弟を含めて10人。
最後尾の男を、タイガーが音も無く絞め殺した。
その次の男も始末する。
しかし、今度は音を立ててしまい、異変を察知したザッパ兄弟が振り返った。
ジャガーのハンドガンが、あっという間に手下とザッパ弟を撃ち殺す。
残ったザッパ兄が通路の陰に隠れ、銃で応戦してくる。
「クソ! 誰だ!? ぶっ殺してやる!」
半ば、パニックを起こしていた。
「任せろ」
ニヤッと笑ったタイガーが、リロード中のザッパ兄に、大型肉食獣の如き、しなやかな動きで接近する。
「ちくしょう!」
ザッパ兄が銃底で殴りかかるのをかわし、タイガーは両手で敵を投げ飛ばした。
悪党は遺跡の通路壁にぶつかり「ぐえっ!」と悲鳴を上げる。
「そんなバカな!? この化物め!」
ザッパ兄が呻いた。
彼がフラフラと立ち上がったところへ、タイガーはパンチを叩き込み、倒れた相手の首を踏み折った。
「まずは順調ね」
キャットが微笑む。
「レイの頼みをもうひとつ聞いて、残りの殺し屋の情報をもらわないとな」と、チーター。
「面倒だぜ。そもそもダオに命令した奴が居るって話が怪しい。レイが裏切ってんじゃないのか?」
タイガーが、鼻を鳴らした。
「わたしはレイを信じてる」とキャット。
「もし、裏切っていたなら」
ジャガーの眼が光った。
「レイも殺すだけだ」
他の3人は、無言で頷いた。
惑星サーキラの兄弟星ダルミスの都市ラトーバのミスコン会場に、フリーメン4は乗り込んだ。
「どう? わたしの衣装」
キャットが訊く。
黒のドレスがセクシーだ。
チーターとタイガーは褒め、ジャガーは答えなかった。
レイの2つ目の頼みは、このミスコンに参加する若い娘、エマの警護だ。
ストーカーに狙われているらしい。
しかも、その30代男は爆弾を作れる。
「警察に捕まえさせなよ」
キャットの送ったメールに、レイは「今日で終わりにしてあげたいんだ。彼女はボクの恩人の娘さんでね。君たちなら確実にエマを守れるだろ?」と返してきた。




