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Angels, or Not__  作者: 鬼王丸
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8.アカネ


あたしの名前は茅ヶ崎茜。

都内の中学校に通う中学3年生だ。


どこにでもいる、ちょっと勉強が苦手なただの中学生

…って言いたいところだけど、意外とそうでもない。


スポーツは万能で小さなころから野球やってて、エースで四番、不動のエースなんだ。

中学に入ってからはソフトボール部でエースでキャプテン…だけど。


あたしはずっと疑問だった。中学生になってなんで野球部がないのかと。

兄貴にずっと鍛えられてきたんだ。

なのに…。

あたしのフィールド自体が無くなるなんて。


中学校に上がった時には、とうに決まっていたんだ。

女にはできないことがある。

そう決められていた。


世の中は不公平だ。


それに納得できない燻ぶった気持ちを抱えたまま、

あたしはソフトボールをやっていたんだ。


もちろん楽しくない訳じゃない。

仲間も大好きだし感謝もたくさんしてる。


小さなころ、あたしはヒーローになりたかったんだ。

誰にも負けないアニメに出てくるようなヒーローに。海外で活躍するスポーツ選手みたいに。

テレビに映るその姿に、憧れてた。


中学校に上がるまで、疑ったことがなかったんだ。

自分にはその道が無いなんて事。


今にしてみれば馬鹿だった。もっと早くに気づけたのかもしれない。


でも、あたしはまだ諦めてない。

もし世の中がそうだっていうなら、それを変えてしまえばいいんだ。


諦めなければ夢は叶うって。

私の大好きなヒーローたちはそうやって戦ってきたんだ。


あたしは諦めない。

自分のやりたいことを。

決められた世界なら変えてしまえばいい。


あたしは負けない。

男に。そして誰よりも、兄貴に。



-------



ドゴオォォン!と、轟音と大きな振動があたりに響いた。

ホオズキはその衝撃に我に返った。


一体どのくらい時間がたったのだろう。

いや、意識が飛んだ瞬間から全く同じ姿勢だったので、

もしかしたらほんの一瞬の出来事とだったのかもしれない。


意識が飛んだ瞬間、何か膨大な思念が流れてきたようで、

ホオズキの脳裏に大量の情報が頭の中にフラッシュバックする。


(茅ヶ崎茜…。おそらくこの子の記憶…。)


目の前でいまだに目を覚まさない少女…。

恐らくこの子の名前だろう。

記憶に流れてきた。自分の姿がこの子に酷似している。


ドゴオォォン!と、再び振動と轟音が響き渡ると、

ホオズキはのんびり構えている状態ではないと、焦った。

早くエンジュとシュスランに合流しなくては。


再び少女に手を伸ばし、ホオズキはこの少女を一息に背負った。

もう触れても大丈夫のようだ。意識が飛ぶようなことはない。


この少女は何かにうなされているようだが、暴れるような様子はない。

そして彼女を動かしたからと言って、何か異変が起きるようでもないようだ。


おぶった背中から、黒い霧の嫌な気配と、少女の吐息が感じられる。

ホオズキは急いで、残してきた二人へ合流すしようと駆けだした。



-------


シュスランは、足をふんばって右手を突き出した状態で、緊張で無意識に止めていた息を大きく吐き出した。


「で、できた…。」


シュスランの右手から、ぶすぶすと音を立てて煙が出ている。


「やっぱりシュスランすごーい!」


エンジュは歓喜してシュスランのもとに駆けてくる。


「……。あんたの方が凄いでしょ…、大丈夫?」


シュスランは、ポンポンと衣類の砂ぼこりを落としつつ言った。


エンジュとシュスランの間には2,30メートルくらいは距離があったが、

エンジュを中心とした大きなクレーターになっており、地面が抉れてしまっている。

そこに交差するように、シュスランが放った光線痕が走っており、随分と地形が変形していた。


「エンジュは大丈夫だよ。」

「またあんた何したのよ…。」

「んー、良く分からないけど。ばーーん!ってなった!」

「それは見ればわかるけど…。」


結局あれから、逃げ回っていた挙句に、よそ見をしている間に間違って迂回できない場所に入り込んでしまった。


応戦する羽目になったわけだが、シュスランを後方に置き、エンジュが前になった状態で、

最初こそ捌いていたが、何しろ数が数である。

そのうち押しつぶされて、エンジュが完全に敵に埋もれた状態になっていたわけだが…。


平たく言うと、エンジュを中心とした爆発が起こり、殺到していた敵をまとめて蒸発させてしまった。

それでもなお、後続の敵がいたわけだが、密集した敵に対して攻撃しようとシュスランが構えており、

その力が放出され、後続も撃破することができた。


ざっと見える限りでは、敵は全て撃破したようだ。


(あの妙な声は聞こえなかったけど…。)


シュスランは、その瞬間を振り返ってみるが、前回に聞いた祈りのような声は聞こえなかった。

神の名において…というやつだ。


「あんた、何か変な声聞こえなかった?」

「変な声?」

「そう。力を使う瞬間に何か聞こえた?」

「う~ん…。何も聞こえなかったよ?」


エンジュは質問の意味がピンと来ていない様子だ。

この様子だと本当に聞こえていなかったのだろう。


エンジュはこう見えても細かい部分には意外と見落とさない性質で、

その点においてはシュスランは一目置いていた。

ただ、それを聞いてあげないと気に掛けることはしないので、大雑把な印象は受けるが。


「ん、別に何でもない。」


あの声は一体何だったのだろう。

あれはシュスランだけに起こったものなんだろうか?

もしかしたら、何か外部からの干渉でこういった力が使えたのかもしれないし、良からぬものなのかもしれない。

エンジュは無意識にできたようなので、また別の何かなのだろうか。


シュスランに頭の中には疑問ばかりが去来するしていたが、解決する材料があるわけでもない…


ほどなくして、誰かを背負ったホオズキが先ほど入っていった場所から慌てて飛び出してきた。


さほど遠い位置ではない訳だが、敵がいなくなっていることはおろか、

地形が変形していることに驚いているようだった。


ホオズキは二人に近づいて安否を確認するが、

まるでピンピンしているようで、一安心した。


「この子をどうにかしなきゃね。」


ホオズキは、おぶっている少女を見やって言う。


この少女を連れてきてしまえば、この場所には用はない。

この少女が例の違和感の発生源に間違いはない。


3人は、この少女と自分たちが安心して休ませられる場所、

つまるところ保健室に向かうことにして、この場所を後にした。


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