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Angels, or Not__  作者: 鬼王丸
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2. 黒い靄

エンジュは、すぐさま倒れているシュスランに駆け寄る。

やはり遠くから見た通り、そこにいたのは幼馴染のシュスランだった。


「……ううう…。」


だが、なにか様子が変だ。

うずくまり、何かにうなされている。


「だ、大丈夫? シュスラン?」

「…うう。苦しい…」


エンジュは、シュスランを抱き上げて声を掛ける。

目は開けない。まるで夢にうなされるようで意識はない。


年齢は同じはずだが、体の成長はまるで違う。

黒か、あるいは藍色かというセミロングの髪が、十分に発達した体の曲線の間をすり抜けて落ちている。

それでも身長は150cmもないだろうか。


「なに? この気持ち悪い靄(もや)……」


見た瞬間には気づかなかったが、

シュスランの体に、時折黒い靄のようなものが纏わりつき、そして消えている。

…この霧のようなものは、シュスランの体から発生している?


「シュスラン…、苦しいの?」


つい声に出してしまう。

エンジュはぎゅっとシュスランを抱きしめる。

その時、あることに気づく。


この靄は、エンジュを避けている。明らかに。

それに気づいたとき、エンジュの中で一際強く、ドクンと心臓が脈打った気がした。

自分の中で、意識の高鳴りを感じる。

まるで全身の毛穴が開いたような、体表が活性化するような感覚。


その意思の高まりに呼応して、その体から淡い光が漏れ出した。

黒い靄は一層エンジュを避けて、完全に風を受けてなびいている状態だ。


「これなら…できるかもしれない。」


何か確証があるわけではない。


「シュスラン…!」


体から溢れる力で思い切りシュスランを抱きしめた。

まばゆい光。まぶしく強烈な光。

光の奔流は、強い光の激流となって、ここ一体を真っ白に包み込んだ。


それからほどなくして、


「く、苦しい…。」


シュスランはまだ苦しんでいる。

エンジュは失敗したと思って、半ば失望しながら手を放して確認する。


「ぷはあぁ。あー苦しかった。

 なんなのあんたの馬鹿力…。」

「シュスラン!」


シュスランは目を覚ましていた。

エンジュがあまりに強く抱きしめていたせいで苦しがっていたらしい。

黒い靄の痕跡は無くなっており、綺麗に吹き飛んで消えたようだ。


「良かった~! どっか行っちゃえって思ったら、どうにかなっちゃったみたい!」


そういわれたシュスランは、自分の足で立ち上がって、ポンポンと自分の服を叩く。


「もう苦しくない…。」


シュスランは立ち上がったまま、体をよじって自分の体を見直す。

特に外傷はないようだし、何か痛いようなところもない。


「ほんと? 大丈夫?」


エンジュはどこまでもシンプル明るい。

シュスランの意志が戻ったことでより安心したようだ。


「……

 ……ちょっと!

 あんたあたしに何なにしたの?」


シュスランはシンプルに疑問をぶつける。


「分りません!」


エンジュは満面の笑みで返す。


「…まあ、そうでしょうね…あんたなら。」


半ばあきれた様子で、あるいは予想された詰まらない答えを聞いたように答える。

幼馴染でいつも一緒にいるシュスランには、予想がついた反応だ。


「あの気持ち悪い霧……。一体なんだったんだろう。」

「シュスラン、大丈夫? もうどこも痛くない?」

「うん。大丈夫。怪我はないみたいだし。」

「ねぇねぇ、シュスラン。ここどこ?」

「ええぇっ?! こっちが聞きたいんだけど!」


普通意識を取り戻したばかりの人に聞くかなと、シュスランは飽きれて嘆息した。


「ここ、どこだろう。なんでこんなところに倒れてたんだろう……。」

「シュスランも分らない?」

「うん。分らない。見た事無いよ。こんなところ…。学校みたいだけど。」

「じゃあエンジュも分る訳ないね!」

「なんで自信満々で嬉しそうなのよ。…もうっ。」


いつものエンジュだ。二人はいつものテンポを再確認して、落ち着きを取り戻していた。


「あ、そう言えば、さっき声のおじさんがね。黒い翼を持つ者を探せって!」

「声の…おじさん? おじさんの声じゃなくて? 良く分からないけど…。」

「う~ん、声だけ聞こえてきたから、よく分からないなぁ。おじさんの声だったけど。」

「……ふ~ん。黒い翼…ね。」


まるで胡散臭さしかない話に、シュスランは顔をしかめる。

そうしていると、シュスランはある気配を後ろから感じた。


「なに、あれ」


振り向いていう声に、特に緊迫感はない。むしろ気が抜けた様子だ。


「んー、さっきのヒヨコ?」


エンジュが気付いて、シュスランの脇からひょっこり顔を出して確認する。

さっきのヒヨコ。いや、それにしては小さい。


「俺の舎弟がお世話になったな…」

「そう俺達の」

「俺達の」


遠くからおぼろげに見えていた姿が、近づくにつれ3体であることが確認できる。

今度はかなり小さい。50cmくらいだろうか。

前回の目つきが悪いのではなく、必要以上に尖った鋭いサングラスを掛けている。

一体どうやって装着しているのか…。


「舎弟の落とし前、つけさせてもらうぞ」


問う言うか否か、3つの影がばらばらに散った。

今度は…速い!


「シュスラン!」


エンジュの反応は速かった。

シュスランの前に躍り出て、真っすぐに間を詰めて来た、正面の1体の間に割って入る。


「このぉ!」


エンジュは正面からこぶしを振りぬき、ヒヨコをとらえた。

ヒヨコはボヨンと歪んで吹き飛ぶが、消えて見えなくなるほど飛ばずに、鋭角に方向転換した。


拳はしっかり捉えていた。しかし、この挙動…。


(全然利いてない…?)


エンジュがそう察する間にも、残った2体が途切れず左右から同時に飛んでくるが、エンジュの身体能力にはまだ余裕がある。

まだ振ってない左手を溜めて、左に踏み込むと同時にそれを放ち、

その足に掛かった重心をバネのように跳ね返して、右側も対応する。

全身を使った、不器用だが目にもとまらぬ身のこなし。


だが、左右の相手に対しても似たような手ごたえだった。

恐らく効果的な打撃は与えられていない。


吹き飛ばされた3体は、ボヨンボヨンと跳ね返り、反動を利用して位置調整したのか、

攻撃を仕掛けてきた元の位置にスタッと整列した。


「ほう」

「なかなか」

「やるようだな」


ヒヨコ達は、トサカとサングラスをきらりと光らせて順番にしゃべってくる。


「うん。きみたち…強いね!」


エンジュはジリっと足を踏みしめると、改めて警戒して拳を構えた。

シュスランは、その光景を若干遠巻きに、怯えて見ていた。


毎日投稿が目標だけど、これ時間足りないぞ~w

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