第14話 俺と訓練成果と薬草
遅くなりました。今週、一回目の投稿です。
――――技 《ダッシュタックル》
――――技 《早投げ》
俺とウサギの戦闘は、両者同時の技の発動で始まった。
「キュ!」
最初の軍配は、俺に上がった。
ウサギが《ダッシュタックル》で、スピードを上げる前に、俺の左手で放った《早投げ》の石が、上手い事、ウサギの進行方向前に投げられたのだ。
それにより、ウサギは《ダッシュタックル》を中断せざるを得るしかなかったのだ。
――――技・連鎖《早投げ》
急ブレーキで、動きの止まったウサギに、俺は追い打ちをかける。
一回目の《早投げ》時に、既に地面に剣を突き刺して手放していた俺は、今度は右手で《早投げ》を発動した。
――――!!!
が、寸前のところで、ウサギは硬直から立ち直り、横っ飛びで石を回避した。
「ちっ!」
すばしっこいウサギである。
再び、俺とウサギとの睨み合いが始まる。
…………。
――――技 《ダッシュタックル》
沈黙を最初に破ったのは、ウサギだった。
俺は、すぐに剣を持ち直し身構える。
だが、ウサギはあろうことか、俺に向かって来るのではなく、反対方向に向かって《ダッシュタックル》を発動させた。
俺とは反対方向。すなわち、茂みの中である。
「……」
やがて、ウサギの茂みを搔き分ける音が聞こえなくなった。
「逃げたのか……?」
いや、そうではないだろう。俺が今まで戦ってきた戦闘ウサギ達は、自分が不利な状況だと分かっていても、最後まで俺に挑んできた。おそらく、あいつらは逃げることより、戦う事を選ぶのだ。それが、俺の知っている戦闘ウサギである。
こいつも例外ではないはずだ。
だとするなら、これは茂みの中から出てくる奇襲攻撃。前回戦ったウサギと同じ、ヒット&アウェイ戦法だ。まともに、俺と戦っては分が悪いと判断したウサギは、《ダッシュタックル》を使い、一度、戦線を離脱、その後、ヒット&アウェイで自分の有利に戦闘を進めようとしているのだ。
そう判断した俺は、右手で持っていた剣に左手を添えて握りしめる。そして、ウサギがどこから来てもいいように、五感をフルに使い、全神経を集中させる。
さぁ。どこから来る? 右か? 左か? 後ろか?
…………。
風が止んだ。
普段はザワザワと雑談している森の草木が一瞬で静まり返る。
まるで、俺たちの戦闘を固唾をのんで見ているかのように。
聞こえるのは、俺の心臓が動く音のみ。
一拍一泊と打つその脈は、戦闘へのカウントダウンのようだ。
そして、時は来た。
――――技 《ダッシュタックル》
茶色い塊が、茂みの中から、猛スピードで飛び出してくる。
俺の予想に反して、真正面からの突撃である。
俺は、両手で持っている剣を水平に振る。
――――技・連鎖《鋭い前歯》
――――ギンッ。
とても生き物に振ったとは思えない音を響かせて、俺の剣は弾かれた。
ただ、前歯で俺の攻撃を受け流したウサギも攻撃を中断せざるを得ない。
このままだと再び、茂みに身を隠されると思った俺は、すぐに技を発動させる。
――――技 《早投げ》
なりふり構わず、持っていた剣の最速《早投げ》である。
俺の攻撃が予想外だったのか、ウサギの反応が遅れた。
咄嗟に、回避しようとしたウサギだが、背中に大きな傷を作った。
ウサギの背中の傷から、粒子が大量に飛び出す。
そして、ウサギは粒子となった。
拠点についた俺は、一休みをしながら、ウサギとの戦闘を振り返る。
まず今回のウサギは、結構強い方のウサギだったと思う。
《ダッシュタックル》を覚えているかで、ウサギの強さは、判断できるが、今回のウサギは、《ダッシュタックル》も覚えているプラス、そのスピードも速かったし、《鋭い前歯》という、まだ見たことのない技もあり、それを連鎖で使ってきた。これらをふまえて、強いウサギだったと言えるだろう。
ただ、俺は訓練した直後だったためか、訓練のイメージを忘れていないうちに、戦うことが出来たので、意外と余裕を持って……は、言い過ぎかもしれないが、冷静に戦えた気はする。
剣を振る時も、あれがぶっつけ本番で振るっていたら、どこかを怪我していたかもしれないし、ウサギにまともに振れなかった可能性もある。やはり、訓練したのは正解だった。
自分なりの評価としては、今回の戦闘は少し強い相手に良くやったと思う。
そう締めくくり、俺は目を閉じて、ちょっとした仮眠をとるのだった。
あ、ちなみだが、ドロップ品は、ハンドタオルだった。良くも悪くも普通のタオルである。でも、要るか要らないかで言うと、ほとんどの物資がない今の状況だと絶対に必要である。有り難く使わせていただきます。
20分程で、仮眠は終了した。昼寝の時間は、大体このぐらいがベストだと、テレビでやっていた。詳しくは知らないが。
とにかく、起きだした俺は、伸びをして、装備を確認する。また、森へ行くためだ。
最近、使う量が増えた木の枝を調達しに行くためである。
薪に使ったり、罠に使ったり、武器の柄に使ったり、最近は本当に大活躍である。
俺は、警戒しながら、枝集めをしていく。頭上の木の枝にヘビがいないか確認することも忘れない。いや、マジであのヘビとはもう戦いたくない。
そんなこんなで、落ちている枝を拾い、時には、枝を折ったり、切ったりして枝を集めていく。
持ち運びに差し支えない程度に、枝を集めては拠点と森を行ったり来たりする。まぁ、拠点の近くで集めてはいるのだが。3往復したところで、枝もだいぶ集まり、終了する。
これで、当分は枝を集めなくてもいいだろう。
さて、今日はやらないといけないことが沢山ある。
昼食を早々に食べ終え、俺はまた拠点から出ていく。向かう先は、火ネズミのいる草原だ。
この間、ドロップした『ほうれん草っぽい葉っぱ』を調べようと思ったのだ。
俺は、この葉っぱがドロップしたものである以上、何らかの効力があると予想しているのだ。
実験の仕方としては、火ネズミを捕まえて、ちぎった葉っぱを少し与えようと思う。火ネズミが葉っぱを食べるなら、この葉っぱは食べられる、また、食べないならこの葉っぱは食べられないと判断しようという訳だ。
俺はさっそく、火ネズミを見つけ、追いかけ始める。
――――技・魔法《火の玉》
いつも通り、俺から逃げられないと判断した火ネズミは、《火の玉》を俺に放ってくる。
俺は、それは余裕を持って避けて、火ネズミの状態を確認する。
「よし、フラフラだな」
そんな火ネズミに、俺は懐から例の葉っぱを取り出し、小さくちぎって、火ネズミが気付くように、葉っぱを置く。
「チュー?」
火ネズミは、それに見て気付いたのか、匂いで気付いたのかは分からないが、その葉っぱに気付くと、すぐさま、その葉っぱを食べ始めた。
ふむ。この葉っぱが食べれることは決定だな。
――――技・魔法《火の玉》
「っと!!」
危ねぇー!!
動けるようになったら、すぐ反撃かよ!
でも、今ので俺の予想は確信に変わった。ほんの少し食べただけで、技・魔法が使えるようにまで、火ネズミが回復したという事は、やはり、この葉っぱは、薬草という事でいいのだろう。
俺は、また動けなくなった火ネズミを放置して、その場から離れる。
「生で食うしかないよなぁ……」
そして、火ネズミから離れた安全な場所で、俺は葉っぱを思い切ってずべて口に入れた。
「マズッ……くはないな……」
見た目通り、ほうれん草みたいな味である。
そして、すぐに体に変化が出た。
今まで、ずっと治っていなかったお腹の傷、粒子がみるみるうちに、元の状態に治ったのである。
俺は、振り返って、背中のほうも確認するが、こちらも完全に治っている。
「そうだ! HPバーは?」
俺はそう思ってすぐさま視界の隅にあるHPバーを見てみると、なんとバーの値も、完全に元の状態に戻っていた。
「よっしゃ!」
実験成功だ。
俺は、上機嫌で、そのまま隠れ実取りへと向かうのだった。
隠れ実取りは、何事も起きずに無事収穫を完了した。
今は、隠れ実を拠点へと輸送中である。
だが、最近思ったのだが、どうも、この隠れ実を輸送中に動物に襲われているケースが多い。泥棒ウサギの時も、隠れ実を取った帰りだったし、ヘビの時もそうだった。ここの動物たちは、他人が取ってきたものを横取りしようとする連中が多い。もしかすると、俺に知覚出来ない何かが、隠れ実がから出ていて、動物たちをおびき寄せているのかもしれない。ただ、そうなると、俺の拠点にある隠れ実も無事ではないわけで……うーん、分からん。
とにかく、言いたいことは、隠れ実の輸送中は、隠れ実を奪いに来る敵に注意しましょうという事だ。
そう、目の前から走ってくる牛とかに、出会わないように……。
「くそ! なんで、いつも隠れ実を持っている時に、敵に出会うんだよ!」
俺は、すごい勢いで走ってくる牛を確認してすぐに、森の中へと逃げ込もうと走る。
こんな見晴らしのいいところでは、突進を主体として戦うであろう敵に好都合だからだ。イノシシとの闘いで分かったことだ。
俺は、森の茂みに、咄嗟に隠れ実を隠して、牛を再び確認する。
「モーーーー!!!!!」
雄たけびが聞こえるぐらいに、もう牛は近づいてきている。
そして、あの獰猛な目は、完全に俺を補足している目だ。どうして、この世界にいる動物は、俺を狙うのだろうか。戦闘ウサギ然り。目の前の牛然り。ふと、そんなことが頭をよぎるが、すぐに振り払う。
――――技 《ホーンタックル》
俺のいる森へと突入するのに、牛は技を使った。
物凄い音を立てて、木にぶつかる。
「あれは、一発でも食らったらアウトだな……」
森の木がミシミシと音を立てて倒れていくのを、横目で見ながら、俺は絶対に回避重視の戦闘をしようと心に誓う。
「モーーーー!!!!!」
そして、牛は木が倒れてもお構いなく、そのまま森の中を爆走してくる。
目標は完全に俺である。
俺、あの牛になんかしたかなぁ……。何もしてない気がするのだが……。
牛が近づいてくるのを、見つけて、咄嗟に逃げただけである。
と、考えながらも、俺は、森の中を全力で疾走する。
でも、俺もただ逃げているだけではない。
そろそろ、一つ目のポイントに到着する。
俺は、後ろから迫ってくる牛をチラリと確認する。
その後、俺は咄嗟に、走っていた道から急に方向を変える。横の茂みへと突入である。
「モーーーー!!!!!」
牛も、俺が茂みの中に入ったことが分かったのか、徐々にスピードを落としながら、俺の入っていった茂みに突入する準備をした。
だが、牛に俺を追いかけることは出来なかった。
なぜなら、牛が曲がる直前にあった落とし穴に、足を踏み入れたからだ。
ズドン! 派手な音を立てて、牛はそのまま、前足から、落ちた牛はそのまま地面に顔を直撃させる。
ウサギ用に作ったので、牛にとっての小さい落とし穴でも、牛の前足を地面に落すのには、十分だったようだ。曲がるために、スピードを落としていたとしても、これはかなりのダメージのはずだ。現に、牛の顎からは、既に粒子が、飛び散っている。
「モーーーー!!!!!」
しかし、これで牛は、完全に頭にきたようだ。雄たけびを上げながら、すぐに、穴から抜け出すと、俺の隠れている木陰を睨みつけてくる。
「…………」
おいおい。完全に目が合ったんだが。こっちの場所は、バレバレってことかよ。
俺も上手く隠れているつもりなんだが……。敵を感知するセンサーでも持ってんのか? このファンタジー世界には、十分にありそうだから笑えないが。
俺は、牛がこちらに向かってくる前に、早々に森の中へと、走り出すのだった。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
次の更新は、土曜日か日曜日あたりになると思います。




