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第3話:内気なオタク少女の秘密を守り抜く。

 

「っ!?」


 彼女の顔がまた真っ赤になる。僕たちは二人とも、お互いから慌てて視線を逸らした。


(彼女の手、すごく柔らかかったな……)


「……」


「あの……」


(あ、そうだ! 紙!)


 僕は手の中の紙へと再び意識を戻した。それは、これまで僕が目にした手描きの漫画のコマの中で、最も圧倒されるデザインだった。


 一筆一筆に込められた力強さと細部へのこだわりは、何時間もの絶対的な没頭を物語っていて、ただ見つめているだけで完全に心を奪われてしまう。


(これ、本当に彼女が自分で描いたのかな?)


「その……漫画が好きなんだね?」


「……うん……」


(うわぁ! ということは、可愛くて、才能があって、ちょっとオタク気質ってこと? オタク女子って本当に可愛いな……)


「……でも、誰にも言わないでね? お願い」


 彼女はまたぷいと視線を逸らした。スカートの前で気まずそうに両手をモジモジと合わせるその姿は、いつも教室で見せている凛とした自信ありげな女の子のイメージを完全に覆していた。


「その……友達にオタクだなんて思われたくないから……」


(あちゃ……!)


「え!? そんなわけないよ! これ、本当に凄いんだから! 誰もオタクだなんてバカにしないよ! 僕が今までに見た中で、間違いなく最高のアート作品の一つだよ」


「本当に……そう思ってくれる?」


 彼女は上目遣いの内気な瞳で、もう一度僕を見つめてきた。


(まるで小さな小鹿みたいだ……)


 誰かに評価されることへの恐怖と期待が入り混じった、その危うげな眼差しを見て、今の彼女にとって僕の感想がどれほど大きな意味を持っているのかを痛感させられた。


 こんなに可愛くて大人しい女の子が、プロ顔負けの絵を描くなんて本当に信じがたい。


「本当だよ! ……他にもまだあるの?」


 ユキノの顔がパッと輝いた。


 僕の純粋な興味を感じ取ったのか、彼女の内気さは一瞬にしてどこかへ吹き飛び、代わりに純粋な喜びの煌めきが浮かび上がった。


 この隠された一面を誰かと共有できる機会なんて、これまでほとんどなかったのだろう。


「私の絵……もっと見たい?」


「もちろん、ぜひ!」


「うん……まだあるよ!」


 彼女はスケッチブックを取り出すと、一ページずつ僕に見せ始めた。漫画の話になると、彼女の心が僕に向かってどんどん開かれていくのが分かる。


 彼女がページをめくっていく中、あるファンアートが僕の目を引いた。


「うそ、マジで!? これって……『YoYoの凡庸な冒険』!?」


 彼女の首が勢いよく僕の方へと回り、その顔に驚愕の表情が浮かんだ。


「っ!? 嘘、YoYoを知ってるの!?」


 興奮のあまり、彼女のいつもは内気な声が上ずって飛び出す。


 彼女はハッと我に返り、恥ずかしそうに大慌てで両手で口元を覆った。


 熱意のせいで自分の声がどれほど大きく響いたかに気づき、彼女は肩をすくめて指の隙間に顔の半分を隠してしまった。その耳は完全に真っ赤に染まっている。


 僕は気づかないふりをした。

(興奮して取り乱す彼女の声、めちゃくちゃ可愛いな!)


「もちろん! 僕の人生で一番大好きな漫画だよ! アニメも全部観たし!」


「わ、私も……!」


 僕たちはしばらくそこに座り込み、彼女のイラストを通じてすっかり意気投合していた。


(彼女のアートを通じて、その秘められた個性がキラキラと輝くのを見るのは本当に素晴らしいな)


 お気に入りのシーンについて語り合ううちに、二人の間の壁は少しずつ、確実に崩れていった。しかし、彼女がスケッチブックをそっと閉じた瞬間、その温かい空気は一変した。


 突如として彼女の表情が真剣なものになる。彼女は顔を僕の方へと向け、じっと視線を固定した。


(うわぁ、視線が熱い……!)


 自分の顔が熱くなっていくのを感じる。


「う、うん……?」


 彼女は小指を僕に向かって差し出してきた。


「約束して」


「や、約束……?」


「うん。これについて、絶対に、誰にも言っちゃダメだからね!」


「YoYoが好きだってこと?」


「全部ひっくるめて、何一つ言っちゃダメ。約束して」


 普段のおっとりとした口調が突然強いものへと変わり、彼女が本気であることを物語っていた。


 先ほどまで見せていた情熱的な一面は、これで厳重な秘密のベールに包まれることになった。


「わ、分かったよ……約束する」


 彼女は僕の顔の前に小指を突き出したままだ。


「あ……」


(さっき肩に触れて失敗したばかりだから、また触るのが緊張するな……)


 数分前に彼女の肩に触れた時の自分の不器用さを思い出し、僕はその小さな指を見つめたままフリーズしてしまった。僕が躊躇しているのを見て、彼女は痺れを切らした。


 彼女は突然僕の手を掴み、自分の小指を僕の小指へと絡めてきた。その細い指は柔らかく、かすかにラベンダーの香りがした。


「っ!?」


「これでよし。約束ね」


「う、うん! もちろん!」


(女の子が……今、僕の手を握った……!?)


 顔が熱すぎて、頭から湯気が出ているのを見られていないことを祈るばかりだ。


 指が絡み合う彼女の手の直接的なぬくもりのせいで、僕の思考は完全に真っ白になってしまった。

 突然、ある声が僕の集中力を切り裂いた。


「ちょっと、そこの二人!」


「え?」


 あまり見覚えのない女の先生が、蔑むような視線を僕に向けながらこちらに歩み寄ってきた。


「レンジくんで間違いないかしら?」


 彼女は僕たちの顔をじっと観察するように、交互に視線を走らせた。


「は、はい、僕ですが……何か問題でも?」


 先生の顔が僕の正面で固定される。

「大ありよ、大問題だわ。あなたが演劇部の部長をしているのよね?」


「あ、はい、そうです。唯一無二の特別な部長です!」


「まさにその通り。そしてそれこそが最初の問題なのよ。どうやら本当に、あなたはこの部活の唯一の部員のようね」


(一体何のことだ……?)


 背筋に不快な緊張感が走った。その教師の厳しい眼差しと強張った姿勢は、これが単なる日常的なお説教ではなく、すでに下された決定事項を伝えにきたのだと物語っていた。


「というわけで、非常に残念なお知らせなんだけれど……」


 彼女の声は嫌みで満ちていた。


「……あなたの演劇部は、廃部にする措置を取らせてもらうわ」


本日もお読みいただき、ありがとうございました!


「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、


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