表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/21

七話「 緊急連絡先の行方 」


誠には、ある悩みがあった。

それは妻である梨紗のことだ。


1時間前、誠は勤務中に一本の電話を受けた。

相手は梨紗の父親からだった。


『梨紗ちゃんが怪我をしてね』


その言葉に誠は一瞬思考が止まった。

聞けば学校の階段付近で遊んでいた男子学生とぶつかり、階段から転落したらしい。

幸い命に別状もない。

が、頭も打ったことで脳震盪を起こした事から病院へ搬送されたそうだ。


だが問題はそこではなかった。


何故その連絡が梨紗の父親から来るのか。

それが問題だ。

梨紗はすでに誠の妻である。

本来なら真っ先に誠へ連絡が来るはずなのだ。


なのに連絡が来なかった理由を父親から聞いた誠は、深いため息を吐くことになった。


『え?まこちゃんお仕事中だよ』

と、悪びれた様子もなく梨紗は父親に言ったらしい。

更に梨紗が緊急連絡先から誠を外していた事実に、誠は頭を抱えたくなった。




「え、まこちゃんお仕事は?」

梨紗を迎えに来た誠を見ての第一声がそれだった。


「仕事以前に、俺はお前の旦那なんだが」

「旦那♡」

「喜ぶな」

誠の言葉を理解していない訳ではない。

ただ梨紗の優先順位がおかしいだけ。


梨紗は誠に迷惑をかけることを極端に避ける。


そのくせ誠のことになると話は別だ。

つい先日、逮捕した男が抵抗し、暴れて誠の頬を殴った。

警察官であれば日常茶飯事な怪我でもある。

この時も口端が少し切れただけ。

それだけだった。

だが梨紗はこの世の終わりのような顔をして、真っ青になりながら誠に駆け寄ってきて。


『パパ!ママ!!助けて!まこちゃんが死んじゃう!』

世界トップクラスの外科医である父親と同じく医師である内科医の母親を召喚しようとした。

殴られたくらいで死んでたまるか。

誠が梨紗を止めなければ、梨紗の両親は海外から来ていただろう。


心配してくれる気持ちは分かる。

ありがたいとも思うし、嬉しくない訳がない。


だが、その半分でもいいから自身のことも顧みてくれ。

そう思うのは誠だけではない。




医師から軽い捻挫であること。

湿布で固定し、安静にしていれば問題ないこと。

そして帰宅後に容体が急変した場合の注意点を聞きながら、誠は帰り支度を始めた


梨紗は決して自分を大切にしていない訳ではない。

怪我をしたら病院へ行く、薬も飲む。

医師から言われた安静期間も守る。


だから自暴自棄になっている訳ではない。

自身を軽視している訳でもない。

ただ。


「まこちゃん、もう大丈夫だからお仕事戻って」

「・・・家に帰るぞ」

「んー、わかった」

誠は梨紗の荷物を持ち、そっと腕を差し出した。

梨紗は申し訳なさそうな、でも嬉しさと照れが混じった顔をして誠の腕にしがみつく。


梨紗の中では何よりも先に誠が来る。

怪我をした時も。

体調を崩した時も。

まず最初に考えるのは、誠のことだ。



『え?まこちゃんお仕事中だよ』


あれは言い訳ではない。

本気だ。

誠へ連絡をしなかったことを正しい選択だと思っている。


自分が怪我をしたことより。

仕事中の誠へ迷惑をかけないことの方が大切だと思っている。


だから困る。

いや困るだけならまだいい。


本当に困っているのは。

そんな梨紗を責められないことだった。

だって梨紗は善意でやっている。

誠を大切に思っているからこその行動だ。


だから説教をしても、怒鳴っても意味がない。

梨紗は次も同じことをする。

怪我をしても事故に巻き込まれても、真っ先に誠のことを考える。


そんな梨紗に誠は同じことを言うのだろう。

自分を後回しにするな、と。


「まこちゃん」

気付けば足が止まっていた誠を、梨紗が不思議そうに見上げていた。


「なんだ」

「怖い顔してる」

「してない」

「してるよ、でもカッコいい♡」


誠は小さく息を吐く。 

梨紗が思っている以上に、誠にとって梨紗は大切な子なのだ。


どうすれば自分も大切にしてくれるのだろうか。

誠の悩みは尽きない。




END

***♡***

最期までお読みいただきありがとうございました。


梨紗と誠の日常を今後も応援していただけるのでしたら、いいねや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎(全部入れると10pt)で評価していただけると、いろんな方に読んでいただけるようになるのですごく嬉しいです。


※pixivにて小説の一部エピソードを漫画・イラストを公開しています。

どのシーンなのかはお楽しみに°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ