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三話「美味かったの破壊力」

人は誰しも食べ物には好き嫌いがある。

中には本気で食べられない物もあるし、食べれなくはないけど好んで食べたくない物が多いと思う。


でも大好きな誠には、いつまでも健康でいて欲しい。

だから。


「ただいま」

「まこちゃん、おかえりなさーい♡」

今日もお仕事を頑張ってきた誠に盛大なハグをして出迎える。

普段なら梨紗を抱き上げてリビングに向かうけど、ある匂いに気づいたのか誠の動きが止まった。


「今日のご飯はメンチコロッケだよ♡」

梨紗の言葉に誠の目の奥が一瞬だけ輝いた。

誠は無表情がデフォルトのため、周囲や同僚たちにもよく誤解されやすい。

でも梨紗はたった一瞬の変化さえ当たり前のようにわかる。


だってまこちゃん(だいすきな人)だから。



サクリ、と揚げたてのメンチカツを一口頬張る。


「・・・美味い」

「ほんと?うれしい♡」

誠の美味い、と言う言葉がなによりも嬉しい。


「店や市販とは全く違うな」

「ふふ、まこちゃんへの愛がたっっぷり入ってるから♡」

「そうか」

スルーされても止まらない箸の速度に頬がにやけてしまう。

あぁ、頑張って隠蔽した甲斐があった。


誠は知らない。

美味しい美味しいと食べているメンチコロッケの中に、誠が好んで食べたくないレバーが入ってることを。

勿論レバーの他にも隠し味は入れてるのだけど。


「なんだ?」

「んー♡まこちゃん好きだなーって」

「そうか」

あ、今のは照れたな。




「ふんふんふ〜ん」

梨紗は私室にて一冊のノートを取り出した。

“まこちゃん健康管理ノート No.7”

そう書かれた付箋だらけのノート。


誠の苦手な食べ物。

好きな食べ物。

最近の体調。

睡眠時間。

そして、こっそり成功した隠し味記録。


最近デスクワーク仕事が増えたのか、疲れ目で帰ってくる。

立ち仕事での肉体労働もあって、少しでも体に良さそうな物を探してたら誠が好んで食べない食材に辿り着いたのだ。


今日もまた一つ更新されたページを見て、梨紗は満足そうに頷いた。


「うふふ♡」

誠が健康でいてくれる。

それだけで梨紗は嬉しいのだ。



もっとも、失敗する日だってある。


「えぇぇえ・・・」

並ぶのは、綺麗なふわふわ玉子焼きと焦げ混じり丸まった玉子焼き。

あまりの対極すぎる玉子焼きに思わず苦笑い。


「久しぶりに失敗しちゃった」

あちゃぁ・・・と情けない声が梨紗の口から漏れてしまう。

だけど一つ目は成功したのだから問題ない。


失敗作は私が食べて、成功作はまこちゃんへ。

愛する旦那に失敗作はあげたくないのが乙女心だ。


まこちゃん用にと、ふわふわ玉子焼きをお皿へ盛りつけ直して失敗作を梨紗のお腹に隠蔽しようと振り返った、ら。


「キャー!?」

誠がいた。

それはいい。ただし、誠が失敗作の玉子焼きを食べているのが問題だ。


「まこちゃん!ダメ!お腹壊しちゃう!!」

慌てて誠の方へ駆け寄って、食べるのを止めようとしたのだけれど、誠は気にした様子もなく最後の一口を食べた。


「……美味かった」


絶対、美味しくない。

少なくとも梨紗はそう思ってる。


だから食べさせたくなかった。

なのに。


「美味かった」


ずるい。

本当にずるい。


誠は時々こういうことをする。


何でもない顔で。

何でもない言葉で。

梨紗の心を掻っ攫っていく。


「……」

真っ赤な顔を隠すように、梨紗はしゃがみ込む。


不意打ちの美味かった、は破壊力凄すぎる。



END

***♡***

最期までお読みいただきありがとうございました。

梨紗と誠の日常を今後も応援していただけるのでしたら、いいねや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎(全部入れると10pt)で評価していただけると、いろんな方に読んでいただけるようになるのですごく嬉しいです。

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