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二話「小さなサイン」



誠と梨紗は夫婦だが、実は寝室は別である。

理由は単純。

誠が梨紗へ手を出さないため。

そしてお互いの時間を確保するためでもある。


だから梨紗にも自室があり、誠にも自室がある。


もっとも梨紗は大いに不満だった。


夫婦なのだから一緒に寝たい。

せめて寝顔くらい見たい。

朝一番からイチャイチャしたい。

あわよくば手を出してほしい。


そんな欲望だだ漏れな理由で、梨紗は時々早起きをして誠の部屋へ突撃する。

だが。


「まこちゃん!おはよう♡」

「おはよう、梨紗」

「えっ」


既に起床してスーツ姿に着替えている誠。

しかもネクタイまで締まっている。


「何で!?」

「起きるのが遅い」

「わぁぁぁん!!」

今日も梨紗の敗北である。


だがそんな二人にも例外があった。




リビングにある四人掛けの大きなソファ。

そこに誠が横になっている時がある。


それは大抵、仕事が上手くいかなかった日。

事件が重かった日。

誰かを救えなかった日。


誠は何も言わない。

仕事のことも愚痴も、梨紗に決して零さない。

ただ腕で目元を覆い、黙ってソファへ横になる。


梨紗は誠にブランケットをかけて、ソファへ上がり誠の懐へ潜り込む。


何があったの、とも聞かない。

大丈夫だよ、とも言わない。

ただ、誠をぎゅっと抱きしめる。


誠は何も言わない。

けれど、ゆっくりと腕が動いて梨紗を抱きしめる。


「おやすみなさい、まこちゃん」

「ああ」


短い返事、それだけ。

もし誠が本当に一人になりたいなら、彼は自室へ行く。

梨紗もそのときは誠の部屋に決して入らない。


だけどソファにいるときは。


“一人にしてほしい”ではなく。

“一人になりたくない”、そんな誠の小さなサイン。




もっとも梨紗は基本的に一人になりたいと思うことがない。


誠が仕事なら寂しい。

誠が出張なら寂しい。

誠が買い物へ行けば付いて行きたい。

出来ることなら四六時中くっついていたい。


けれど、それを誠に押し付けたいわけではない。


誠が一人でいたいなら邪魔はしない。

誠が自室に籠もるなら入らない。


ただ誠が一人でいたくない時だけは。

その時だけは、こうして隣にいたいと思うのだ。




END


***♡***


最期までお読みいただきありがとうございました。

梨紗と誠の日常を今後も応援していただけるのでしたら、いいねや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎(全部入れると10pt)で評価していただけると、いろんな方に読んでいただけるようになるのですごく嬉しいです。

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