一話「クーリングオフ間に合いました」
とある派出所にて、一人の警官が真剣な顔で日報を書いている。
彼の名前は城島 誠
身長が192もあり、日々鍛えているのかボディービルダーと引けを取らない筋肉質な肉体では机や椅子が小さく見えつつある。
25歳という若さでありながら一途に警察官への道を目指している誠は、今日も真面目に勤務をしている。
「まーこちゃん」
ふと甘えるような甘い声が入り口から聞こえると同時に、ひょっこりと顔を出す女の子。
彼女の名前は梨紗
ミルクティー色の長い髪を左右で結び、肌も色白で全体的に色素が薄く、淡い瞳は日本人離れした柔らかな色合いで人形のような整った顔立ちをしている。
「お弁当、忘れてたよ」
「あぁ、悪い」
笑顔で愛らしい巾着袋にはいったお弁当箱を受け取れば、大きな誠の指が二回りも小さい梨紗の指に触れた。
たったそれだけなのに、梨紗は少しだけ頬を赤らめて嬉しそうに誠の指先を見つめている。
「お、城嶋!今日も愛妻弁当かぁ」
不意に後ろから投げられた野次声に、誠は深くため息をつきながら梨紗からお弁当箱を引き取った。
「梨紗、そろそろ学校に遅れる。行って来い」
「はーい」
やや不服気味な返事をしながらも、梨紗は派出所を出て行った。
ふわり、と微かに揺れる紺色のスカートは、この最寄りの高校指定の制服である。
そう、先ほどお弁当を届けに来た梨紗は18歳の高校生。
ではなぜ誠のお弁当を届けに来たのは。
それはーーー。
*
どっぷりと夜が更け、20時頃ようやく自宅へ帰宅した誠。
「ただいま」と挨拶の言葉を漏らしながら扉を開けて中に入れば、奥から小走りで近寄ってくる音が響いてくる。
「まこちゃん!おかえりなさい!」
挨拶と同時に誠へと抱き着いてくるのは、朝方お弁当を届けに来た梨紗の姿。
誠の首に腕を回して抱き着き、ぶら下がる梨紗を手慣れた仕草で抱き上げて、誠はそのままリビングへと向かう。
「お弁当、美味しかった?」
「・・・あぁ、美味かったよ奥さん」
「わーい♡うれしーい♡」
嬉しそうに歓喜の悲鳴をあげて、誠の肩へ頬ずりをする。
梨紗のスキンシップは今に始まった事ではないので、誠は梨紗の好きなようにさせていた。
「もう一回!」
「駄目だ」
「アンコール!!」
「やらん」
そう、実はこの二人、結婚しているのである。
城嶋 誠。
25歳の警察官、彼は25歳という若さですでに18歳の奥さんを持っている身であった。
長く語るのは得意ではないのだが、梨紗と誠、二人の父親は幼いころから仲が良かったそうだ。
当時7歳の誠と0歳の梨紗が初めての出会い、5年後に梨紗の家族は急遽海外へ飛び立ち別れ、そして11年後に誠と梨紗は再会した。
再会したときの梨紗は16歳で、それはもう誠への猛烈な求愛をし続けた。
まぁ色々あって、何があっても真っ直ぐに誠だけを見つめる梨紗の想いに陥落した誠は、梨紗が18歳を迎えると同時に入籍をした。
だが、たとえ日本が18歳で結婚できる年齢だとしても世間の目は大変厳しい。
なので梨紗が20歳を迎えるまでは、職場にも友人にも周囲にも、必要最低限範囲にしか告知はしてない。
だから派出所の同僚達も誠が既婚者であり、梨紗が誠の奥さんだとは知らない。
ちなみに夫婦といえど、誠はまだ梨紗に手を出していない。
たとえ孫コールをされようが、梨紗が20歳になるまでは耐える所存だ。
梨紗にも説明をしたのたが、誠への愛を隠すことなく内でも外でも振りまいてくる。
が、誠が本気で困るような事は決してしないのが梨紗らしい。
もっとも、誠のためとなると話は別だが。
「あ、まこちゃん」
「なんだ」
「今日ね!座るだけで血流改善する電位治療器買ったの♡あとで試そう♡」
「・・・」
誠のことになると、普段の聡さはどこかへ飛び、びっくりするほど馬鹿になる。
「梨紗」
「はーい♡」
「今すぐ契約書を出せ」
これは誠と梨紗、二人の夫婦の日常と恋愛を描く物語である。
***♡***
最期までお読みいただきありがとうございました。
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