第五話 緑色
ーー晩の池に姿を現した妖・翠晩魔。その正体は元人間であると、私は推測した。なぜ、そう思ったのか。ちゃんと理由はある。
その昔、東東宮に仕えていたとある一人の女官がこの池で入水自殺したと、私は聞いたことがあった。
* * *
ーーそれは、こんな出来事だった。
翠翠という名のその女官は、緑色の美しい髪を持っていた。が、ある日、とある宦官にこう言われる。
「そなたのその髪、昆布みたいじゃな」
女官はそのヘンテコな悪口に傷ついた。そして、とある晩の日、その女官は池に飛び込み、自身を殺めたのだ。
* * *
そして今、その女官の怨念が、妖・翠晩魔となって姿を現している。この翠晩魔を倒すのは筆では無理だ。別の方法が必要なのだ。
その方法とは、至って簡単だ。
「翠晩魔…そなたの…緑色の姿は美しい」
私は目の前の妖にそう言った。すると、妖の攻撃的な姿が一変、美しい女性の姿へと変貌したではないか。
「そなたが…翠翠だな」
私はその女性に問うた。すると、女性は涙ぐんだ目でこう答えた。
「いかにも、私はこの池に入水した翠翠という女官だ。若き侍女よ…私のこの緑色の姿、美しいと言ってくれてありがとう…」
そう言って、その女性・翠翠は成仏した。未練は少なくとも残っているだろうが、私の言葉が救いになったのだろう。
「紅蘭…これで良かったのですね…」
私の横で涙ぐむ青鈴。私もまた、彼女と同じように涙を流すのだった。
ってか、翠翠の緑を馬鹿にしたその宦官、マジで許せない。それだけが心残りだ。
* * *
ーー後日。
私が翠晩魔を倒したという手柄は、後宮内に知れ渡った。そしてだ。青鈴がまたも、私にとある噂話を持ち出してくるのだった。




