第四話 想定外の出来事
晩の池に姿を現したのは、翠晩魔と呼ばれる妖であった。緑色の身体をした人型の妖であり、比較的弱い妖であると、私の脳内データでは記憶してある。
ーーだが、今回出た奴は一味違う。
「紅蘭! 翠晩魔がこっちに向かってきます!」
「まずい! 早急に仕留めなければ!」
池から飛び出した翠晩魔。私は事前に用意をしておいた退治道具をすかさずポケットから取り出す。
「奴が通常の翠晩魔であれば、この筆で倒せるはずだ!」
そう言い、私はその翠晩魔に、彼らの弱点である筆を見せつけた。だが…
「なんと…効かぬっ?!」
「えぇっ、なんですって?!」
思わず、私と青鈴は驚いた。無理もない。なんせ、効かないのだから。筆が。目の前の翠晩魔に。
「このままではマズいっ!」
「では、どうしましょう?!」
想定外の出来事に、流石に私は焦った。マズい。筆が効かなければ他の弱点を考えねばならないが、分からぬ。
動揺する私と青鈴。
ーー刹那、私の脳内に、孤児院の長から聞いた言葉が頭をよぎる。
* * *
なぜ、私はこの不可解さを忘れていたのだろう。きっと、同様で頭が混乱していたからだ。そうに違いない。
「想定外の出来事が起こった場合は、そこにある理由について知れば良いのだ。そうすれば何事も対処できよう」
長はいつも口癖のようにそう言っていた。私はそのことを思い出したのだった。そして…
* * *
「青鈴…! おかしいと思わないか?!」
「なんですっ? 紅蘭!」
私は、思い出した。
「翠晩魔は普通、晩にだけ現れるなんてことはない! が、今回の奴はなぜか晩にだけ現れる! これがどういうことか、君には分かるか?!」
「って、ええ…?! どうしてでしょう?!」
そうだ。翠晩魔が晩にだけ現れるというのは不可解だ。だが、それには理由があるはずだ。
晩、池、緑色…全てのピースを繋ぎ合わせ、私は答えを導き出した。
「この翠晩魔…きっと元人間だ…」
「って、えぇ?!」
ーー果たして、紅蘭が導き出した答えとは?!




