第三話 池の妖・翠晩魔
ーー私・紅蘭の住む国ではよく『妖』が出る。
妖とは、一般的に人に悪さをする怪異の総称である。稀に契約などをして人と協力関係を結ぶ妖もいるが、基本的には前者が多い。
そして、私は彼らの生態に精通している。なぜなら、私は田舎出身であり、孤児院の長から多くの妖について詳しく教わったからだ。
妖にはそれぞれ倒し方がある。その倒し方を見抜き、成敗してやるのが私・紅蘭の特技であった。
* * *
池に出る妖は、どういう訳か、晩の時間だけに現れるという。緑色の人型の妖らしく、比較的小型であると、女官から情報を得た。
その情報をまとめるに、妖博士である私は推測した。
「なるほど…その妖は察するに、『翠晩魔』という妖ですね」
「すっ…すいばんま?」
青鈴は首を傾げた。無理もない。なんせ、日常的に生きていて妖のことを知る機会など、とうにないのだ。
だが、そんな彼女のような人のためにも、詳しい私が説明する必要がある。
「妖は、それぞれが固有の名前を冠して生まれます。翠晩魔はその一つであり、弱い妖ですよ。なぜ晩に現れるかが不可解ではありますが、今晩、倒して見せましょう」
「…こっ、今晩?」
そう言って、私は少々イキってしまった。が、内心、緊張はしていた。なんせ、後宮で妖を退治するのはこれが生まれて初めてだからだ。
田舎では妖を幾度か退治したことはあったが、後宮となると妖のパワーの源である『人々の負の感情』が多くあると思われる。故に、今回現れた翠晩魔も少々強力なものであると言えよう。
* * *
ーー晩になった。
私は青鈴を連れて、妖の住む池へと向かう。
「なんだか、緊張しますね…紅蘭」
「大丈夫だとも…妖は、この私がやっつける」
またも緊張を無理に押し込もうとする私。そんな私の気持ちなど関係なく、奴はすぐに現れた。
「紅蘭! あれを見てください!」
「んっ…あれは?!」
青鈴が指を差した。刹那、そこに翡翠のような輝きを見せる一匹の妖が姿を現した。
「あれが…例のですか…」
青鈴は私の身体にギュッと寄り添い、身震いした。無理もない。なんせ、奴のその姿は悍ましいものだったからだ。
「間違いない…現れたな…! 翠晩魔!!」
ーーそして、始まる!紅蘭と翠晩魔の戦いが!!




