第二話 東東宮の噂話
その昔、後宮に紅蘭という一人の若い侍女がいた。
彼女の容姿は優れており、ミルクティーブラウン色の美しいロングヘアが美しかった。目はタレ目だがパッチリしており、童顔だった。また、身体は小柄であった。
彼女の服装についても語ろう。侍女であるから、当然、彼女の服装は漢服だった。赤を基調とした美しい漢服だ。
ーー容姿は優れていたが、ごくごく普通の侍女である紅蘭。そんな彼女には、とある特技があるのだった。
* * *
ある日。私は同じ侍女であり親友・青鈴から、とある噂話を聞く。
「紅蘭。この噂話、知ってる?」
「なにっ?」
「それがさ…後宮に妖が出るっていう話でさ…」
* * *
ーー青鈴の話した噂話とは、以下のような内容であった。
前提として、後宮には四人のお妃がおり、そのうちの一人である東珠妃の住む東東宮に紅蘭たちは仕えている。
その東東宮にある池に、晩の時間だけ、妖が現れるというのだ。とある一人の女官がそれを目にしたという。
* * *
ーー妖って、一体どんな奴だ?
私はそう思った。しかし、青鈴の話から分かる情報だと、ただ『晩の時間の池に妖が出る』、それだけしか分からなかった。よって、私が次に起こす行動はこうだ。
「ねえ、青鈴」
「なに、紅蘭?」
「私を…その妖を見たという女官の元へ、連れっててはくれまいか?」
「…あら、そういうことなら! まかせて!」
* * *
こうして、青鈴は私をその例の女官の元へ連れて行ってくれた。流石は青鈴だ。顔見知りも多く非常に頼りになる。
私がそのように感心している内に、青鈴と私は女官の働く屋敷の前にたどり着く。そこには、一人の女官がいた。
「あら…いらしてくれたのね」
女官はそう言った。なんだか不安げな顔をしている彼女だったが、青鈴の明るい笑みを見て少々ホッとしている。
「青鈴よ! こっちは紅蘭!」
「あっ…どうも紅蘭です…」
青鈴は私を女官に紹介した。女官は「よろしく、紅蘭」とだけ一言。またも暗い印象の様子だった。どうやら、この女官はかなり妖のことで気を病んでいるのだろう。
まあ、無理もない。なんせ、妖は基本的に人に悪さをするものだ。契約などをして協力関係になるものもいるそうだが、今回現れた妖は前者だと、私は推測する。
ーーそして、私たちは女官からの話を聞きながら、その例の池へと足を運ぶこととなる。




