第十三話 紅蘭の心残り
梅漢魔を倒した海俊は、奴から依代である憂鴉の肉片を回収した。そして、英泉の元へと戻るのだった。
「梅漢魔に関する任務、ご苦労であった、海俊、紅蘭」
英泉は私ら二人にそうお礼を言った。褒められて照れる海俊。だが、私は正直、気まづくなった。
なんせ、私は梅漢魔を倒す際、何もできなかったからだ。倒したのは紛れもなく海俊、ただ一人の力だ。私はこのように褒められて良いものかと、腑に落ちなかった。
が、英泉も海俊も優しかった。申し訳なさそうな私の顔を見て、海俊は言った。
「ったく、私は紅娘の暗い表情など見たくありませんぜ」
続けて、英泉もこう言った。
「全くだ。私はそなたに暗い顔をして欲しいと頼んだ覚えはない」
二人とも…良い男たちだ…
私は心底、そう思うのだった。そして…
「ありがとう…」
と、ただ一言。伝えるのだった。
* * *
その後、日が経った。私は再び侍女としての仕事に戻った。青鈴と共に仕事に励む。その時だった。
「紅蘭、噂話があるんだけど…」
「…って、ええ? また…?!」
私はそのような反応をするのも無理はない。なんせ、青鈴が噂を持ち込むスピードは異様に早いからだ。が、私は彼女の話を素直に聞いた。
「そのね…噂なんだけどね…」
* * *
噂の内容は、以下のようなものであった。
後宮の奥深く、西西宮の庭に妖が現れるという。しかもどうやら、人型のいかにも強そうな妖らしい。
ワンチャンだが、そやつももしかしたら、例の依代を手にした妖もしれない。と言うのだ。
* * *
「これは重要なことを聞いちまった! 早速、私は西西宮に向かうとするよっ! ありがとう、青鈴!」
「うん! 頑張って! 紅蘭!」
ーーこうして、私は再び海俊を連れ、西西宮に現れる妖とやらに会うとするのであった…




