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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)が異世界トリップ?
8/228

8.

1秒間に2m(目測)進んでいるこの馬車が、1km先のあの建築物に辿り着くにはどれくらいの時間がかかるのか?

単純に計算すると距離を時間で割ればいい。

面倒なので、摩擦やら重力やら傾斜やらは度外視。

とりあえず、計算してみると、1000(m)÷2(m/s)=500(s)となる。

500秒は約8分18秒。

つまり8分強で到着する。

ただし、目測計算でなおかつカツサンド状態の三人分の質量込みで傾斜を登る為、到着は10分後とみた。

とまあ、暇なので計算してみたがこの10分という時間を使って、昨日から疑問に思ってきた事の解決を図りたい。

そこでいくつかの実験を含んだ質問をしてみたいと思う。

取り敢えず昨日疑問に感じた、"言葉が何故通じるのか?"という事と、これから自分の身の振り方を考える為に"ここの大まかな社会構造"などを聞こうかと思う。

質問事項は、以下の通り。

通じる言語は何か。

通じる単語は限定されていないか。(この世界にない言語まで通じるのか)

この国が身分制社会なのか。

時間があれば、以降の行動予定も。

では早速。

「あのー、質問いいでしょうか?」

「なんだ?」

隊長が応じた。

「Où est-ce que je suis?」

「何だって?」

フランス語は駄目か。

「いえ、ここはどこかな?と思いまして」

「今、王宮に向かっている」

「王宮!?」

目的地が見えてから、予測はしていましたが……

でもなんで囚人が王宮?

王宮で、尋問や裁判を行うのが、この国の慣例なんだろうか?

なわけないか。

「極めて異例なことだ」

キースが言う。

目を合わせない。

不機嫌そうだ。

王宮という単語が出てきたので、恐らくここには身分制度がある。

そしてキースは坊っちゃんだ。

そうに違いない。

起居振舞もそうだが、言動がすれていないというか軍人臭くない。

ともかく、キースは坊っちゃんでプライドも高そうだ。

私みたいな、囚人が王宮に足を踏み入れる事が嫌なのだろう。

そして、なんで自分がこんな囚人の移送なんかと、心の中で悪態でもついてそうだ。

不機嫌の理由が解ってスッキリ!

「そうですか、解りました。それにしても、アナログな移動手段だなぁ」

「アナロー何だって?」

隊長が訝しげに聞いてくる。

「え?あぁ、独り言です」

にっこり笑ってごまかす。

「・・・・・」

よし、次いこ次。

「えーっと、私レイ=タダノ=オカシズキー=ド=ジャポンと申します」

どうせ異世界だし、名前が長い方が貴族社会において有利だろうと考えた。

高く売れるものは高く売っとけ。

てことで偽名。

後で後悔する事になるのだが、今の段階で私は気付きようがなかった。

「変わった名だな。髪も黒に近い。異国人か?」

とりあえず、にっこり笑いながら頭で考える。

王宮に向かっているという事は、私に関して何らかの政治的なものが絡んでいる可能性があるのかもしれない。

迂闊な事は言わないほうがいいだろう。

なにせ今の身分は囚人だ。

てことは、ここはダンマリが正解。

「・・・・・えと、あなたのお名前は?」

全力でスルーし、話題転換。

「ああ、私は ローアム=フォンジッニ=デラ=ウナオイア。でこっちは、キー」

と隊長が言うと途中からかぶせるように

「キーシェング=フィオーナ=ぺオリ=ジュマオイア」

とキースが名乗る。

やはり不機嫌。

でも名乗るところが律儀というかなんというか。

少し笑ってしまった。

速度がかなり落ちたので、窓から外を見る。

どうやら目的地に着いたようだ。

やっぱり宮殿すごいな。

カメラがほしい。

そしてゆっくりと馬車が停車した。

「着いたぞ」

相変わらずいい声で、隊長が言う。

降りようとして、前の席を凝視する。

そして最大の疑問を口にした。

「あれ?結局前ってなんで空いてたの?」

隊長は意味あり気にキースを見、キースは目を逸らした。


右窓から差し込む光が、スポットライトのように空いた席を照らし出していた。

非常にむなしい空間だった事をここに付け加えておく。

ここまでお読みいただいて、ありがとうございます。

ここではじめて二人のフルネームが出ました。

主人公の名前は、偽名を名乗らせてしまいました。

本名はまだ先になります。

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