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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)が異世界トリップ?
2/228

2.

ここから変更しています。

気付いたら、そこは異世界だった。

よく有る小説のよく有るシチュエーションのワンフレーズ。

友人が好んで読んでいた小説の中にも、そういう一文があった事を思い出す。

そして今私が置かれて居る状況は、まさしくこの表現そのものだった。

わけが解らない。


—————————————————————————————————

「あ~、しまったもうこんな時間かぁ」

定時なんか、遥か彼方に過ぎた。

後少しだけと思いつつ、資料を作り続けてみれば21:00を過ぎていた。

昨日の仕事分を今日に持ち越したのも、残業の原因では有るが。

まぁ、その割には早めに終わったので良しとする。

さてと、帰るか。

勢いつけて立ったら、前の席に居る堂島と目が合った。

入社当時から元気の有り余った感じの後輩で、現場が似合いなのに何故かデスクワークな26才だ。

「堂島、お先」

「あぁ、お疲れ様っす。なんか雨止まないですね。先輩気をつけて帰ってくださいね?」

少し充血した目が、堂島の疲れ具合を現していた。

そう言えば、堂島は昨日も残っていた事を思い出す。

「ありがと。きりの良い所で上げないと、帰りそびれるぞ~」

「あはは~、1時間以内で終わらせますよこんなの」

「おお、頼もしい。んじゃ、お疲れ様」

堂島にそう言ってから、会社を出た。

さっきあいつが言っていた通り、外は雨だった。

しかも結構酷い。

社内に居ると外の天気が判り辛い。

そこが難点だ。

さて、今から帰ったら21:30だな。

何も作る気がしないから、冷凍物で済ませるか。

等と、今晩のメニューを考えつつ、地下の車庫へと向かう。

車で地上に出る寸前、くぐもった雷鳴が耳に届く。

どうやら、徐々に近づいているみたいだ。

その音に追われる様にして、車を走らせた。

今日の出来事を思い出しながら、東に向かっていると、時々フラッシュを焚いた様に周りが明るくなる。

勿論、対向車のライトなんかではない。

まるで、狭い部屋で電気の明滅をワザと起こされている様な気分になった。

何か本当に、この車へ近づいている気さえする。

まぁ、原理は解らないが車中は安全だというし、問題は無い……はずだ。

こちらは55Km/hも出しているし大丈夫だろうと楽観視しながら走っていると、突如視界がハレーションを起こした。

その瞬間轟音と共に焦げ臭い何かがガラスを突き破り、頭にぶつかって来た。

あー、雷に追いつかれたかぁ……

そう考えた所で、意識がブラッカウトした。


んで、気付いたら異世界だった。

何故、ここが異世界であるという結論に至ったのかは、割と簡単な答えが目に映し出されていたからだ。

ただ、どれだけ目の前の物が現実だと訴えていたとしても、私の気持は納得しなかった。

だから先程、現実逃避をしていたのだ。

例え頭を襲う痛みが現実だと知らせ、目に映る物は本物であると主張していたとしても。


気を失った以降、現実逃避を行う以前、目を開けると私は冷たい床に横たわっていた。

ここは石畳になっていて、酷く寝心地が悪い。

そっと体を起こすと、体中から痛みの信号を発していた。

1か所だけ特に明るい場所が目に付いた。

窓だ。

30cm四方の小さな窓から光が漏れていて、この空間をひっそりと照らし出す。

周りを見渡すには十分な光量である事に満足すると、ゆっくり首をめぐらした。

そして目を見張る。

そこは鉄格子(!!)が嵌めてある、まるで牢屋の様な部屋だった。

というか、牢屋そのものだった。

鉄格子の向こう側には約1.5m幅の通路があり、更にその向こう側には木造らしき扉が薄っすらと見えた。

開く気配は無い様だ。

今、開かれても困るのだが……

それら以外に、この部屋には特筆して見るべき物は無かった。

部屋を見回したところで、急に窓の外が見たくなった。

あちこち痛む体に鞭打ちながら、そっと窓に近づく。

身の丈より3,40cm高い所に鉄格子がはめられた窓があり、残念ながら外の風景を見る事が出来なかった。

まぁ、当然といえば当然の造りなのだが、何だか悔しい。

だが、見れないものは仕方がないかと、諦める。

外を見る手段はいくつか有るが、今見るよりもきっと日が昇った明日の方が良いだろう。

一旦諦める事にした。

幸い、空だけは眺める事が出来たので、壁を背にして静かに座る。

自分を落ち着かせる事を最優先にした。

ひんやりとした石壁は、ほてった背中に当たり気持ちが良い。

この冷たさで、少し落ち着きを取り戻す事が出来た気がする。

顔を上げ、窓から空をぼんやりと眺めた。

その視線の先には、月が静かに浮かんでいた。









3つの月が。

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