第45話 「狙いの一閃」
藤が上から攻撃したことで、セルファは核を対角線上、真下に移動させた。
そしてセルファは花棺自体ではなく、武器に脅威を感じている。
「引っかかった」
よって、武器を顕現していない第七機には気づかず、核も反応しなかった。
『っ敵の核が移動していません!』
『……なるほどこれは、彼にしかできない』
武器の顕現を操る、双樹にしか。
「ギリギリまで……チャンスは一回だ」
第七機は速度を上げて浮上し複合核を持った右腕を上げる。
距離を詰めながら、蠢くセルファの核に何度も照準を合わせた。
「っ、くそっ! 狙いが定められない!」
だが、揺れる水中では視界が悪く、敵もタダでは死なない。
『……このままでは埒が明かない』
朝桐はマイクを掴んだ。
『第七パイロットは複合核を固定し、そのまま直線で至近距離まで詰めろ。こちらで誘導する』
「っはい、了解!」
双樹は少しだけ花棺の速度を落とす。
状況を把握した朝桐が指示を飛ばした。
『花澤、エネルギー反応から二つの核の位置は分かるな』
『はい』
『第七機攻撃予測地点から武器を顕現した場合、的確な位置に敵の核を当てるならどれくらいのずれがある』
『……第七機から見て左に約一・五から二メートルです。対象は動き続けているので正確ではありませんが、』
『構わない』
その時、双樹の乗ったコックピットがぐらりと揺れる。
「っ、」
セルファはじわじわと傷口を埋めながら巨大な身体を起こそうと必死にもがいている。
規格が大きくなったことで修復に手間取っているようだが、体力が戻り逃げられるのも時間の問題だ。
『第三パイロットは現地点から東に二メートル移動。直下を撃て』
『はいよ!』
第三機は指示通り、剣を構えた。
『双樹! 今度こそ同時だ!』
藤の力のこもった声に、双樹も不思議な勇気が湧く。
『第七機の呼吸器官、機能停止まであと一分!』
第七機は十分に狙える距離。
双樹が意識を傾けると複合核は光り始めた。
「冬夜!!」
『っ、せーのっ!!』
第三機の大剣がセルファの皮膚を軽く突くと、裏側の核は右へ移動。
第七機の複合核が白と黄金の槍へ姿を変えたのは全く同時だった。
ギュイィィィィッ!!!
セルファは尾と頭を一心に振りながら苦しむ様子を見せると、ぱたりと動かなくなった。
すでに夜の暗がりを抜け、湖は朝を取り戻そうとしている。
『…やった』
藤は花棺から見下ろして呟いた。
水面を覆う巨大なセルファの身体、その中心からは大きな白い核。
そしてそれを貫く槍の切っ先が現れていた。
『だ、第三十二生命体、完全に沈黙!』
花澤が高揚のまま力強く言い切ると、司令室でも喜びの声が上がった。
静かなコックピットにも、無線からそれが反響する。
だが、藤と朝桐には、不穏な戦慄が走った。
『っ双樹!!!』
命を失ったセルファの亡骸は、重く、沈もうとしていた。




