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友情割引で世界が確変される物語  作者: 央艿 尚
第1章:人間界で勇者ごっこをしてみる
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 人間界には徒歩(かち)で行けれると言う。


 人間の冒険者っぽい格好をした一行は、案内する剣竜の後ろに付いて歩く。

 いくつかの街角を曲がり、次第に人気の無い裏路地に出た。薄暗く狭く迷宮のような裏路地をしばらく歩くと、次第に人通りが増え、露店が並ぶ通りに出た。


 そのまま、露店が並ぶ通りを抜けると更に賑やかな場所に出た。街並みが少し変わったが、剣竜はそのまま迷わず進んでいく。

 街から一歩も出ていかない事に連は気になりはじめた。


「……なぁ、人間界には徒歩で行くんだよな?」

「ああ、そうだよ。」

「でもここ街の中なんだけど……。」

「そうだ。ナユルメセルの街だ。()()()()()()。」


………………なぬ??!!?!!!


「いやいやいや……!!

お前、人間界に行く時には結構大変そうな事を言ってなかったか??!」

「確かに、魔界から人間界に入る際には、一定以上の魔力がある者は篩にかけられ、人間界(こっち)には来れない。

それがこの世界の(ことわり)だ。」

「俺ら、ただ、」ナユルメセルの街を歩いていただけだよな???」

「お前、魔界から人間界に行く時にどうやって行くと思ってたんだ……。」

「いや、こう。森とか怪しい遺跡とかに行って、でかい魔法陣とか出て、空間がぐにょりと曲がってモヤモヤっと……。」

「そういう手もあるが、懸命な手段では無い。

 深夜アニメの見過ぎだ。ガキはリアルタイムで見ずに録画して観るか配信で見ろ。

…いいか。世界線ってのはな……」




 世界は7つに分かたれている。

かつては、世界は5つでありどの世界への往き来も自由だったらしい。だが、現在は7つの世界で、各世界は隔たりのうちに存在している。


 神族の世界、天界。

 人間の世界、人間界。

 魔族の世界、魔界。

 選ばれし魂と種族の棲まう世界、楽園。

 悪魔の追放地と投獄されし世界、地獄。

 精霊と妖精の世界、聖霊界。

 龍族の世界、龍禘界。


 楽園は天界に附随し、地獄は魔界に附随して存在している。

 天界と人間界と魔界は、三世界が重なり合って存在し、いわばボールの表裏の様に密接している世界だ。


 そして、聖霊界と龍禘界は天界・人間界・魔界の三世界に跨がるように存在している。

 三世界に跨って存在している、聖霊界と龍禘界の住人は自由に三世界を行き来出来る。精霊族・妖精族・龍族の者だ。


 それ以外の、天界・人間界・魔界の住人はそれぞれの世界の行き来に制限がある。

天族と魔族は人間界に行こうとするならば、魔晶あるいは神晶と言われている魂の結晶に宿る力が強ければ強いほど、人間界への干渉が行えないよう、往来を阻まれる。

 人間は天界・魔界に自由に行けれるが、それぞれの世界で大気とも言える聖素・魔素が濃すぎて、恩寵(ギフテッド)加護(ディヴァインド)などの特殊スキル持ちで無い限り生体を維持できない。


 三世界の往き来にはいくつかの方法がある。


 連が想像していた様な、大規模な法陣を敷き転移術を行使する方法。かつて往き来が自由だった頃に建造された遺跡の転移システムを生かして往き来する方法。

 これらの方法は、世界の(ことわり)を踏み抜いて、力の強い者も人間界に送り込む事が出来る。

 だが、大規模な術式とそれに伴う蝕害が双方の世界に発生する。


 そして、狭間の街を通る方法。

狭間の街は、支点の様に天界・人間界・魔界それぞれに同じ街が存在する。

 街中にあるいくつかの結界さえ抜ければすんなりと世界線が越えられる。但し、魔晶・神晶の振り分けの篩がかなり厳密になる。




 「……幸いな事に、玉蘭と猫火は精霊族だからな。

世界線を越えるのに何ら障害も問題も無い。」

「だったら、精霊族と魔族の混血(ハーフ)のオレは?」

「お前は、弱っちい癖に魔力量だけは “人間界の魔王” クラスだったからな。()()が無かったら多分抜けれて無いな。」

「封印???」


 剣竜は、先程、連にヘアバンド風に巻いたスカーフを指差す。


「会計の合間に色々付与しといたから。」

「そういう事は先に言えよ!!! 知ってると知らないとじゃ対応が違うって言ったのお前だぞ?!」

「そういえばそうだったな。悪ィ、言ってなかった。

封印は世界線を抜けたら解除されるように設定してあるから、安心しろ!」

「お前が選んで、買ってくれてちょっと嬉しかったのに……」

「そんな事で喜ぶなんて……、お前、ほんとボンボンでチョロいな。」


 ぐぬぬぬ…という顔で連は剣竜を見る。


「いつの間にか世界線を抜けていましたが、剣竜さんも連くんみたいに封印を?」

「ん〜〜〜……まぁ……… そこは、(じゃ)の道は(ヘヴィ)って事で。」


 なんか適当にはぐらかされた。

多分、突っ込んで訊いても答えてはくれないだろう。





 歩きながら周りを見渡せば人間が増え、魔族の人数が少なくなっている。確かにここは人間界なのだと感じた。

 魔界側のナユルメセルより物々しい装備を携えているものが多い。

「何かあったのかな……。」

 街に漂う険呑な雰囲気に緊張したのか、連の手が羽織っているショートマントの裾をぎゅっと握りしめる。

 玉蘭も猫火も大人しい。


加護(ディヴァインド)持ちが何人か居る。

これは()()が出たのかもしれないな。」

 往来の人混みを観察しながら剣竜が言う。

 魔界にも魔王は居る。居るが、いくつかある領地の統治者をそう呼称しているだけだ。

「魔王とはこんなに街の雰囲気が悪くなるものなのですか?」

「人間にとっちゃ、大規模自然災害と同じか、それ以上に性質が悪いのが魔王だからな。

 大まかな情報を集めに、冒険者ギルドに行こう。」


 剣竜に促されるまま、街中を進み、石造りの大きな建物前に辿り着いた。大きい看板に「冒険者ギルド:ナユルメセル支部」と書いてある。

 連と猫火と玉蘭はギルドは初めてだ。

好奇心と緊張混じりで見渡しながら入る。ギルド内はかなりの人数でごった返していた。


「俺は既に人間界(こっち)のギルドカードを持っているが、お前等は無いんで、新しく作るからな。

書類手続きは俺がしてくるから、本人サインだけは魔術認証が必要だから、呼んだら来い。」

「わかった。」

「玉蘭、手を離さないで。はぐれないようにしましょう。」

「ふぁーい!」

 猫火がしっかりと玉蘭と手を繋いだのを微笑ましく見ながら、連は剣竜の後を追う。


 剣竜は迷う事なくギルド内にいくつかある窓口の、青く塗られた受付に行き、カードを差し出した。

「ランクA。キルケャ族のケーンレフ・ファルゼルダ様ですね。本人認証をお願いします。」

 キルケャ族というのはこの人間界にある種族なのだろうか。

剣竜は連の様に非人間部分を隠したりしていないが、特に何も言われなかったところを見ると、人間界(ここ)にそういう種族が居て、剣竜はその種族という設定なのだろう。


 受付嬢が差し出した小さい魔道具に剣竜が手をかざすと、一瞬光って収まった。

「ありがとうございます。では、こちらに………─」


 連が淡々黙々と受付嬢とやり取りをしている剣竜の少し背後で待っていると、横に並んでいた明らかに「魔王を倒しに行きます」みたいな格好をしている一団のリーダーっぽい人物に話しかけられた。

「今日のギルドは混んでいますね!」

 すっごい爽やか。金髪碧眼高身長の極上のイケメンで、尚且つイケボ。

 見るからに高そうなで、由緒ありそうで、付与が山の様にありそうな装備品をしれっと身につけている。

あからさまに、勇者然としている。


「あ……ぁあ、そうですね。ギルドっていつもはもっと空いているんですか?」


 急に話しかけられ、挙動不審になりつつも連が応える。


ナユルメセル支部(ここ)は、最近現れた魔王とその軍団に関する依頼で立て込んでいますね……。

……君は、ギルドは初めてかい?」

 連のいかにも初心者っぽい挙動に、イケメンは優しく訊いてくる。

「ぁ……はい、友達と一緒に……。」

 チラリと剣竜の方を見ると、手続きを終えた様子だった。

「へぇ……。キルケャ族と一緒か。珍し…いや、失礼。

そうか、またこのギルドで会う時もあるだろう。頑張って!」

 イケメンの順番が呼ばれたのか、これまた爽やかに去って行った。入れ替わる様に剣竜が戻ってくる。


「めちゃくちゃ見てくれの良い、人間の雄だな。前に魔界(あっち)で見た……つか、話しかけられた事がある。

何、話してたんだ?」

「いや……なんか急に話しかけてきて…。ギルドが混んでるとか、キルケャ族が珍しいとか……。 大した事は……。」

「ふぅん……。」


 連の言葉を聞きながら、剣竜はイケメンを目で追いながら目を細める。


「あの男、恩寵(ギフテッド)持ちだな。色々とバレてないといいが。」


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