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友情割引で世界が確変される物語  作者: 央艿 尚
第1章:人間界で勇者ごっこをしてみる
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 冒険者ギルドで連たち3人の登録を行った。

玉蘭もすんなり登録出来て、連と猫火は驚いたが、ギルドへの登録に年齢制限などは無いらしい。

連は、魔術格闘家・ランクF。猫火は剣士・ランクF。玉蘭は魔術士……と、登録したギルドカードに書かれていた。

「なに……魔術格闘家って……。」

「剣士……確かに剣を装備していますが……。」

「まほーつかいだー!!」

 微妙な顔の二人に、全員の職業を記入して登録した剣竜は「人間界の冒険者ギルドの登録職業なんて、なんでもいーんだよ。」と、手をプラプラさせて言い捨てた。

 ちなみに剣竜のギルドカードを見せてもらうと、職業欄には「賢者」と書いてあった。

素手殺(ステゴロ(し))闘士の間違いだろ……と思ったが、口に出して言うと連が素手殺(ステゴロ)されそうなので黙っておいた。


 ギルドでの登録を済ませた後、宿を取る。

 冒険者ギルドに近く、清潔感もあり、広さもそこそこの、4つベッドが置かれた部屋。

入るなり、靴やら外套やら脱ぎ捨てた剣竜が、一番いいベッドにダイブする。

 真似をしようとした玉蘭を猫火が「お行儀悪いから止めなさい!」と制した。



 「さぁて、ギルドで得た情報の交換やら、今後の動向を作戦会議でもするか。」

 おおよそ、作戦会議とは程遠い、自分のベッドの上でだらけきった涅槃ポーズで剣竜が言う。

 猫火と連は自分のベッドの角に座り、玉蘭は剣竜の足元にお行儀良くちょこりと座った。

 剣竜が胸元からマント留めピンを外し、一旦立ち上がると、皆の中央に置かれた丸テーブル上に置くと指先で魔石(に変化させたただのガラス石)部分を指でコンコンと叩いた。

 待ってました!!!とばかりにキャップが飛び出す。


「も〜!!!頑張ってアタシが情報集めたのに、剣竜ったらなかなか声かけてくれ無いんだものー!

人間界(こっち)だと、呼んで貰えないと出て来れないの忘れたの??!」

「あ。そういえばそうだった。忘れてた。悪ぃ惡ィ!」


 再度寝そべった剣竜の、テヘペロより数段悪びれていない、口先ばかりの謝罪を聞いて、キャップはプウっと頬を膨らませてからピンの上にちょこんと座る。

 魔界にいた時は出て来る立体映像(ホロ)姿は、通常の人間と変わらない大きさだったのに、今は子供の着せ替え人形の様な大きさだ。


「キャップさんは……随分と可愛らしいお姿になってますね……。」


 率直な感想を述べる猫火に、キャップが哀しみを誇張しながら喚く。


「そ〜なの!そ〜なのよ〜!!

もうね!!人間界ってば魔素が薄過ぎてこんな大きさでしか、アタシの姿を投影できないのよ??!

 可憐なアタシの魅力が半減よぉおお〜!!!!!」


 キィキィ言いながら、ピンの周りをグルグル回る姿は、小妖精の様だ。

 「いいから報告!」と言いながら剣竜が指で尻を弾く真似をすると、「きゃっ!」と声を上げ、大げさに飛びのき、そのまま宙をくるくる回りながら、報告をはじめる。


「まずね〜。人間界(こっち)に“魔王”が現れたのが、約4年前。このナユルメセルより北に50km程の都市を蹂躙し拠点化して、好き放題してるみたい〜。

 魔王の名前はイギィリァゲルム。

未だに、名前以外はその姿や能力を確認出来て無いって。

 この4年程で、5組の勇者パーティが挑んだけど、誰も帰って来ていないって〜。」


「はい!質問。

魔界にも魔王って何人かいるじゃん。人間界に現れた魔王と魔界の魔王って何か違うの?」

「はい!連君!!!いい質問ですね〜!

 魔界の“魔王”と言われているのは、爵位を持った各地の統治者なんです〜。対して、人間界に現れる魔王っていうのは〜……

う〜ん……、ぅ……。」


「人間界に現れる魔王ってのは、爵位を持てない、持つ事が出来ない能力の足りないクズなんだよ。」


 キャップが言いにくそうにしていると、剣竜が説明の言葉をを続けた。



 魔界にも国や地方という概念がある。

 そこを統治しているのが“魔王”である。魔族の概念として、魔王とは畏敬に値するだけの実力が無いと、統べる資格は無いとされている。

 こうして魔王とは高位でかなりの強さを持った存在となるが、当然()()()()()()()()()()が居る。

大抵の場合、魔王に仕える立場を選ぶが、中には己こそが魔王に相応しいとして、離反し人間界へ渡って魔王として君臨するものが現れる。


「どうして人間界なのですか?」

「理由はいくつかあるが、最も大きい理由は、尸晶(ししょう)だな。」


 言いながら剣竜は、異空間収納からいくつかの結晶を取り出す。

小指の爪程の大きさで、どれも結晶の模様や形が微妙に異なる。



 結晶を丸テーブルに置きながら、剣竜は説明を続ける。



 尸晶は霊晶とも言う。

神族なら神晶、魔族なら魔晶、人族なら尸晶……という風に呼び方は変わるが、総じて霊晶である。

それは魂の結晶で、個々の生命体エネルギーと霊力の結晶でもある。


 全ての生命体には霊晶がある。

だが、ひときわ人族の霊晶である尸晶は特異な存在である。


 魔族、神族の者らは()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 だが、神族が神晶・魔晶を、魔族が魔晶・神晶を取り込んだとしても、得られる力は1割にも満たない。

しかし、尸晶を取り込めばその7〜8割の力を取り込める。

 尸晶を得るのは簡単だ。人間を殺し、抉り出せばいい。


 「……だから、魔王になれなかった奴が魔王になろうと、人間界(こっち)にやって来て、人間を蹂躙する。」

 剣竜が蔑みの表情で人間界の魔王を語る。

「だけど、人間側には“勇者”が居るんだろ?」

「勇者ってのは、魔王と相対する上で()()()()なんだよ。

 さっき、ギルドでお前に話しかけてきた恩寵(ギフテッド)持ちのイケメンがいただろ?」

「ああ。剣竜が恩寵(ギフテッド)持ちだって言ってた人……。」

「あいつは間違いなく“勇者”だぞ。

と、言うか。 恩寵(ギフテッド)持ちでなければ勇者にはなれない。そして、“勇者”は人間界の魔王にとっては格好の餌なんだよ。」


「餌?」


 剣竜はいくつか取り出した霊晶の中で一回り大きな霊晶を取り、見せつける。

「人間というのはな、霊晶に含まれる()()()()は普通の魔族と同レベルなんだよ。

それが不思議な事に、通常の人間生活において全くポテンシャルが発揮されない。まるで封印されている様にな。

 だが、魔王が現れたりして人間界に生命体としての危機が訪れると、必ず恩寵(ギフテッド)加護(ディヴァインド)を持った者が同時多発的に現れる。

 恩寵(ギフテッド)持ちになると、あたかも封印の様な障害が無くなり、ポテンシャルは十二分にその能力が発揮される。

 それどころか魔王クラスの高位魔族と同じレベルの霊力を得る。

 ……それがノコノコと、魔王退治に魔王の元へ乗り込むんだ。尸晶を狙っている魔王としては、鴨がネギ背負ってるのと一緒だ。

 勇者が負ければどうなるか、分かるだろ?」


 剣竜がひょいと大きな霊晶を連に投げて寄越した。

 一見、ただの綺麗な結晶が、生めかしく煌めいた気がした。この結晶はいつかどこかの勇者の尸晶(もの)だったに違いない。ギュッと胸の奥が締め付けられる気がした。



「今、人間界で起きている現状は理解しました。

……剣竜さんとしては、今後どう動くか指針はあるのですか?」

「俺は基本的には何も考えて無いからな。

だが、猫火と玉蘭と連(あんたら)は、玉蘭の安寧を確保するのが最優先だろ?」

「ええ。」

「実は、過剰な玉蘭の賜物(ギフト)と器の問題は、人間界(こっち)に来た時点で半分は解決しているも同然なんだよ。」


「?!!そうなのか?」

「どういう事ですか?」


 連と猫火が揃って立ち上がる。


「要は、ペラペラの紙コップみたいな器を、オリハルコン級にしてしまえば、中に入っている能力の質が水だろうが溶岩だろうが問題は無いからな。

 魔素がカッスカスに薄い人間界だと、賜物(ギフト)の魔力増大はかなり緩やかになる。

緩やかになるって事は、扱い易くなる。

扱い易ければ、増大する魔力の制御を身に付けるも、連や猫火にパスを繋いで常時魔力供給する経路を繋ぐのも楽になる。

 その間に、器部分を強化してしまえばいい。」


 そう言うと、剣竜は足元にいる玉蘭の頭をポンポンと撫でる。

「玉蘭はどうしたい?修行は大変だけど頑張る気はあるのか?」

「ぎょくらん、がんばるよ!しゅぎょーするの!!」

「だそうだ。本人はヤル気満々だな。」

「修行というのは、具体的にどの様な事を?」

 猫火が身を乗り出す。


「まぁ、今のところは猫火と玉蘭と連で“魔術修行”ってところでいいだろう。制御を覚える際に、身体の常時強化魔術の習得を兼ねて行けばいい。」

「???魔術修行?何で?」

 連が不思議そうに言う。

 妥当な反応だ。魔族は生れながらに己の霊晶に宿る属性の精霊と契約しており、幼い頃から歩く様に当然の様に魔術を行使していく。

 歩ける人に“歩行練習をしよう”と言っているも同然だ。


 剣竜がスルスルと指先で空中に魔術陣を描くと、一瞬光ったのち、光の膜が部屋の床から生じ、壁面から天井まで覆い尽くす。

「実践してみるとわかる。

連。結界を部屋に張ったから適当に魔術をぶっ放してみろ。」

 いいのかよ?!という顔で連が指先に魔力を集める。

「火球!」

 適当なその場の思いつきの魔術名を唱え、指先に火球を作る。

普段なら、このくらいの魔力を込めると直径50センチぐらいの火の玉が出来る……はず。……だが。



……ポヒッ!



 野球ボールくらいの可愛らしい火の玉がポッと出てすぐに燃え尽きた。


「?!?!!!……ぇええええ???」

「??!な??」

「あややー???」


 あまりにショボい火球に3人で変な声を上げている。

信じられないモノを見た顔だ。



「……な?」


 それ見たことかというドヤ顏を剣竜だけがしていた。


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