四話 課外活動
「ロスト。お前が魔物と戦うことになったら、どうする?」
教師であるエヴァンス・ライガの質問にロストは少し考えて答えた。
「相手を観察します。動きの癖や攻撃の前兆を見つけられれば、隙をつくことができるかもしれません」
教師はため息をついた。
「戦場ではお前の想像も及ばないほど強いものが星の数ほどいる。相手の弱点を見つけることができても、力がなければ相手を倒すことはできない」
「……はい」
「お前がどれだけ努力しようと魔力を持つ者との差は埋まらん。自分の立場を理解しろ」
ロストは反論しなかった。
そんなことは誰よりも理解している。
それでも、それは努力をやめる理由にはならなかった。
「先生の言いたいことは分かりました。ですが訓練は続けます」
教師は呆れたように首を振った。
「好きにしろ」
授業が終わるとロストは誰よりも早く教室を出た。
向かう先は訓練場だった。
魔力がない以上身体を鍛えるしかない。筋力、持久力、反射神経。少しでも鍛えれば昨日の自分より強くなれる。
それだけを信じて彼は今日も剣を振った。
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「……あと十回」
腕が震えていた。
すでに千回以上、同じ動作を繰り返している。
剣を振り下ろし、構え直し、踏み込み、横薙ぎに払う。
最後の一振りを終えた瞬間ロストは地面に膝をついた。
息が切れ、腕が上がらない。
「ロスト、まだやるの?」
声をかけてきたのはクリス・ヴィヴィアージュだった。
「クリス。どうしたんだ?」
「どうしたんだ、じゃないわ。もう日が暮れるよ?」
「もう少ししたら帰る」
「休むのも訓練のうちだと思うけどな」
「全然疲れていない。余裕だ」
「ほんとに、訓練バカなんだから…」
クリスは頬を膨らませた。
ロストは困ったように笑う。
「心配してくれてありがとう。でも、もう少しだけ」
そういうとロストは再び剣を振り始めた。
クリスはそんなロストを見て仕方なさそうに、どこかうれしそうに訓練を眺める。
これが最近の二人の放課後の時間だった。
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「はいはーい。おわりー!!全然少しじゃないわ!」
「あと少しだけ」
「あと少しとかじゃなくて、今日はもう終わり!」
クリスはロストの剣を取り上げた。
「明日は課外活動なんだから。無理して疲れが残ったらどうするの?」
「そういえば、明日か」
明日は学園の課外活動として魔物の討伐が予定されていた。
活動場所は、学院から少し離れた場所にある真紅の森。
教師たちは学生でも倒せる弱い魔物が出現する区域を選んだと説明していた。
しかし、ロストはその説明を聞いても安心できなかった。
魔物の生息地に絶対の安全など存在しない。特に力を持たない自分には。
「分かった。今日は帰るよ」
クリスはその返事を聞いてようやく笑った。
「じゃあ、一緒に帰ろう」
「ああ」
二人は夕暮れの道を歩き始めた。
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その姿を訓練場の入口から見つめている少年がいた。
ガルド・レイヴン。
炎を操る異能、パイロキネシスを持つ男。
彼は強力な魔力を拳に宿し炎を自由自在に操ることができる。
実戦形式の訓練では同年代の生徒を圧倒する実力を持っていた。
そのため、ガルドは努力する必要性を感じていなかった。
才能があるのだから勝てて当然。
負けたとしても異能を使いこなせばいい。
そう考えていた。
「……あんなに剣を振って、何になるんだか」
そう呟き、ガルドは背を向けた。
ロストに打ち込まれた時にできた痣がいつまでも疼いてしかたがなかった。




