閑話休題 ロストの休日
休日。
ロストは街を歩いていた。
目的は一つ。
「……今日は休む日か…」
昨日までの訓練で身体を酷使していた。
師匠であるケイオスからも、
『たまには身体を休めろ。それも訓練の一部だ』
と言われている。
だから今日は鍛錬をしない。
剣も持っていない。重りもつけていない。
完全な休日だ。
「さて……」
ロストは街を見渡した。
「何をすればいい?」
休む。
それだけのことなのだが、ロストには意外と難しかった。
ここしばらく、ゆっくりする時間もなかったし、最後に1日間を持たなかったのは…。
思い出せなかった。
「強いて言えば、二日間寝込んだ時くらいか?」
そんな時、目の前にこれでもかというほど楽しそうに歩くルルーを見つけた。
「ルルー、ちょっといいか?」
「ん?ロストじゃない。珍しいわね。あんたが街に出ているなんて」
自他共に認める、訓練狂いのロストが休日に剣を振っていないのはそれほどまでに珍しかったのだ。
「ルルー、普段休みの日は何をしている?」
「え?」
「今日は訓練をするなと言われているんだ」
「ああ……」
ルルーは少し考えて、
「私は買い物したり、友達と遊んだりするかな」
ロストはその答えを聞き、頷く。
「なぁ、ルルー俺と、遊んでくれよ。俺は友達が少ない」
あっけらかんという、ロストにルルーは吹き出してしまう。
「あはは。良いわよ!なにかしたいことはあるかしら?」
「身体を使わないことならなんでも良い」
「うーん。それなら食べ歩きかなー?」
そのまま、歩き出すルルー。
しばらくすると、屋台を指差して、大きな声を出す。
「ねえ、あれ食べようよ!最近流行っているのよ。あれ!」
それは、クレープ屋さんだった。
クレープを注文し、受け取り二人並んで近くの椅子に腰掛ける。
食べながら、ルルーがロストに話しかけた。
「そう言えば、クリスもここのクレープ好きなのよね。今度の休みはクリスと出かけたりしたら?」
なぜ、クリスを?とロストは思ったが、特に口に出すことはなく、頷くことにした。
「そうだな。予定さえ合えば、それも良いだろな」
ルルーは、予定なんかいつでも合わせてくれるわよと思ったが口には出さず、ある事に気がついてそのまま続けた。
「ロスト、クリームついてるわ。ほっぺのところよ」
「ん?どこだ?ここか?」
見当違いのところを拭うロスト。
「焦ったいわね。ここよ、ここ!」
そう言ってハンカチでクリームを取ってあげるルルー。
その瞬間、目の前にクリスが現れる。
二人を見て固まるクリス。
心なしか小刻みに震えているようだ。
ロストは、そんなクラスを見つけて、声をかけた。
「クリスも、クレープを食べに来たのか?なかなかうまいなここのクレープは」
その言葉にルルーはハッとし、自分たちの体勢を確認する。
側から見れば、恋人がイチャイチャしている距離。
実際は、そんな色っぽい話は何一つないのだが。
「クリス?違うのよ?別に何もないのよ?」
クリスはそんなルルーの言葉は聞こえていない様子だ。
クリスの頭の中では、
(ロストが休日に街にいる?しかもルルーと?いつもは休日は訓練ばかりしているはずよね?ていうことは、この人は知らない人?そうよね、ロストがここにいるはずないもの。きっと、他人の空似よ。こんなに似ている人がこの街にいるなんて奇跡ってあるのねー。)
クリスの頭の中で思考が加速する。
その二人の緊張状態を全く理解しておらず、ロストがそのまま続けた。
「クリス。突っ立ってないで、時間があるなら横にこいよ」
(こいつ…!チャラ男か!)
ルルーはそんなロストの発言を聞いて、顔を顰める。
そんな中で、クリスがようやく動き出した。
どうやら現実逃避をやめたらしい。
「ふ…ふたりとも、奇遇ね!な、、何をしているのかな?」
クリスが震える声で続ける。
「クレープをルルーと食べていた」
これはうまいなと、ロストは食べながら答える。
「違うのよクリス!ロストが休日の過ごし方がわからないからって…」
その言葉にクリスは納得をした。
「最近、訓練ばかりだったものね。ロストは」
そして、ロストの横に腰かける。
「クリス、食べるか?俺の食べかけでよければ」
そのロストの言葉に、顔を真っ赤にするクリスなのであった。




