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星に憧れて

──私は、輝けない人間だ。



子どもの頃から、要領が悪い子だね、ってお父さん、お母さんに言われ続けてきた。すぐ転ぶし、物覚えは悪いし。


唯一好きなのは歌だった。

歌を唄うと、お父さんも、お母さんも笑顔になってくれた。


でも周りは意地悪で、私が歌を唄うときは皆茶化してくる。



「智美ちゃん何その歌い方〜!ガチすぎて怖いんだけど〜!」



多分、その言葉がきっかけだったのかな。

私は、人前で歌うのが怖くなったし、色んな人と関わるのも怖くなった。人前でもうまく笑えなくなった。


そんな私が憧れたのは、お母さんがよく見てた音楽番組に出ていた、アイドルの子。


名前は忘れちゃったんだけど、星のようにキラキラ輝いてた。


堂々としてて、眩しい笑顔で。私にはないものを、全部持ってた気がした。



初めて見てから、その子に近づきたくて一人で一生懸命頑張った。苦手になった笑顔も鏡の前で練習して、歌ももっと出来るようにカラオケで練習した。


練習の成果かな、何人か友達って呼べるような子もできるようになったし、歌も音楽の授業くらいなら、無難に唄えるようになれた。


でも、それは「人前で取り繕えるようになった」だけ、だと思う。星のようにキラキラしたあの子みたいに心の底から笑って楽しめるようには、なれないと思う。



あの子みたいに輝いている人はなかなかいないけど、学校でそれっぽい子を見つけると、どうしても惹かれちゃう。


ほら、いるよね?「学年のアイドル」みたいな子。そういう子とお友達になりたくて、心臓が張り裂けそうになりながら、勇気を振り絞って私から話しかけに行くの。


最初は受け入れてくれるんだけど、皆だんだん私から離れていっちゃうんだよね。仲は良いんだけど、距離を置かれちゃうって感じ。



だから私は、ひとりぼっち。

夜空のように、真っ黒で、何もない。






「ゲネプロ終わりです!本番まで休憩お願いします!」


演出プロデューサーさんの言葉に、私はハッとなる。何でだろう、集中すると昔のことを振り返る癖があるのかな。


滴った汗を拭い、薄い海水みたいな美味しくないドリンクを飲む。

今日は私たちが所属する『Ma-Squash』の初ライブ当日。ゲネプロ──いわゆる本番前、最後の通しリハーサルが終わったところ。


正直合格通知が来たときは、夢を見ているんじゃないかと思った。両親はすごく喜んでくれたけど、あまりにも現実感がなさすぎて。



「湊音さーん、これからどうするの?もう少し確認するとことかある?」


メンバーの一人が私に聞いてくる。


「そうだね、各自で確認してくれればいいかな。私はもう少しプロデューサーと細かい所詰めてくるね」


「はいよー。さっすがリーダー、頼りにしてるよ〜」



リーダー。そんな器じゃないのに。


責任感が高じて、リーダーなんてものを務めてしまった。人を引っ張る才能なんて、私にはない。せいぜいうまく調整することだけ。星のようには、輝けない。


演出Pと細かいところを確認し、戻って自分も課題点を詰めようとしたところで、底抜けの明るい声がかけられる。



「湊音ちゃーんっ!ちょっといいかな?ここの部分なんだけど――」


「ゆ、夢愛ちゃん…ここはね、ゼロ番でターンして――」



鹿目夢愛ちゃん。太陽のような、一番星にいちばん近い人。


この人みたいにはなれないけど、この人といると星に近づいた気がして、勇気が湧いてくる。



「ありがとねーっ!今度一緒にケーキでも食べに行こうね!」


「う、うんっ!約束、だよっ」



キョドった返事しかできない私。大切にしたい人ほど、うまくいかないな…





ライブ本番が始まる。マネージャーさんが客席を見に行ってくれたけど、大体50人くらいお客さんが来てくれているらしい。初ライブでこれだけ?と思うのか、50人に見られる!って緊張するのか、私にはよく分からない。


私は、星に近づくために、私のできることをする。



ライブパートは終わった。歌は無難にこなせるようになったし、振りも大きなミスはないと思う。もう少しだけ目立ちたかったけど、太陽みたいな子がいるから、ちょっと難しいかな…



「こんばんは〜っ!小さなカラダでも夢は大きく!Your(ゆあ)アイドル、鹿目夢愛です!私の愛に、夢中になってね♪よろしくお願いしま〜っす!」



私の前の番が夢愛ちゃんだ。やっぱりキラキラ輝いていてて、それはステージ上でも、ファンの前でも一緒なんだなって、すぐ自分の番なのにそう思っちゃった。


自分のMCの番なのに、少し声を出すのが遅れちゃった。

夢愛ちゃんが少しこっちを見る。心配させちゃったかな。








──私は、輝けない人間だ。






それでも、震える手をぎゅっと握りしめ、







名もわからない誰かに届くように、祈りを込めて。







「こ、こんにちはっ、じゃなかったこんばんはっ…星の川からみんなに音を届ける、星川湊音(ほしかわみなと)ですっ!銀河の果てでもあなたを見つけるので、私の音を聞き逃さないでくださいね?宜しくお願いしますっ…」











私が、誰かにとっての、星になれていたら、いいな。

次回は瑛人クンに戻ります

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