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──カチカチカチ……。
切りの良いところで、ふと時計を見れば時間は十九時を回っていた。
「彩、そろそろ家に帰らなくて、大丈夫?」
「あら? もうこんな時間ですの?」
私は夏休み前に腱鞘炎になりそうな手を解し、シャーペンを投げ出す。彩もまた、参考書とノートを畳み、今日はこれで終わりのようだ。
「そうですわね。続きは明日にしましょう。」
彩はそう言うと、何故か彼女の夏休みの宿題を私の部屋のテーブルの端に置いた。
「持ち帰らないの?」
至極当然の疑問を私は彩に問う。
「全部、終わっていませんから、申し訳ないのだけれども、朝芽さんのお部屋に置かせて頂けませんか?」
「…………まあ、いいけど」
テーブルに置かれた彩の夏休みの宿題と彩自身を見比べながら、了承する。まあ、毎年、彩にはお世話になってるし、と。
丁度その時、
「朝芽、彩ちゃん、晩ご飯、出来たわよー!」
「あ、はーい」
「本当にすみませんわ。御相伴に与りますわ」
ママが晩ご飯が出来たことを告げた。私と彩は立ち上がると、私の部屋を出てリビングへ。
「……あら? 朝芽さん、背中、どうされましたの?」
「…………え?」
私の部屋を出て、リビングに向かう最中、彩が私の背中に何かを見付けたようだ。もしかして、虫だろうか?
私は手を背中に回して──
「違いますわ、朝芽さん。朝芽さんの背中に痣が……!」
「痣!?」
彩の指摘に私は自分の背中を見ようと、あくせくするも自分の背中は見えず。スッパリ諦めて、私はリビングへ。
「……見えないし、ま、いいか」
「あ! 朝芽さん!」
心配する彩に私は「大丈夫、大丈夫」と手を振り、そのままリビングの中へ。リビングにはママと咲夜が既にスタンバっており、私はいつもの定位置に。彩もリビングに入ると私の隣に座る。ちなみにパパは仕事で今日はまだ帰宅していない。
晩ご飯の後、念の為にとママと彩に見てもらうことに。私はどうでもいいのだが、背中を二人に見せる。
「……これ、魔法陣ではないかしら?」
「……そうね。確かに魔法陣に見えなくもないわ」
彩とママがあーでもないこーでもないと議論する中、ふと、視線を感じて後ろを振り返ると、
「あー、パパ。お帰りなさい。
ってか、なんで咲夜も見てるのよ?」
そこには帰ってきたパパと、居候の咲夜が揃ってリビングのドアを少しだけ開けて、覗いていた。私は服を着直すと、
「ところで、彩はいいの? もう、二十時よ」
時計を顎で指し示す。それに、彩は何事か逡巡してから、
「そうですわね。今日はお暇させて頂きますわ」
そう言って、彩はママとパパに「お邪魔しましたわ」と挨拶し、
「それでは、朝芽さん、また明日」
「ええ、また明日」
「咲夜さんも、居候の身なのですから、ご迷惑をかけないように。ですわ」
「あ、ああ」
そう言い残して、夜道を帰っていくのだった。




