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「……でもよ、異世界だぜ! 異世界! 一度は行ってみてーよな……」
「……確かに。ラノベ定番の異世界に“行ってみたいと夢想”することはあるが、リアルだと悩むぜ……」
咲夜と上村くんの会話で、意識を思考の海から現実に戻し、上村くんの言葉に私はさらに付け加える。
「しかも、私たちは咲夜の“オマケ”で、だもんね。異世界に着いたら、“用の無い、私たちはコレ”かも、ね」
そう言って、私は首切りのジェスチャーで戯ける。そんな、私の冗談に彩は、
「朝芽さんの仰られたこと、あながち無いとは言い切れませんわ……」
と、不安を滲ませる。
「だがよ、国から自衛隊の特殊魔法隊からオレらの道中の警護が派遣されるらしいから、大丈夫じゃね?」
対して、咲夜はお気楽にそう口にする。ホント、咲夜は、
「気楽よね」
「お気楽ですわね」
私と彩のぼやきが重なる。
「まあ、能天気が咲夜の持ち味だからな!」
「おい、色。それ、誉めてねーよな?」
「いやいや、誉めてるぜ」
上村くんの揶揄いに、咲夜はぷんすかしながら彼を追い回す。いやはや、男子はいつでも、
「元気いっぱいよねー」
「そうですわね」
元気に追いかけっこする上村くんと咲夜を眺めながら、私と彩は肩を竦めるのだった。
──翌日。
あれから、私たちは、「とりあえず、親の許可が必要だよね」となり、“交換留学の件”は各々が家へと持ち帰った。そして、今日。
「へへ、かなり渋られたが、お袋と親父を説得して了承を得たぜ!」
「オレっちも、両親が交換留学に行くことの許可をしてくれたぜ」
いつもより早めに登校すると、同じく早めに登校していた咲夜と上村くんがB組の教室に来て、交換留学の件の“両親からの許可”を得たことを報告してきた。
「それは重畳ですわ。わたくしなんて、両親から「いい経験になる。行ってきなさい」と背中を押されましたの。もしも、主賓の咲夜さんが辞退となって交換留学が取り消しとなったら、“如何しましょう?”と思ってましたわ」
彩も両親が許可──というか、積極的に勧められたみたい。さて、私だが、
「私も両親が最初は難色を示したけど、交換留学の詳細を話したら、一転して許可してくれたわ」
本当、昨晩に「異世界アラカタへの交換留学を魔法省の大臣直々に学校で打診された」って言ったら、ママもパパも一瞬だけ鬼のような形相になったのは記憶に鮮明に刻まれた。そして、交換留学の詳細を話し終えると、二人とも鬼の形相からのしかめっ面から、柔和な笑顔になり交換留学の件を許可してくれたのだ。
「よし! 全員、親からの許可は得た! んじゃ、報告に行こうぜ!」
交換留学が待ちきれないとばかりに、その場で足踏みを始める咲夜。しかし、それに待ったを掛ける人物が、
「はい、その必要はないわ。先生がちゃんと報告しておくから」
それは、いろは先生だった。私たちは先生に朝の挨拶をし、視線を先生へと向ける。
「さて、交換留学に行くと決まったなら、次は予習ね」
「「「「予習?」」」」
いろは先生から出た“予習”という言葉に私たち全員が首を傾げた。そんな、私たちをいろは先生は面白そうに見詰めたまま、
「そうよ。“異世界へ留学に行く”のだから、海外以上に受け入れ先の知識を識っておくのはマナーよ。今日の放課後から咲夜さんたちには『異世界アラカタについて識ってもらう為の特別授業』を実施します。ホームルームが終わっても、速攻で帰っちゃダメよ♪」
「「「「えええーーーっ!」」」」
またしても、私たち全員の声が揃って響いた。まさか、放課後に居残り授業があるとは……。知ってたら、私は交換留学を辞退してたのに。
私は“やれば出来る子”だが、勉強は好かない。──ああ、今日から居残り授業とか、もう、つらい……。




