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鼻を突き合わせて睨み合っていた私と桜花 咲夜の間に、彩がレフェリーストップの如く、割り込んできた。が、彼女のお陰で頭に上った血が下がり、すーはー、私は冷静さを取り戻せた。
「……あん? アンタ、誰だ?」
いまだにケンカ腰のままの桜花 咲夜は、止めに入った彩のことを値踏みするかのように睨め付ける。しかし、彩は毅然とした態度で、桜花 咲夜へ自己紹介した。
「初めまして、桜花 咲夜さん。わたくしは“此方”の桜花 朝芽さんの小学校からの友人の、田山 彩と申します。以後、お見知りおきを。」
最後に優雅な淑女の礼で自己紹介を締め括る彩。対して、桜花 咲夜は、
「……ごほっ、ごほっ、うげー、名字まで同じとか、なんの呪いだよ……? ごほっ」
彩が自己紹介の中で告げた私の名前に文句を垂れた。ムキっー! それは、こっちの台詞よ! 彩に止められた手前、心の内で、毒づく私。
まあ、それはそれとして、そもそもの場の雰囲気をカオスにした元凶──私と桜花 咲夜の見分けも付かなかった男子を、私は睨め付け、
「ところで、そちらの私とあなたの見分けも付かない、お友だちのこと、紹介してくださる?」
桜花 咲夜に問う。対して、桜花 咲夜はその男子を睥睨しながら、
「ごほっ、コイツは──」
「──オレっちは、上村 色。ヨロシクな、朝芽ちゃん──あ、いや、朝芽さん」
桜花 咲夜の詞を遮って自己紹介してきた上村くん。そして、いきなり最初から私のことを下の名前で呼ぶ図々しさ。でも、考えてみれば、彼に『桜花』さんと呼ばれても、私か桜花 咲夜のどちらに声を掛けているのか紛らわしいから、敢えて、上村くんが私を下の名前で呼ぶ事を渋々ながら黙認。
「……ええ、こちらこそはヨロシクね。上村くん。」
営業スマイルで返すも、上村くんはなにか不満があるようで、
「……あ、あのよう、オレっちの事は、気軽に『色くん』って呼んでもらえねーかな? この通り!」
両手を合わせて、そう頼み込んできた。そして、
「わかったわ、色くん」
と、耳元で囁かれた上村くんは、
「うっひょーっ♪」
有頂天に。だが、先の「わかったわ、色くん」は私ではない。マスク越しでも分かるほどに、ニヤリと嗤っている桜花 咲夜の仕業だ。うっわー、性格悪!
その後、昼休みが終わるまで、彩と私はJ組の教室に居座って、上村くんと桜花 咲夜、それと、J組の生徒達と“ドッペルゲンガー騒動”について駄弁ったのだった。
こうして、私こと──桜花 朝芽と桜花 咲夜は出会った────




