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薄明の魔法使い #0 竜骸迷宮と黒燿の剣士  作者: 式見 汀花
Ⅳ 決戦 黒燿の剣士

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第140話 小休止 #2

「なるほど。でも、無理をすれば覚えられるものではないですからね。魔法は、精神面が可否を大きく左右します。それに、エルスが攻撃魔法を必要とする時が来たのなら、その時は、きっとすぐに使いこなせるでしょう」


 励ますように、キャリスは言った。


「なにせ、すべての外法の解呪の魔法も双調魔法も、こうして数日で覚えてしまったんですからね。君は紛れもない、魔法の天才ですよ。自信を持ってください」


「……はい。ありがとうございます」


 頭を下げながら、エルスウェンは考えた。


 そんな日が来るのだろうか?


 来るとすれば……どんな目的で自分は、攻撃魔法を使うのだろうか?


 なにに向かって使うのだろうか?


 なにを壊すために使うのだろうか?


 なにを殺すために使うのだろうか?


 次々に、疑問が頭に浮かんでは消える。あまり、いい気分ではない。


 と、家のほうからドアを開ける音がした。


 シャルロッテと、シャーロット、フラウムが出てきた。


 彼女たちは、こちらへ歩いてくる。のしのし進むフラウムの後ろで、シャルロッテが足元を気にして歩いているのが、なんだか可愛らしい。


「おーい、エルス、ごはんできたぞー!」


「あ、そうなの? キャリス、行こう」


「ええ」


 ふたりで立ち上がると、フラウムに聞く。


「フラウムはなにか作ったの?」


「んーん。討伐が近いんだから魔法の力は温存しとけってラティアが言うし。ここは甘んじて温存することにしたってわけよ」


 言ってからフラウムはじっとりとした目で、何度も頷きかけてくる。


「そんな顔しなくても大丈夫だって。手料理なら討伐が終わった後にいくらでも食べさせてやるからさぁ。とびっきりのラブが詰まったヤツをね!」


「ああ……。うん、ありがとう」


 ――討伐が終わった後に死なないといいが……。


 一抹の不安が頭を過ぎるが、幸せな悲鳴というものだろう。無事に生きて帰ってこられたなら、フラウムの手料理に付き合うのも悪くはなさそうだと、思い直す。


 それから、シャルロッテ、シャーロットに訊ねてみる。


「シャルロッテとシャーロットは、料理はできる?」


「いえ、私は……寝たきりが多かったので、そういうことは全然……」


「私は、ある程度なら、お母さまや侍女、料理長から習いました」


 シャルロッテが料理ができず、シャーロットができるというのは少々意外な気もしたが。健康のことを考えると、仕方がないのかもしれない。


 と、シャルロッテが聞いてきた。


「エルスさんは、たびたびお台所のお手伝いをしていますし、お得意なんですよね」


「ああ、得意ってほどじゃないですけど」


 この数日、台所に立つ機会は多かったので、彼女は覚えていたようだ。


 気恥ずかしくなって、キャリスに話を振る。


「キャリスも料理は得意なんだよね。あと、意外かもしれませんけど、マイルズも料理が上手なんです」


「ええっ!?」


 ふたりが声を揃えて驚く。完全に同じ声でのハモりに、このふたりが双調魔法を使えば、相当に強いものが生まれるだろうと思う。


 驚いているふたりに、フラウムが言う。


「ホントホント。マジなのよ。あのゴリラさぁ、理屈っぽいし。荒々しい戦士気取ってるけど、そういう男に限ってさぁ、ちまちまと料理に凝ってたりするわけ。まさにそういうタイプ」


 かなり悪意を感じる説明だったが、エルスウェンは黙っていた。


「前なんかさぁ、店でスパイスの小瓶を手にとって舌打ちしながら色々選んでるのを見かけて。ブキミだったねー、あれは」


 やはり悪意のある説明だ。マイルズはフラウムの軽口を一切気にしないタイプだが、おそらく今頃は訓練所でくしゃみを連発しているだろう。


「すごく強そうな方でしたけど、家庭的なんですね」


「そうそう。アットホームゴリラ。ああ見えて、意外と優しいとこもあんのよ」


「なるほど……」


 シャルロッテとシャーロットは、フラウムのその申し訳程度のフォローに、興味深そうに頷いていた。


 実際マイルズの料理は相当に上手い。数少ない、エルスウェンも参加した探索の打ち上げのときに、彼が酒場のみんなに囃し立てられて厨房に立ったことがあった。


 その時に彼が振る舞った料理は、絶品だった。また機会があれば、食べてみたい。


 無事に討伐が終わった時には、頼んでみようか。彼も鬱陶しがりつつ、乗ってくれそうな気もする。


「……どうしましたか? エルスさん」


 シャルロッテに言われて、遠い目をしていたことに気づく。


 首を振って、家のほうへ促した。


「いえ。決戦が近いから……なんだか、色々と考えてしまって」


「……そうですね」


 こくりと頷くシャルロッテ。彼女は討伐隊ではないが、色々思うところがあるのだろう。シャーロットも参加するのだから。


「辛気臭いのはナシだぜー、シャルロッテ。ほらほら、メシ食べよ、メシ」


「は、はい。いきましょう、みなさん」


 シャルロッテが、フラウムに背中を押されて家のほうへと歩いていく。


 と、シャーロットがこちらに言ってきた。


「午後は、全員で未識別の解呪魔法を、双調魔法にする訓練ですよね?」


「はい。全員で息を合わせ、確実に成功するように、しっかりと詰めましょう」


 と、キャリスが答えた。


 未識別の解呪をする魔法は、魔法使い全員の双調魔法で使うことに決めていた。


 完全に、確実に解呪を成功させるためだ。


 そして現在の成功率も、ほぼ百パーセントある。母の美容アイテム争奪戦が女性陣の解呪の実力を見事に底上げしていたらしい。


 イメージの統一も上々であり、間違いなく魔法消去を貫通できる確信もある。


 王宮での壮行会は明後日。まだ一日、詰めるだけの時間もある。


 だが、完璧以上の完璧にして、その日を迎えたい。


 エルスウェンは、気を引き締めた。



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