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Dialogue Engage-ダイアローグエンゲージ-   作者: ZoRa
深緑の首【ケッツアルコアトル】
43/49

揺らめく水面、日没と共に

時を少し前に遡る。シルバが別行動をとっている間、トウキ、シン、グレイの3人は泉についてより詳しく知る為、花に魂を移したシャマノの元へと赴いていた。


シャマノ「…なるほど。泉かぁ。」


トウキ「うん。禊を行う泉…ってやつ。」


シャマノ「禊ねぇ…。そもそもあの泉はここの大切な生活資源だったんだよ。それをそんな風に悪用してたなんて…!」


シン「じゃあ龍脈が出来る前からあったことか…。」


グレイ「聞いた話だと、あそこの水は奴の許可無しでは勝手に持ち出すことを許されていないらしい。水を得る為に祈りと血を1滴捧げて、ようやく暮らしていけるギリギリの量しか与えられない…そんな支配体制を築いているらしい。」


シャマノ「…我々は水を、己の内なる部分を映すモノと捉えていた。穏やかな水面は恵を与えてくれるが、求めすぎれば枯れ、多すぎれば我々をも飲み込む禍へ…。どんな姿へも“変わる”それは人の心そのものさ。」


グレイ「…何が言いたい?」


シャマノ「もしも今の彼らがあのカオスの支配を逃れたとして、どう生きるか。縛られるものが無くなった時、今まで抑えられていた欲望の枷は外れ、歯止めが効かなくなってしまう。そんな気がしてならないんだ。」


トウキ「でもこのまま放っておくことはできないよ!」


シャマノ「自然と共に暮らすなら他の命を重んじ、感謝しなければならない。ソレを彼らは出来るだろうか…?」


グレイ「おそらく誰が管理するか…その時点で争いが起こるだろうな。」


トウキ「グレイまでそんなこと…信じなきゃ始まらないじゃないか!」


グレイ「理想と現実は違うもんだよ。今はあの変態神官が恐怖や理不尽、巨大な力で村人を押さえつけているが、ヤツを倒した後の事も考えなきゃならねぇだろ?あの龍脈を次は誰が管理し、どのように共存していくか。それを伝える存在が必要になってくるわけさ。」


トウキ「それはそうだけど…。でも…!」


グレイ「綺麗事じゃ何も解決しねぇんだよ!」


トウキ「綺麗事かもしれないけど…優しさは、この世界の何よりも…」


グレイ「履き違えるんじゃねぇ!それは優しさじゃねぇって言ってんだよ!今こうしてる間にも別の街や村でも屍異奴は出続けている!

だいたいの理由は飢えや病気、暴力や虐待、ほとんどが世の中の仕組みが原因で出てきてんだよ!お前が言う優しさ…信じればその屍異奴も出なくなるってか!?」


トウキ「それは…。今はそんなこと関係ないだろ!?」


グレイ「…本当にそう思うか?俺が父さんと一緒に修行しながら旅していた時、一握りの人間が富を独占し、他の奴らに負担を強いている所をいくつも見てきた。力が強いヤツが偉いなんて所もあるくらいだ。秩序がなければ争いは必ず起こる。勝った者が偉く、挑み負ければ処罰を受ける縦割りの構図が出来上がっちまう。もしもあの変態神官を倒して龍脈の管理者が居なくなったら次は誰が所有するかを決める争いが始まる…十中八九な。それに俺たちはここにいる人達から見りゃただの旅先でふらっと立ち寄ったヨソモノにすぎないんだよ。それに世間をひっくり返すような変える力が有るわけでも無ぇ…。それが現実だ。だったら少しでも良くなる方法を考えてやるのがお前の言う優しさってヤツじゃねぇのかよ!?」


苦虫を噛み潰したような表情でグレイは珍しく感情的になる。トウキの胸ぐらを掴み、もう片方の手が硬く握られた瞬間にシンが制止する。


シン「2人共、そのくらいにしておきな!今2人が取っ組み合ったって何も解決しないだろ!?…なぁシャマノさん、あんたが追い出されたあの体に戻る方法はないのか?」


シャマノ「無いね。本来なら人としての生はとっくに尽きている体だ。どんな方法で生きながらえているかは知らないけれど、戻ったところですぐに朽ち果てて死んでしまうだろうさ。」


シンの制止で落ち着きを取り戻したグレイは1つの案を思いついた。


グレイ「…代わりの器が有りゃ、どうにかなるか?」


そう言ってグレイは外へ飛び出していくのであった。


・

・

・


そして時は今に至る。シルバが屍異奴を倒し村人Aの家へ戻る道中、密かに後を追っていたグレイが木の影から話しかけてきた


グレイ「大丈夫…だったか」


シルバ「あら、何のことかしら?」


グレイ「…戦ったんだろ?屍異奴と…。」


シルバ「…ご名答。さすがはカラーバレッツのルーキー!それとも獅子の…野生のカンってやつ?」


グレイ「茶化さないでくれ…。なぁ…シルバ、頼まれてくれないか?」


シルバ「ん〜?どしたの、そんな改っちゃって。」


グレイ「協力して欲しい事が…ある。」


シルバ「ふぅん…なぁに?楽しめそうなこと?」


・

・

・


トウキ「ねぇシン、僕がずっと信じてきた事…ルビダおじいちゃんが言っていた『優しさはこの世界の何よりも強い』って…、間違ってたのかな?」


トウキはグレイとの言い合いを経て自分の信条に対する自信を無くしていた


シン「正直なところ、今回はグレイの勝ちって感じだったかな。」


トウキ「やっぱり…」


シン「でも優しさって色んな方法があると思うんだ。雪山で動けなくなっちゃった時におぶってくれたトウキの優しさ、男の格好をしてる今の“わたし”を受け入れ、認めてくれた優しさ…それで救われた気持ちもあるんだよ?」


トウキ「…。僕、今回の戦いはあの神官さえ倒せば全部丸く収まるって思ってた。でもグレイはその先のことも考えてて…。正直驚いた。僕は何も見えていなかったんだなって思い知らされたよ…。どうやったらあんな風になれるんだろう…。」


シン「トウキはトウキ…だよ」


シンは優しく頭を撫でながら雪山でトウキが言った言葉を返した。


シン「別に無理して誰かにならなくていいんだよ。トウキはトウキらしく、トウキなりの優しさを持ってい続ければいいと思うよ。…そ、それにさ、足りない所を補っていくのが…な、仲間ってもんだろ?な?…な!」


途中から恥ずかしくなったのか口調が急にいつもの男勝りなものに戻り、ニシシと微笑みながらトウキの肩を叩く。

温かい気持ちで包まれたトウキの目は微かに涙で潤んでいた。


話し合いを済ませたシルバとグレイは村人達を呼び集め、花に魂を移したシャマノと話をしている2人と合流する。


シン「…というわけで我々がアイツを倒してみせます。ですからその間、みなさんはここで引き続きヤツの監視を逃れるためにここに避難していて欲しいんです。」


村人D「…勝てるのか?アンタらにそんなことできるとは思えないけど…」


シン「我々は中立都市である星都の使者として各地を回ってきているんです。戦いの経験はそれなりに積んでいます。どうかお任せいただけないでしょうか!?」


シンは星証を見せると周囲はざわつき始める


グレイ「(…さて割れたぞ。任せるべきか任せず現状維持を求めるべきか…にしてもアイツ(シン)の持ってる星証ってのはすげぇな。アレを見せただけでヤツを見る周囲の目が変わりやがった…。)」


トウキ「今、この中で次の刻印が浮かんでいる方がいるかと思いますが、安心してください。今度こそ…僕たちが守ってみせます。」


村人B「大丈夫なのかよ…」


村人D「でも中立国家って言ったらあの東の大陸にあるあの星都だぞ?」


村人C「…いい加減にしておくれ!集められて何かと思えば…ヨソモノがとやかく言って解決出来る簡単な問題じゃないんだよ!…とりあえず今晩は食事摂ってもう休みな!夜が明けたらこの村を出て行っておくれ!」


周囲のざわつきは村人Cの声で一蹴される。ヨソモノと言われ、返す言葉を失ったトウキは下を向きつつ、出された食事を黙って口にする。

その後一行は急激な眠気に襲われ、村人Cら複数の村人達に連れられ寝床についた。

トウキだけを別の部屋に移されながら…


深い眠りにつく中、トウキは夢を見ていた。目の前には大きな黒い翼の生えた巨大な蛇の姿をした存在がじっとこちらを見つめていた


龍「何故一度にならず二度も此処へ来たのですか?ワタシと異なる刻印の片割れを持つ者よ。」


トウキ「…?これは夢…なのか?」


龍「夢であり現。泉の中へ飛び込んできたキミを…私の内なる世界に招待したのです。」


トウキ「泉…?僕は村に居るはずじゃ…?」


龍「否。村の者達に連れられ、今は禊と称された行いの最中ですよ。」


トウキ「何だって?!…早く戻って戦う準備をしなきゃ…」


しかしトウキの体はまるで石のように固まり動かない。


龍「さしづめキミの持つ刻印を勘違いしている村の者に利用されたようですね?…それに様子では薬を盛られていますね。」


トウキ「…薬?!何だってそんな物を…。グレイとシルバが村の人を呼んでくれた時に持ってきたあの食事にか…?いくらなんでも手が込みすぎている…」


龍「今までにも何人か、同じような者達を見てきましたから間違いないでしょう。ですが不思議だ。私が此処へ呼んだ者の大半は死にたくないと泣き崩れ絶望する者達がほとんどだというのに…。」


トウキ「(イケニエに選ばれて嫌がる人を無理矢理連れていく為の方法だったのか…。確かに食事や飲み物に混ぜれば動けなくなるわけだし、手慣れているわけだ。)僕はあの村の住人ではないから…何が何やら分からない状況で…。それよりも、どうしたらここから出られるんだ?!」


龍「そんなことよりまずは落ち着きなさい。そしてこの私、ケッツアルコアトルの話を聞きなさい。ついでに名前は長いから私のことはケッツアルとでも呼びなさい。そしたらここから開放してあげましょう…。」


考えてもどうすることもできないと理解し、観念したトウキは、何故か嬉しそうに勝手に話し続けるケッツアルの話を聞くことにした。


ケッツアル「にしてもキミは何処から来たのですか?何て名前なのですか?何故ここに来たのですか?」


トウキ「ちょ…!質問が多いよ…。えぇっと…僕はトウキ。各地に在る龍脈について仲間と調べる旅をしてる最中でここに辿り着いたんだ。」


ケッツアル「…で、何処から来たのですか?」


トウキ「雪山の麓の村…って言っても分からないか。とにかく海を舟で渡ってきたよ。」


ケッツアル「…ほぅ…。なるほど。どうりで。同じニオイがするワケですね。」


トウキ「同じニオイ…?やっぱりキミがこの地に在る龍脈の意思…オロチの斬られた首の1つなんだね?」


ケッツアル「答える必要がない問いですね。ニンゲンの分際でこの私に質問するなど厚かましい。」


トウキ「よく言うよ…自分だって質問しまくってきたクセに」


ケッツアル「私は良いのです。私は悠久の時を生きる存在…故に私は偉いのですから!」


トウキ「なーんか丁寧なのかワガママなのかよく分かんないなぁ…(レヴィ以外の首ってみんなこんなかんじなのかな…)」


セイリュウ「無様に斬り落とされ、自由に動くこともままならない今の状況を果たして生きてるって言えるのかな〜?」


間を割くように突然セイリュウがトウキの体に乗り移り話しかける。それまでピクリとも動かなかったトウキの体はセイリュウの影響もあってか次第に動けるようになっていく。


ケッツアル「急に眼の色と気配が変わりましたね。キミは…?いや、こう聞くのはよそよそしいですね。…久しぶりとでも言っておきましょうか。私の片割れさん。」


セイリュウ「そんな冗談も言えるなんて大したもんだ〜。で?誰が誰の片割れだって〜?」


珍しく殺意をむき出しにするセイリュウ。


ケッツアル「はぁ…こんなことも理解できないとは逆に感心しますよ…その鈍さ、見習いたいくらいですね。」


セイリュウ「随分と口が軽いみたいだ。一度薄切りにして重さを測ってみようかねぇ〜」


トウキ「ちょっ…2人とも落ち着いてって!」


左目の色が元に戻ると共にトウキの意識も入り混じる


ケッツアル「気配が半分戻った…?キミ達、今とっても不思議な状態ですね。まるで別の器に入った水と油のようだ…。創られし者よ、その体、本当にキミのモノなのですか…?」


トウキ「僕の体だ!僕のものに決まっているだろ!それに何だ!?創られた者って!!」


ケッツアル「…不可思議ですね。1つ(ヒト)の体に他の存在が介入できるなんて…。実に興味深い現象です。それに…まだいますよね?私の片割れ。」


ケッツアルはトウキの問いかけを無視して問いかけた


セイリュウ「!?どういうこと〜?」


トウキ「それは…。」


セイリュウは今まで遠くにあったケッツアルの存在を探ることに固執していたが故にレヴィの存在を失念していた。


トウキは咄嗟にレヴィの入り込んだ星証を握りしめる。体の半分を使用しているセイリュウはその握られた物の中に潜んでいるレヴィの存在をようやく認知した


セイリュウ「まさかこんな近くに居たなんて…!」


ケッツアル「明かりが灯る燭台の下は暗いということですね。そういうことですので観念してそろそろ出てきては?」


しかしレヴィは反応しない。どうやら無視しているようだ。


ケッツアル「…無視、ですか!この私の言葉に耳を傾けないとは実に傲慢…!」


黒く染まっている翼の羽根が1枚、星証目掛けて飛んでいく。不意の出来事に対応できず、握られた手ごと星証を貫かれてしまう


トウキ「う…!…?痛みがない。それに血も出ない…」


ケッツアル「ここは私の用意した世界。私が呼ぶ者しか介入できない空間です。精神だけが導かれている状態なのでここにいる限りは痛みはありませんよ。そんなことよりも…さあ、引きこもりで根暗な私の片割れよ、次は粉々に砕きますよ?」


レヴィ「迷惑…うるさい…傲慢はそっち…言いたい放題喋りすぎ」


居場所としていた星証を傷つけられたレヴィは気だるそうに反応しようやく姿を現した。

その姿を見たケッツアルは見惚れ、返す言葉を飲み込んでしまう


ケッツアル「っ…!?お、お黙りなさい!少し身なりが美しいからって…いいい、言ってもいいことと悪いことがありますよ!!」


セイリュウ「タジタジだな〜」


トウキ「だね…さっきまでと全然違うや。」


そんな様子を眺めていたトウキはある1つの提案をする


トウキ「ケッツアル、君も僕たちと一緒に旅に行かないかい?」


ケッツアル「な…!?この私が下等なニンゲンと共に行動しろと?!」


トウキ「レヴィもいるよ」


ケッツアル「う…!動けたら…すぐにでも行きたい…動けたら…」


セイリュウ「(わかりやすいなぁ…)」


レヴィ「だけど今のままじゃ自由には動けない…。龍脈として存在してる以上…」


ケッツアル「それだけではないのです…。私の体…龍脈が存在しているあの場所で力を独占し、悪用している輩がいるのです…。あのままあそこに居たら私はどうにかなってしまいそうだったので、この泉に逃げ伏せたのです…」


トウキ「シャマノさんの体を使っているヤツの仕業だ…。ケッツアル、僕は仲間たちとアイツを倒そうとしてるんだ。だからお願いだ!ここから出る方法を教えてくれ!」


ケッツアルはトウキの質問に答えようとはしない。先程同様下等な存在と見下しているニンゲンからの問いかけは無視する傲慢さを見せ続けていた。


レヴィ「…お願い、出して?」


しかしレヴィが嘆願すると


ケッツアル「し…仕方ない。もとよりここへ呼び寄せたのも外の状況を把握したかっただけですし…いいでしょう。」


セイリュウ「(やっぱり、わかりやすいなぁ…)」


ケッツアルは自身が作り出した心象空間からトウキ達を解放する出口を作る


ケッツアル「警告しておきますが、ヤツは今、私の力を自由に使うことが出来ます。まぁ、オロチとして存在していた私の足元にも及びませんが、自生する周辺の自然バランスを変えるほどの力です。やるなら徹底的になさい。でなければ死にますよ?」


トウキ「ありがとう!でも僕の体、妙に丈夫だし、それに一度、龍脈を使う存在と戦ったこともあるから!今回はレヴィも加わってるし、必ず勝つよ!」


レヴィは亀裂の入った星証へ、セイリュウはトウキの刻印の中へと戻りつつ出口となった裂け目へ向かって走っていく。


ケッツアル「…実に傲慢。それに私の力(龍脈)を他の首と同等に扱うとは許し難い…他の首とは違う、私は…私、ケッツアルコアトルだというのに…。」


禊…ケッツアルとの対話を経たトウキ。長い会話も現実ではほんの一瞬の出来事にすぎない。意識を取り戻した彼は、ようやく自分の置かれていた状況を理解することになる。

盛られた薬の影響で身動きが取れない上に四肢を縛られ、口には猿轡、目隠しをされた姿でシャマノの体を乗っ取っている神官=カオスの元へと運ばれて始めているのであった…。

お読み頂きありがとうございました。


もしも

・面白い

・続きが気になる

・なんじゃこりゃあ!

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皆さんに見て頂けること自体が嬉しいことですし、これからも貴重なお時間を共に過ごせるよう頑張って書いていければと思いますので応援よろしくお願いします_(:3 」∠)_

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