スリルと興醒め…シルバの憂鬱
シンとトウキが泉へ探索に行っている際、久々の再会を喜ぶシルバの過度なスキンシップにグレイは抵抗し続けていた
グレイ「ちょ…シルバ!もういい加減にしてくれ!」
シルバ「もうちょっと!もうちょっとだけ!ね!いいでしょー!?」
グレイ「十分!もう十分だ!」
シルバ「だめ!次いつ会えるかも分からないし、2人が帰って来るまでの間、もうちょっと…ね?」
甘えた猫のような下目遣いでグレイに迫るシルバ。その姿を村人達の前で堂々と見せつける事に何の恥じらいもないようだ
グレイ「(うう…村の人達の視線が痛い…!)」
グレイにとっては刺激的なこのスキンシップはどうにも好きになれない。
部屋を貸してくれている村人Aの家の中へ逃げ込むも、その中でも追いかけっこは続いていた。
アマランスがいない事でリミッターの外れた暴走状態のシルバは誰にも止められないかに思えた…
が、
トウキ「ただいま戻りました〜。」
トウキとシンが帰って来た
グレイ「トウキィ…シン…!!!ううう…助かった…!助けてくれええええ!」
トウキ「え、ちょ?!何!?助かったの?助けて欲しいの?…どっち!?」
トウキの背に隠れ、シルバから逃れる事に成功したグレイ。トウキはワケも分からないままシルバと向き合うこととなる。
シルバ「…ねぇ入水自殺くん、ちょっとそこ、退いてもらえる?」
トウキ「何があったか分からないですけど…嫌です!」
シルバ「はぁ…。本ッ当に君はタイミング悪く出てくるよね…。はぁ…興醒めしちゃったっ。外の空気でも吸いにいこっと。」
そう言ってシルバは部屋の外へと出て行ってしまう。
トウキ「…大丈夫?」
グレイ「…あ、ああ。助かった。すまなかった。情けない姿を見せてしまって…。」
トウキ「グレイってさ…最初会った時と比べると雰囲気だいぶ柔らかくなったよね。」
グレイ「そ、そうか?俺は別にそんなつもりは…」
シン「最初のツンケンした印象より、いい感じだよ?たまに出るその…厳しい感じって何なの?」
グレイ「何のことだ?」
シン「自覚なし…だね。」
グレイ「だから何が!」
そんなやり取りを密かに外で聞いていたシルバは安心した表情を見せていた
シルバ「…もともと弱虫で、死んだ父親に少しでも近づきたいって思いからあの人の真似をして強がってたみたいだけど、理解してくれてる仲間の前じゃ素に戻っちゃうみたいね…ふふ!やっぱり可愛いっ。」
村人「…シルバさん!ちょっといいですか?!」
別の男が部屋の外にいたシルバに助けを求める
シルバ「どうしたの?」
男「し、屍異奴が出たんです!馬小屋に…屍異奴が…!」
シルバ「そう…。それは大変だわ!みんなも連れて…」
男「いえ、あまり事を大きくしたくないのでひとまずシルバさんだけで…」
シルバ「さっきの大量発生した件もあるから騒ぎ立てたくないわけね!仕方ない!行きましょう!」
男はニヤリと口元を歪めながらシルバを馬小屋まで案内する。
馬小屋の扉を開け、シルバを先に中へ連れ込む。
シルバ「…んー?ねぇ、屍異奴なんてどこにも…!?」
背後から押し倒されるシルバ。藁の上に倒れたシルバの腕を男は慣れた手つきで縛り、歪んだ顔を近づけた
男「ったくイチャイチャイチャイチャ見せつけやがって…俺が代わりに相手してやるよ…」
シルバ「嫌!やめて…!」
男「大丈夫。優しくしてやっから。抵抗するんじゃねぇぞ。」
シルバの首元にナイフを突きつけながら、男はシルバの髪を執拗に触れつつ匂いを嗅ぐ
男「こんなクソみたいな村でこんな美しい銀髪を持った美女にありつけるとは…俺も運がいい…ああ…これもあの神官様のおっしゃった通りだぁ…」
シルバ「っ…どういうこと!?」
シルバに跨り、息を荒げながら感謝の意を伝える男。異常な姿に驚く様子を見せつつシルバは問いかけた。
男「知りたいか…教えてやるよ。イケニエとは別で俺は神官様に村の娘を捧げてたんだよ。村の奴らは神隠しだって都合よく諦めるし俺は愉しめるしいいことだらけだぜ…。外から来たアンタなら誰も疑いやしないし、仲間達にも神隠しに遭ったって言っておいてやるよ…。もちろん“つまみ食いした後”でだけどなぁ!!」
シルバ「そんな…嫌よ!…嫌ああ!」
男「とか言いつつホントは悦んでるんだろ?…みんなそうさ。最初こそは抵抗するけど、最後には諦めて抵抗しなくなる…神官様より賜ったこのクスリの香を嗅いだらなぁ!」
シルバ「何…!?嫌!そんなの嗅ぎたくない!」
媚薬の香が馬小屋全体に広がっていく。男の興奮も最高潮に達したのかナイフを置き、衣類を脱ぎ始める
男「ハァ…ハァ…いい加減その格好も暑いだろう?…今涼しい格好にしてやるからな…」
シルバの胸元のボタンを外そうとした瞬間、
シルバ「…はぁ…。もう飽きたわ」
男「ぐあぁ!?」
シルバは足で男の首を挟み、馬小屋の扉ごと外へと投げ飛ばす。土埃が舞う中、手を縛れたままのシルバは男の元へ行くと急所を勢いよく踏みつける
男「んぐぅあぁぁ!?」
シルバ「連れ込む途中まではなかなか良かったんだけどね…。そもそも屍異奴は馬から発生なんてしないわよ。それにしても、よりにもよってこんな汚い馬小屋ぁ?はぁ…ロマンスのカケラもあったもんじゃないわ…」
男「ぅン…な、何故だぁ…!?この香でまともに動けないはずなのに…んぐあぁ!?」
男は再び急所を踏みつけられ地を転げ回る
シルバ「生憎と私、いつも近くに毒使う子がいるせいか、人一倍毒への耐性が強くなっているのよね。それにこういうコト、昔はよくされてきたからその耐性もね…。
だいたい隙を見せすぎなのよ。脅迫しながらやるならもっと…徹底的になさい!」
そう言ったシルバは何度も男の急所を踏みつける。男は声にならない叫びをあげながらやがて泡を拭き失神する。
シルバ「味気ない…。これじゃあこの間狩った豚の屍異奴と変わりないわね…。」
シルバがその場を去ろうとした瞬間、男の持っていたナイフに媚薬の香が吸われていくのを目にした。
シルバ「ふ〜ん。…次は私を愉しませてくれるわけね。」
香を吸い尽くしたナイフは失神した男の元へ飛んでいくと一体化し、化け物の姿へと変貌し始める
シルバ「ん〜?2種類の屍異奴が合わさってる…?あの男自身の影から出て来たドロニンギョウとあのナイフを浸食していたパラサイト…これは厄介…かもねぇ…」
冷静に状況を分析するシルバ。しかし手の拘束は依然解こうとする様子はない。
シルバ「久々にアレ…使ってみようかしら…ゴーちゃん!」
以前、黒鍵の刺さったオークを屠ったゴーちゃんを自身の影から呼び出した。
シルバ「ゴーちゃん、今ね私、手を縛られてるの。懐かしいよね。最初に会った時みたいでしょ?でね、せっかくだから今回はこのまま戦ってみようと思うの!どう?すっごく刺激的でしょ!?」
ゴーちゃんはシルバの意思を聞き留めたのかドス黒く液状化した自身の一部でシルバの足を包み込んでいく。
シルバ「汚らしい長靴!」
それは銀髪の美女が履くには相応しく無い真っ黒に染まったブーツの形をしていた。しかしシルバはそのブーツを見て懐かしんでいるように見える
シルバ「さすがゴーちゃん!デザインもあの時とおんなじ長靴だね…。親に捨てられ、行き場を失った私が生きて行くために初めて拾った長靴…。そして男に初めて犯された時に脱ぎ捨てられたあの時の…!!ああああッ!死ね!死ねェェェ!」
急に感情のスイッチが入ったのか体を構築している最中だった屍異奴に向かって飛び蹴りを放つ。しかし衝撃はシルバの足に纏ったブーツもろとも屍異奴の体へと吸収されていこうとしていた。
屍異奴[ドロニンギョウタイプ]には同質の存在を取り込む性質がある。ゴーちゃんの体の一部を使って構築されている汚らしい長靴が吸収されていることから言えることはただ1つ…
シルバ「違う!ゴーちゃんは…お前達と同じ屍異奴なんかじゃ…ない!!」
泥沼と化している屍異奴の中から足を引き抜こうとしても、なかなか思うように抜け出せない。足掻くシルバは必死になりつつも懐かしむような表情を浮かべていた。
シルバ「ああ…私…今、ちゃんと生きてるんだなぁ…。ゴーちゃん、すごいでしょ?私、ここから抜け出そうと必死で踠いてるよ。なんだか今日は思い出すコトがたくさんあって本当にシケた日…ね!」
そう言い切ったシルバは次の瞬間、屍異奴の中から一瞬で抜け出した。
自身の持つ土属性のマナで足場を屍異奴の体内に生成、その足にも土属性のマナをコーティングし、吸収されないようにしたのだ。
シルバ「泥で汚れた長靴!」
そして盛り上がった厚底のヒールで地面を2度鳴らすと、周囲の土を巻き込みながらゴーちゃんの5体の分身が生成された
シルバ「土人形の行進!」
シルバの号令と共に、ゴーちゃんは姿を変えつつある屍異奴へ一斉に突撃していく。ナイフを持った不恰好な人型へ姿が定まっていく屍異奴はインティミデーターとなり、シルバ目掛けてナイフに変化した左腕を振り回しながら迫る。
インティミデーター「ヌゥン!フゥ!」
口から吐く香を受け、動きの鈍ったゴーちゃんの分身を次々と振り解き、ナイフで斬り裂いて破壊する、ついにシルバの目の前に立ったインティミデーターは不適な笑みを浮かべながらにじり寄る。
シルバ「懲りのない男…。屍異奴に変わっても相変わらず…。下衆丸出し!」
罵るシルバだが、自身の手の拘束を解こうとしない。未だにこの状況を楽しんでいるようだ。そして自身が纏う泥で汚れた長靴で大地を踏み込み一気にインティミデーターの眼前に飛び込んでいく。
インティミデーターは巨大化したナイフを振りかぶるも、既に刃の届く距離にシルバの姿は見えなかった。そして気がつく頃にはシルバの蹴りを顔面に受け地面に倒れていた。
その凄まじい一撃で鼻を折られたインティミデーターは地面を転がりながら悶絶する
シルバ「はぁ…。屍異奴になってもこのザマ?痛覚もあるなんて随分立派ね。でも結局ワンパン…いや、ワンキックかぁ…。つまんなッ!」
左腕の付け根を思いっきり踏みつけ、関節を折るシルバ。その顔に先程までの笑顔は無い。そしてため息を吐きながらようやく手の拘束を解き、銃を構えた
シルバ「カラーバレッツの1人である以上この武器は使ってるけど、戦いがすぐ終わっちゃうから気が滅入っちゃうのよね…。でも黒光りしてるフォルムとか艶とか凄く綺麗なのよねぇ…“あの人の持ってた”銃と対になってるグレイのアレも…早く欲しいなぁ…。まぁアナタには関係ないでしょうけどね…バイバイ。」
周囲に1発の銃声が木霊する。眉間を撃ち抜かれたインティミデーターは、跡形もなく消え去っていくのであった。
シルバ「…さぁってと!…かーえろっと!」
屍異奴と化した男が消え去る姿を見届けぬまま武装を解き、スキップでグレイ達の居る村人Aの家へと帰って行くのであった。
カラーバレッツ結成時から一角を担うシルバ。彼女は色々と何かを隠しているようだ。
そして彼女と行動を共にする屍異奴…ゴーレムのゴーちゃん。彼女の放った言葉の真意とグレイ、そして今は亡き父クリムゾン…この関係は近い将来カラーバレッツに暗雲を招くことになるのだが、それはまた別のお話…。
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