小さきモノの復讐
トウキが目を覚まし、セイリュウの感じ取った首の気配をシンに伝えた。初めて首の気配を感じ取った泉へと向かい身を投じてみるものの、その気配を再び感じることが出来ずにいた。
トウキ「…どうだいセイリュウ、何か感じるかい?」
セイリュウ「なぁんにも感じやしないなぁ…。おかしい。あれだけ色濃く感じた気配がこんな急にパッタリ途切れるはずがないのに…。」
一方シンはその時に現れた屍異奴について調べていた。
シン「あの時、急に湧いて出た屍異奴の形跡も残っていないかとは思ったが…まさか…まさかな。」
こちらは何か進展があったようだ。びしょ濡れになっているトウキを呼びつけた
シン「そっちはどうだった?」
トウキ「セイリュウにも聞いてみたけどダメだったよ。不思議なくらいにパッタリと気配が消え去ってるみたいで…そっちは?屍異奴がいっぱい出てきた理由はわかった?」
シン「ああ。…あまりいい知らせじゃないんだけどな…」
シンが指さした方向を見ると、微かだが草の色が一部だけ変わっていた。
シン「まるで何かが照射されたみたいな跡がある。範囲から見てもモノはそんなに大きいわけではないようだけど…。」
トウキ「こんな小さいのが証拠…?」
シン「小さいからこそ…さ。見失うほどね。ゴーストと戦っていた時からずっと感じてた刺すようなこの気配…。それが犯人さ…そこだッ!」
咄嗟に石の剣へ雷属性のマナを纏わせ、居合技のように抜刀する。振り下ろしながら放たれた雷刃斬はトウキの背後に飛んでいく。
シン「“見失ってた”んだよ俺たちは。一度…星都へ向かう道の途中で1匹だけ…!なぁ、そうだろ?!」
斬撃の向かった先には、魔導針に寄生した屍異奴…ガイドが隠れていた。
シンの攻撃を予知していたかのように躱し、彼らの前に堂々と姿を現すのであった。
シン「よォ…ずいぶんちっこくなったじゃんかよ…!一体どこから湧いて出やがった!?」
ガイド「ズット近クニ居タ…オ前達を斃ス為ニ!チカラヲ蓄エ、限界ヲ越エタ!!」
トウキ「限界突破?!屍異奴が!?」
シン「聞いたことないぞ!そんなこと!」
ガイド「時ニ集リ、時ニ侵蝕。ヒトツニナリ、強クナル…。コレコソ オ前達ノ云ウ屍異奴ノ本質…。」
シン「バケモンが…依代が無ければまともに動けもしないくせに!」
ガイド「ソノ依代ヲ得テイル今、今度コソ貴様ラヲ死ニ場所へ誘ウ…。ソレコソガ俺ノ新シイ名前…“ガイド”ダ!」
ガイドが声を荒げると、彼を構成している魔導針の留め具から眼球が露わになる。
ガイド「モウ1ツ…イイコトヲ教エテヤロウ…。一度ハ、オ前達ニヤラレタガ俺ハ前ノ姿デ得タ能力ヲ失ッテイナイ…。ソレハ…蓄エ、放ツ能力…!」
露わになった眼球から紫色の怪しげな光が照射されるとその中から無数のゴーストが飛び出してくる。
トウキ「さっき倒した屍異奴と同じゴーストタイプ!」
ガイド「サッキ、ソノ辺デウロツイテイタ集団ダ。セイゼイ取リ込マレナイヨウ気ヲツケルンダナァ!」
シン「くそ!あの野郎!言いたい放題言いって…!」
トウキ「…シン、下がってて。今度は僕がやる。」
シン「大丈夫なのか?ずっと剣と対話できてなかったんだろ?」
トウキ「大丈夫…だと思う。セイリュウもきっと…」
トウキは斬鮫を構え刃に水属性のマナを纏わせる。そして地面を抉るように斬り上げながら斬撃を放った。
ガイド「知ッテイルゾ!離レタ敵ニ放ツソノ技…水刃斬!ダガ、ソレデハ倒セナイ!俺ハ知識ヲモ蓄エル!コノゴースト達ニ知識ヲ与エルコトモ出来ルノダ!」
ゴースト達は腕を突き出して水刃斬を受け止めてしまう。
シン「なんだって?!なんてやつだ…!」
トウキ「くっ…」
ガイド「マルデ最初ノ戦イカラ成長シテナイナ!マタアノ時ノヨウニ後ロニ控エテイル…シンガ帯流電デ助太刀デモスルカァ?!」
シン「トウキ下がれ!やはりここは俺が…」
トウキ「大丈夫。ゴースト達を見てみて。」
ガイド「強ガリヲ!現ニオ前ノ技ハ見切ッテ受ケ止メ…テ?!」
なんと水刃斬を受け止めたゴースト達は腕から凍りつき始めていた。
トウキの水属性のマナを斬鮫との対話によって調整、そして先程の盟約に則り、セイリュウのマナを活用したその力は水属性の『変質』により水から氷へと変化したのだ。
トウキ「君が僕たちの何を見てきたか知らないけど、色々な人と関わったことで僕は多くのことを学んだよ。ウラヌス先生からマナの使い方を、フィリアとガルガさんからは戦う為の覚悟を、そしてグレイの限界突破を見て知った繋がりの強さ…!全てはシンとこれからも旅を続けるために。」
シンの目を見つめにっこりと微笑む。
シン「トウキ…!」
シンも心なしか頬が赤くなったように見える
ガイド「戯言ヲ…。行ケェ!取リ憑ケェ!ソシテ奴ラヲ…」
トウキ「もう手遅れだよ。」
屍異奴の腕から氷が身を蝕んでいく。そんな状況にも関わらずガイドはなお攻撃命令を送り続ける
ガイド「動ケ。進メ。眼前ノ敵に向カイ歩ミ続ケロ!」
凍り続けるゴースト達は崩れる体を顧みずトウキ達の元へ進み続ける。トウキとシンは武器を握りながらも思わず後ずさりする。
シン「屍異奴同士がこんな連携するなんて…」
ガイド「コイツラハ俺ノ蓄エタ所有物。俺ノ意思ノ欠片ヲ分ケ与エタ分身ダ…!ソシテ俺ハ最早タダノ屍異奴デハナイ。自我ヲ持ッタ個。モウ不安定デナイ確カナル存在ナノダ!サァ、行ケ…俺ノ所有物…ゴースト達ヨ!」
トウキ「…止まらない。」
ガイド「ソウ!俺ノ屍異奴達ハ…」
トウキ「違う!止まらないのは…僕の…ここから溢れてくる思い…力だ!!」
胸を押さえ力強く声をあげるとゴースト達の全身は一気に凍りつき、瞬く間に沈黙していった。
ガイド「ナ…?!動ケ!動ケ!」
トウキ「僕たちが持っているのは力…それだけじゃない。これからも旅をしたい、色々な世界を見てみたい、もっと“僕自身”を知りたい…そんな僕の中から溢れてくるこの思いが力をくれる…!だけどこれは僕だけの所有物じゃない。斬鮫、そしてセイリュウ。旅を通して対話した仲間達から貰った力なんだ!」
ガイド「ナンナンダ…?!オ前ハ何ヲ言ッテイル?!」
トウキ「君には理解出来ないさ。」
トウキの瞳の色がセイリュウの眼と同じ黄色へ染まる。そして放たれた巨大な水刃斬はガイドに向かって一直線に飛んでいく。
ガイド「クソ…クソオオオオ!」
巨大な爆音と共に土煙が舞う。しかし土煙が明けた後、そこにガイドの残骸は見当たらなかった。
トウキ「…逃げたか」
シン「そうみたい…。見て…アイツ、まだ気が蓄えがあったみたい。それを盾にしてその隙に…」
水刃斬で氷漬けになった別の屍異奴の姿がその予想を物語る
トウキ「一筋縄ではいかない…ね…。」
瞳の色が元の青色に戻ったトウキ。穏やかな口調に戻りシンの元へと駆け寄る
シン「それにしてもさっきのは一体なんだったの?最後の一撃なんてマナがものすごい勢いで膨張してたよ?」
トウキ「え?そうかな…?僕、最後何かやってた?」
シン「(覚えていない…?それとも自覚がないのか?…最後だけ雰囲気がいつものトウキとは違った気がするけど…大丈夫だよね…トウキ。)」
以前見た悪夢を思い出すシン。一抹の不安が過ぎるも、普段の雰囲気に戻ったトウキを見て表情が和らぐのであった。
シン「…さっきの屍異奴が大量発生した理由は掴めたし、ひとまずグレイ達と合流しよう。」
トウキ「そうだね。僕もあの泉についても村の人たちから話を聞いてみたいし…行こう。」
2人は村へと戻ることとした。そんな中、剣に内在しているセイリュウと斬鮫は言葉を交わしていた
斬鮫「おいお前、最後のアレ…どういうつもりだ?」
セイリュウ「ん〜?特に理由なんて無いよ〜。気がついたら“外”に出てた…そんな感じだね〜。それに盟約を交わしたとはいえ、僕は君たちの下僕になったワケじゃないしね。」
斬鮫「…。なァ、持ち主に乗り移ることってそんな簡単にできるモンなのか?」
セイリュウ「ん〜結構簡単だったよ?彼が力を求めている時なんかは特にね。僕達を繋ぐ刻印を通して介入することができるみたいだし…。あ、やっぱり興味ある?」
斬鮫「バカ言うんじゃねぇよ!俺はただ…」
最後の一撃の際、セイリュウがトウキの体に乗り移った事を責め立てる斬鮫であったが、もしも自分にも出来るのであれば…という思いが過るのであった。
斬鮫「盟約とか何だかよく分からねぇがよ、アイツを死に急がせることは許さねぇぞ」
セイリュウ「分かってるよ〜。君たちのお話を聞きたいのは今も変わりないしね…。でも、もしも彼がまた自分を死に追い込もうとした時はどうすればいいんだい?」
斬鮫「そ、それは…ってかアレいったい何なんだ?!ニンゲンがツノを生やすなんて聞いたことないぞ?!」
セイリュウ「オロチとして存在していた僕は、首を斬られてからずっとあの場所に居たんだよ?僕に分かるもんか。」
斬鮫「それもそうだが…。アイツの血も今まで食った血とは少し違うし、アイツって一体…。」
セイリュウ「旅を続けていればそのうち分かってくるんじゃないかなぁ〜?本人も自分自身を知りたいって思ってるみたいだし。」
斬鮫「それもそうだが…あの姿になったアイツ、本当にアイツじゃ無くなっちゃうみたいで、対話も一切出来なくなるから正直怖いぜ…」
セイリュウ「あ、そういえば僕の怠惰の氷で彼の顔を面として覆った時は大丈夫だったよね。」
斬鮫「島でやってたアレか…!」
セイリュウ「どうだろう?コレは純粋な提案だが、不用意に表に出ない代わりに、あの姿になるときは僕の意識が出ることを容認してくれないかなぁ?その方が都合がいいし、何よりもマナのバランスが取りやすくなるし〜」
斬鮫「龍脈っていうバカでかい力をアイツ自身の中にぶち込むつもりか?!んなことしたらキャパ越えて破裂しちまうぞ!?俺が間に入って調節する。…それでどうだ?!」
セイリュウ「そうだね〜。さっきも結構上手くいってたしね。それでいこうか。」
斬鮫「…ああ。(まさかこんな事で俺が役に立てるなんてな…。今まで感じてた空腹感、ずっと苛まれてきた飢餓感、血肉を貪り食い尽くしたいという欲望が、コイツの持つ大量のマナで抑えられている…。今さらだが礼のひとつでも今度言っておくか。)」
村に着くまでの間、シンと言葉を交わすトウキが知らぬ間に、剣の中で行われた作戦会議は一度幕を下ろすのであった…。
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