真の名と過去
グレイ「トウキ!急にどうした!?」
トウキ「いや、な…なんでもない。」
シン「さっきのは一体…」
オロチの記憶と思わしきビジョンを垣間見てたシンとトウキ。今現在シンが携えている石の剣がオロチの首を斬り落としていたモノだという事実を知ったシンは改めて自身の持つ剣を見つめる
シン「…みんな、」
そう呟くとその場を後にしていく。トウキはそんなシンを追いかけていく。
グレイはそんな2人を引き止めようとするが、走り去る2人に聞き入れる様子は無かった
グレイ「あ!お前ら…!ったくぼーっとしたと思ったら走り出して一体何だってんだ?!…と、とにかくあの変態神官が何かしでかす前に早く対策を考えないと…頼む。シルバ、あんたも協力してくれ…」
シルバ「あら…グレイが直々にお願いしてくれるなんて珍しいわね〜!ちょっと感動しちゃったっ」
グレイ「お願いっていうか…今回のヤツ、少し嫌な予感がしているんだ。父さんを殺ったヤツに少し雰囲気が似ている気がして…。何よりも戦力が欲しい。ここの人たちを守る為にも。」
シルバ「守る?何で?だって関係ないでしょ?ここの人たち。」
グレイ「あるさ。ここで生きてる人たちなんだから…」
シルバ「戦う前に逃がせばいいんじゃない?」
グレイ「この場所は戦で傷ついた彼らが行き着いた場所なんだよ。だから…」
シルバ「行き着いた…場所…」
一瞬シルバの表情が曇るが、
シルバ「じゃあ、行きましょう。村の人達からも直接色々状況を聞かせて欲しいわ。」
2人はゴーストとの戦いを覗き込んでいた村人達に状況を聞きに向かうのであった…
一方トウキとシンは泉の近くまで来ていた
トウキ「…シン?」
シン「なんで追いかけて来たの?」
トウキ「さっきのアレ…見ただろうから…」
シン「この剣、わたしの故郷に昔からあったモノだったの。その故郷…アルマリアの巫女だったわたしの一族は、祭事で使っていたこの剣の管理をしていたの。」
トウキ「そういえばシンの故郷の話って今まで聞いたことがあまりなかったかも…。」
シン「…わたしの故郷は…」
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アルマリアの地、そこで生まれた元気な女児がいた。シンである。6歳になった彼女はやんちゃ盛りで、毎日のように神殿の中を走り回り、巫達を困らせていた
巫「巫女殿ォ!巫女殿!待たれよ巫女殿!ひぃ…ふぅ…。ま、まったく…とんだじゃじゃ馬よ…今夜もこれから舞の稽古だというのに…。」
幼いシン「ふっふーん!じっちゃんお師匠から教わったマナの使い方を練習する方が毎日やらされるつまんない舞のお稽古より断然楽しいもんねー!」
巫「先日訪れたウラヌスなる者に一体何を教わったっていうんじゃ…!お父上から舞の稽古を任されているこちらの身にもなってくだされ…ってこらー!巫女殿!いい加減にしなされー!」
巫が追いかけるもシンには追いつけない。幼いシンはマナを循環させて体力増強、活性化させ一種の肉体強化をしていたのだ。
息を切らし、足を止めた巫の様子を見た彼女は振り返りながらあかんべーをして挑発するように前を見ずに走っていくと壁に後頭部をぶつける。
しかしその壁は仕掛けが施されていた。まるでカラクリ屋敷の回転扉のようにくるりと回転し、シンは今まで入ったことのない部屋へと導かれた
巫「巫女殿ォ!…まったくどこへ行かれたのだ…?!」
追いついた巫はそのことに気づかずにその壁を調べもせず通り過ぎていく。どうやら認知していないようだ。
幼いシン「…いててて。なんだろうここ…?」
礼拝堂のような造りをしていたその部屋の天井は高く、壁には難しくも華美な壁画が描かれている。そしてそこに何故か石の剣が不自然に刺さっていた。
幼いシン「綺麗な絵〜。…でもこれ何?なーんでこんな地味ーな石の剣が壁に刺さってんだろ?よーし…取っちゃお〜!」
壁に刺さっている石の剣の柄を握り、力いっぱい引っ張るがびくともしない
幼いシン「うー!…こうなったらさっきみたいにマナを使って…うーーーん!」
全身にマナを纏うように幼いシンは集中して柄を握り直し力を込めようとした瞬間…
「触るな!!」
聞き慣れた怒号が雷のように堂中に響き渡った。反射的に肩を上げた幼いシンは驚き、マナの制御を誤ってしまう
幼いシン「わ!わ!」
全身からバチバチと電気エネルギーが発せられ、やがてマナが溢れ出す
幼いシン「待って!止まって!」
パニックを起こした心理状態で冷静な判断ができず、事態は悪化していく。やがてマナを消費した幼いシンは気を失うが、握り続けている石の剣がマナに呼応するかのように電気エネルギーを吸収し、発光していることに怒号を発した声の主は気が付いた。
シンの父「…まさか…そんなことが…!」
そう呟いた声の主…シンの父は幼いシンの元へ向かっていくのであった。
幼いシン「…うーん。頭痛い…。」
シンの父「…これに懲りたら少しは言うことを聞いて、大人しくしなさい。」
幼いシン「…はい。ごめんなさい。でも不思議。父上が助けてくれたの?」
シンの父「いや…この石の剣…麒麟様が助けて下さったんだ。」
幼いシン「…きりん?」
シンの父「この場所はお前が18の生誕日に来るべき場所だったんだ。この麒麟剣に眠り続ける麒麟様にお主の舞を見ていただく為にな。」
幼いシン「きりんさん、寝てるの?」
シンの父「…そうだな。この地にアルマリアと名がつくずっと前から眠ってらっしゃる。だが今、お前は…今まで我々が先祖代々が成し遂げられなかった事をやってのけたんだよ。」
幼いシン「きりんさん…怒っちゃったかな?」
シンの父「大丈夫。お前の呼びかけに応えてくださっただけさ。それにもうこの部屋に来た以上、隠す必要もあるまい…。アルマリアの巫女の家系に代々受け継がれてきた舞はこの石の剣、麒麟様に捧げるものであり、舞った者の力…彼のウラヌス曰くマナ…だったか。ソレを分け与える儀式の為だったんだよ。」
幼いシンにとって初めて知ることばかりであった。マナ不足で頭が朦朧とする中でも、聞くこと見るもの…全てが輝いて感じられた。今まで理由もなくただただやらされていた事にも目的があったこと。それを知ることが出来た幼いシンはとてもワクワクした気持ちになっていた。
幼いシン「父上、わたし、舞のお稽古する。それできりんさんにいっぱい見て貰って…元気になって貰い…たい。」
シンの父「…そうか。だがここへもう来てはいけないよ。今日はもう休もう。疲れただろう?」
そう言って優しく頭を撫でる大きな手と腕に包まれた少女は再び目を閉じ寝息を立てるのであった。
シンの父「…よりにもよって何故この子なんだ…何故こんな小さな子に過酷な試練を背負わせる…?」
シンの父はそう呟き麒麟剣が刺された壁を睨みつけると背を向けその場を後にした
シンの父「お前は必ず私が守るよ…ライカ。たとえお前が私を拒絶することになったとしても…。」
幼いシンを強く抱きしめライカと呼んだ父には決意が漲っているのであった
次の日から幼いシン=ライカは舞の稽古に勤しんだ。素直に言うことを聞く優しい子に育っていく彼女の成長は著しく、走り回る姿を見せることも無くなっていた。そして毎日のように稽古が終わると密かにあの部屋に赴き、壁に刺さっている石の剣に向けて踊り続けた。
ライカ「今日はここまで。また明日ね!」
そう言って掌に集めたマナを少し渡すことが習慣となり、穏やかな年月が経っていく…
あの夜が来るまでは。
シン、14歳の頃の出来事である。
衛兵A「今晩はあの『夜闇の日』。傭兵や冒険者達は書き入れ時だって喜ぶ日だけど、俺たちにゃ無縁の話だよなぁ〜。」
衛兵B「せっかく苦労して“ロイヤルナイツタイプ”の戦闘スタイルを習得して公務員になったはいいけど、固定給のサービス残業だもんなぁ…」
衛兵A「だよなぁ…せめて今晩くらいは倒した数だけ給与上乗せして欲しいくらいだぜ…」
衛兵B「だよなぁ…。あ、そうだ。オレ、この夜勤が終わったら彼女にプロポーズしようと思ってるんだ〜」
衛兵A「おい、やめろよ…そういうこと言うと敵が出てくるって…」
2人「…まっさかなー!ハハハ!」
?「ネ〜!」
そう話していたアルマリアの入り口を守護する衛兵達は、一瞬のうちに背後に立った黒い影に斬首され倒れていった…
巫「巫女殿ォ!巫女殿!いずこへー!」
ライカの父「どうした?!」
巫「巫女殿が…ライカ殿のお姿が見当たらないのです!入り口を守護していた衛兵達が1人残らず惨殺されて、街にも甚大な被害が…」
ライカの父「邪な者達め…、星の無い夜にこれ見よがしに暴れ回るとは…。野蛮な…。生き残った者達は地下へ逃れるよう伝えよ!ライカのことは私に任せろ!」
巫「は、はい!」
ライカの父「やはり来てしまったか。こうなった以上麒麟剣を使って私が戦うしか…。」
ライカの父は壁に手を押し付け回転扉を作動させる。そして礼拝堂の中へ進み、麒麟剣の元まで走っていく
ライカ「!?」
ライカの父「…ライカ、何故ここにいる?」
ライカ「父上…、えへへ、実はね、あの日からずっと踊りの成果を見てもらっていたの。今日もその…」
種明かしをするように話すライカの頬を父は力強く叩く。
ライカ「…ち、父上?」
ライカの父「何故言付けを破った!?ここへは来るなと言ったはずなのに…!」
ライカは頬の痛みを我慢するように唇を噛み締める。目から涙は溢れ、じっと父を見つめた
ライカの父「今晩は星の無い夜。魔が蠢く忌むべき夜だ。ここで大人しく待っていなさい。」
ライカ「…はい。」
ライカの父は石の剣の柄を握る
ライカの父「この剣は来るべき時に、見初められた者が携え、最果ての地に眠りし邪悪を消し去るモノだと言い伝えられている。剣よ、今がその時ではないのか?…私が…いや、俺がこの手で…」
しかし剣は抜けない。
ライカの父「私は婿養子として選ばれてからずっと努力してきた。お前を引き抜ける日が1日でも早く来るように鍛錬を重ね、舞も覚えた。だが出来なかった!体が弱かった先代の巫女…妻は病で倒れ、この世にはもういない。残ったライカを護るため、お前の持ち手にさせない為に…今日まで1日たりとも休むことなく努めてきた…!!
もしも仮にライカが持ち手に選ばれなかったとしてもこの先ライカが結婚し、子供が生まれたら舞を教え、またその子が生まれた子供に教え続けていくことは変わらない…。何故だ?何のために!最果ての地に眠る邪悪?いつ始まるか終わるかも知れない未来をいつまで見続けなければならない!?頼む!これ以上、私達…俺を翻弄するのはやめてくれえええ!」
父の切実な声は堂の中にこだまする。しかし石の剣は彼の言葉に耳を貸さず抜ける気配を見せない。
ライカの父「…くそ!くそっ!くそ!…畜生…!」
そんなやりとりをしていると回転扉の戸を叩く音が聞こえてきた。同時に唸り声も聞こえ、扉の向こうにいるのが人間でない事を察せさせる。
ライカの父「…この場所は巫女の家系に関わる者しか知らぬ筈。…ここまでか…。」
ライカの父は剣から手を離し、ライカの元へ向かう。そして力強く抱きしめた。華奢なライカの体が引き裂かれそうなくらい強く、強く…
ライカの父「…不甲斐ない父ですまなかった。突き放し、お前に深く関わらない事でお前をこの剣の宿命からも逃した気になっていた。だが俺ではダメだった。結局お前に何もしてやれなかった。最後にこれだけは言わせてくれ。お前を…愛している。ライカ…お別れだ!」
扉の奥へ消えていく父の背をライカはただただ見ることしか出来なかった。やがて聞こえてくる父の断末魔を聞き大粒の涙を溢すのであった。
ライカ「父上…。」
扉の奥からは先程のような戸を叩く音が聞こえなくなった
ライカの父「…させない…ここから先へは…行かせない!」
血だらけになり朦朧とする意識を保っていたライカの父は屍異奴に侵蝕されていきながらも閉ざされている扉を死守していた。
堂の奥に閉じ込められているライカはただただ震えているばかりでそんな事は知る由もなかった…
ライカ「…たすけて…誰か…たすけて」
逃げる気力すら失い、膝を抱える少女の声が外に漏れるハズもない。
やがて扉の奥から再びこじ開けようとする魔の手が垣間見える。
ライカ「ひ!?」
次の瞬間、壁に刺さっている石の剣が呼びかけるようにバチバチと電気を放ちだす。
柄を握ったライカの脳裏に周囲の状況が言葉にできないほどの早さで流れてくる
父に侵蝕していた屍異奴が周囲の魔の存在にも伝播していき同質の存在へとしていく。それと同様の出来事がアルマリア全体で同様の事象が起こっていた。人も魔の存在もゴーストと化した屍異奴に取り憑かれていく様子、同時に人々の悲鳴、這いつくばる手と流れる血…そして巫女へ救済を求めて祈る声が耳に届く
「助けてくれ…」「我々を…」「巫女様…」
唆されるようにライカは剣を引き抜いてしまう。そして導かれるように祭壇に上がる。
「その剣で…」「早く」「助けて」
祭壇の中心に剣を突き刺す。するとライカの身体中から引き抜かれていくようマナを剣に吸い尽くされてしまう。すると石の剣は吸収したマナを糧に雷を纏う。
ライカ「え、ちょっと…待って…だめぇぇぇ!」
手を離そうとしても体が思うように動かない。そして彼女が数年間に渡って与えていたマナを蓄積していた石の剣は、それを増幅し一気に放出した。地を走る雷撃は堂の外へ漏れ、まるで意思を持っているかのように屍異奴が蔓延る都中に行き渡っていく。
剣を離せずにいるライカの耳には意識が残っている人たちの断末魔が流れ込む。気が狂うほど多く人の叫び声や、生きたいと願っていた人々の声が拒否すればするほど剣を伝って頭の中へ入っていく。
ライカ「嫌…!もうやめて!嫌ああ!…」
許容範囲を超えた彼女は白目を向き、剣を握ったまま意識を失うのであった…。
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