見つめるモノたち
シャマノから話を聞いた後、一行はそれぞれの住まいへ戻っていった。
トウキ達は村人Aの住居でしばらく休息を取ることとなる中、トウキは村の奥にある禊を行っていた泉へ向かった
トウキ「飛び込んだ時に感じたセイリュウやレヴィに似た姿をした存在…。もう一度入れば…ちゃんと見ることが出来るかもしれない…!」
透き通った水を見つめ、トウキが泉に足を踏み込もうとした瞬間、
シルバ「あら、入水自殺?」
声のする方向を向くと、木々の影からこちらを見つめる人影が見えた。
肩に乗った長い銀髪を振り落としながらシルバが現れた
トウキ「…いえ、そういうわけでは…」
シルバ「ふぅ〜ん。まぁいいわ。でも、あまり感心しないわね〜。まだ若いのに身投げなんて…悩みがあるのならお姉さんが聞いてあげるよ〜?」
トウキは若干疑いつつも、自分がこの泉に飛び込んだ時に見たビジョンを話した。しかしシルバは冗談話と捉え、笑い飛ばす
シルバ「アハハハハ!こんな泉の中に?龍がいて…?ハハハ!それが自分に飛び込んできた?…プププ…ハハハハ!」
トウキ「ちょっ…そこまで笑わなくても…!!」
シルバ「ご、ごめん…!だって龍なんて古いお伽噺に出てくるものでしょ?そんなのがこんな場所にいるなんて…アハハハ!ちゃんちゃら可笑しいわ…!」
本気で相手にされないトウキは憤りを覚え頭に血を上らせるが…
グレイ「お!トウキ!こんなところに居たのかよ!村の人が食事を作ってくれたんだ!さっさと戻ろうぜ!」
グレイが呼び戻しに現れる。早口で喋りながらトウキを引っ張り、シルバから逃げるようにその場を後にした。そんなグレイの姿を見たシルバは一瞬驚くように目を見開くも、すぐさま微笑むのであった…。
トウキ「ちょっと…グレイ!いきなりどうしたんだよ…引っ張らないで…!僕、あの場所に用が…」
グレイ「だったら後にしろ。それと、あの人には近づかない方がいい。」
トウキ「どうしたんだよ一体…。あの人、知り合いなの?」
グレイ「ああ。…正確にば“父さんの”だがな。あの人…シルバは一見面倒見は良さそうだけど、実際はただのエゴイストだからな… 」
トウキ「うう…。確かにさっきも話聞くって言ってたけど、なんかただ小馬鹿にされただけだったしなぁ…。あー…。なんだかむしゃくしゃするなぁ…!」
グレイ「? お前がそんな風に感情出すの、初めて見たかもしれない…!」
トウキ「え?」
グレイが足を止めて驚くとトウキも驚いた。
トウキ「…確かにあんまり怒ったりムカムカした事って今まであまり無かったかも…。」
グレイ「フン。少しはニンゲンらしくなったじゃないか。」
トウキ「ニンゲン…らしくね…」
トウキはその言葉を聞くと俯いてしまう。窮地に追い込まれると額から発生する一本角、理性を失い暴れる自分は果たしてニンゲンなのか…ふとそんな事を考えてしまう。もちろんグレイはそんな嫌味を込めて言ったつもりも無く、様子の変化を察して彼は即座に謝った。
グレイ「!! す、すまん!変な意味はないんだ!…気にしないでくれ。」
トウキ「あ…うん。大丈夫。」
グレイ「ダメだなぁ…俺、村に来た時も儀式の内容も知らずに“ラッキー”なんて軽はずみで言っちまって…。あんな俺たちと大して年齢の変わらない村の人の心臓を抉り取る儀式だったなんて知ったら…絶対口が裂けてもそんなこと言えるはずないのによ…。」
シルバ「あら?やーっぱり空気読めない性格は変わってないみたいね…グレイっ!」
追いついたシルバが背後から抱きついた
グレイ「ぶわ!シルバ…やめろ!抱きつくな…!」
シルバ「そんなこと言ってぇ〜…ホントは嬉しいくせにっ!」
豊満な胸をわざと当てるようにさらに強く抱きしめる。
シルバ「昔はこうやってよくぎゅーってしてたよね〜!うーん…懐かしいなぁ〜。会いたかったよ〜!グレイ〜!」
グレイ「ったく…いつの話だよ…!てかそん時も無理矢理だっただろ?!今と変わりないって…!」
シルバ「あ、そっか…。あの時は違ったよね…。」
抱きしめる腕の力を抜き、グレイを解放する。グレイは振り向いてさらに文句を言おうと口を開くが
シルバ「あの時は正面からぎゅーってしてたもんねー!」
グレイを再び抱き寄せる。胸元に顔を埋めさせ、シルバはとても満足そうな表情を浮かべた
トウキ「あの…あのー…。」
まるで場違いなように感じたトウキは顔を引き攣らせながらもシルバに声をかけ続ける。しかしグレイとの再開に夢中の彼女の耳には届いていないようだ。
シルバ「あれ?グレイ、少し身長伸びた?それに髪の毛も…!ダメだよ〜?各地を回る指令の途中とはいえ、しっかり身だしなみは整えないと…。あ、そうだ!せっかくだし髪、切ってあげようか?グレイは短い方がずぅっと似合ってるんだから!」
グレイ「…! いい加減にしてくれ!」
肩まで伸びているグレイの髪に触れた時、グレイは声を荒げた。驚いたシルバは抱擁を解き離れる。
グレイ「…髪は、アレ以来切ってないんだ。」
シルバ「アレ以来…もしかしてシンクロウの…」
グレイ「ああ。あの日のことを忘れない為の…俺の決意の証なんだよ。コレは。」
その言葉を聞いたシルバは少し動揺したようにも見えたがすぐさま一蹴する。
シルバ「シンクロウ…いえ、クリムゾンを目の前で失ったのは息子であるあなたには酷だったとは思うわ。でもいつまでもそれに縛られていちゃ先になんて進めないし、彼を殺した屍異奴を憎むことを忘れたら強くなれないわよ?」
トウキ「…あの、それは違うと思います。」
シルバ「あら?さっきの自殺志願者クン居たのね!…なぁに?一体何が違うって言いたいのかなぁ〜?」
トウキ「人を思う気持ちは…そう簡単に断ち切っちゃいけないと思うんです。それが大切な人だったらなおさら…。彼は…グレイは、お父さんの事を今でも大切に思っているから…それを力に変えて戦う力に出来ているんです!決して仇の屍異奴を恨むだけが強くなる方法じゃないはずです」
トウキはアスティルカに上陸する前、舟の上でグレイから限界突破をした時の状況について聞いていた。
父の形見でもある銃に宿っていた魂が語りかけてくれたことや、亡き父に変わり屍異奴を倒し続けていくという決意を。
グレイ「追いかける為に…いつか、ずっと見上げていたあの大きな背中を飛び越える為に…俺は決めたんだ。この銃…レイオと一緒に父さんの出来なかった事を成し遂げたいって。そして、父さんがいつも使っていたこの銃と対になっている銃を持ち去っていった仇の屍異奴をこの手で葬る為に…!」
そう言って果てしなく続く海原を見つめていたグレイの目は死んでいなかった。むしろ未来を見つめ、己の戦う理由を語った男の背中をトウキもまた見つめているのであった。
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トウキ「それに…優しさはこの世界のどんなものよりも強いんだ…!グレイの思いも、覚悟も…お父さんを思う心はそんな簡単に割り切れるものじゃないんだ!」
シルバ「…ふぅん。アナタ、自殺志願者にしては随分前向きなのね。分かったわ。今回は私の負けってことにしておくわ。ところでアナタ、彼とはどういう関係?」
グレイ「コイツは…ただ俺が指令を受けて監視を…」
トウキ「仲間です。」
トウキはまっすぐ目を見て言い切った
トウキ「もう1人シンって人と3人で、世界に点在している龍脈を調べる旅をしているんです。」
シルバ「ふぅん…なら、ここにもその龍脈があるっていうの?」
トウキ「あります。それを悪用している人がいるから僕たちはそれを止めようとしているんです。」
シルバ「そう…。ん?」
ふとシルバは背後から迫る気配に気づく。
シルバ「…どうやらそろそろ…。お仕事の時間みたいねぇ〜…」
揺らめく炎のように朧げな姿をした屍異奴がゆっくりと歩み寄ってきていた。
トウキ「屍異奴!でも今までとは少し違う…シルバさん、下がってて!ここは僕たちが…」
シルバ「必要ないわ。せっかくだし自己紹介も兼ねてここは私に任せてくれない?」
トウキ「それってどういう…!?」
シルバは懐から小型の銃を出し、その不気味な様子の屍異奴に向けて銃弾を放った。
一直線に飛んでいく銃弾は着弾すると周囲を巻き込みながら大爆発を引き起こす。
シルバ「私の名前はシルバ。この子と同じ組織…カラーバレッツに属する銃士よ。」
爆発を背に銀色の髪を爆風で揺らしながらシルバは名乗る。そんな様子をグレイは呆れながら見ているのであった…。
グレイ「簡単に明かすなよ…俺たちって一応…秘密組織みたいなもんなんだろ…?」
シルバ「え?」
グレイ「え?」
互いの言葉が平行線を辿っていく。木の隅に行き、グレイはトウキとの出会いと自身の指令を耳元で伝えた
シルバ「ぅんんっ…!くすぐったぁい…」
グレイ「だ…!へ、変な声出すんじゃねぇって…!前にノワールに呼び出されたカラーバレッツの集会の時に伝えたヤツだよ…。それで俺はアイツの持つ人喰いの剣を監視する指令を受けて…っ!」
シルバ「…あ、もしかして今までずっと隠してた系の感じだった?…あちゃーゴメンねっ!」
グレイ「…まぁ仕方ないが…。それに、アイツ、そんなの全然気にしてないみたいだし。」
トウキ「そうかぁ…グレイのいる組織ってカラーバレッツっていうのかぁ〜!グレイのもそうだけど、シルバさんも同じような武器を持ってるんだ…!組織かぁ…カッコいいなぁ…!」
シルバ「…不思議な…子…よね?」
グレイ「ある意味…そうかもな。」
静まり返る森の中、村人達が様子を見に来るまでの間、トウキはキラキラした目で2人を見つめ続けていたのであった…
グレイ「…で、なんでアンタは俺たちに着いてきてるワケ?」
シルバ「そりゃ久しぶりにグレイと会えたんだもん!次の仕事が来るまでの息抜きよ〜」
シン「なぁ、トウキ…あの人は誰なんだ…?グレイの姉にしてはちょっと似てない気がするんだけど…?」
トウキ「あの人はグレイと同じカラーバレッツって組織に入ってるシルバさんだよ!グレイみたいな武器でさっき出くわした屍異奴を一撃でやっつけたんだよ!」
シン「…?って、そんなことよりまた屍異奴が出たのか?!」
トウキ「うん。あ、でもシルバさんがいればどうってことないさ!なんてったって炎みたいにユラユラした変な屍異奴も1発でまとめて仕留めたんだから!!」
シン「揺らめいていた屍異奴…。おい!あんた、それは本当か?!」
シルバ「ええ。それが私の仕事だもの。」
シン「馬鹿野郎…今すぐ対処しないと…」
グレイ「どうしたんだ?」
トウキ「シン、どこにいくの?!」
シン「揺らめく影人は爆発四散するとその分だけ数が増えるゴーストだ!見境なく人間に取り憑いて強制的に生への執着を作り出す。挙げ句の果てには、ソレが新たな屍異奴を人間の影から呼び寄せる…。いわば『憑依・増殖型』なんだよ!数が増える前に対処しないと大変なことになる!!」
目の色を変えたシンは住居から出て周囲を見渡す。案の定20体ほどに増殖したゴーストが村に迫りつつあった
シン「屍異奴が出たって事はこの村以外にも犠牲者が出た場所が近くにあったのか…?」
シルバ「ああ〜…。それならここに来る途中、近くの村で黒鍵が刺さった屍異奴に食い荒らされた村があったわ。その屍異奴なら倒したけれど。」
シン「どうりで…。屍異奴は本来、人間の生きることへの執着に導かれるように影から現れる。だがその人間が死んでしまうと、行き場を失った屍異奴は他の人間を求めて彷徨い歩く亡霊のようにになるんだよ…。」
グレイ「ってことは村単位で人が大量に死んだって事は、それだけゴースト化した屍異奴がこの地を彷徨っている可能性があるって事か…!」
シルバ「ねぇグレイ、彼女何者?すごく詳しいようだけれど…?」
シルバはシンを指差しグレイに問いかける。男の身なりをしてはいるシンを、シルバは一目で見抜いていた。
グレイ「詳しくは知らん!でも強いて言えば、今はアイツの知識に頼るしかない…!!」
相手を爆散させるカラーバレッツの持つ武器はゴーストとの相性があまり良くない。そう察したグレイはゴーストを村に近づけないように足元へ威嚇射撃を行い牽制する。一方トウキは先程の戦いを思い出して違和感を覚える
トウキ「禊の儀式の後、泉の近くにたくさんの屍異奴が出てきたけど、ゴーストじゃなくて通常の屍異奴だった…。ってことはあの時倒した大量の屍異奴達は一体どこから出てきたんだろう…?」
そんな悪戦苦闘するトウキ達の背後、ずっと奥に小さく光る紫色の怪しい炎が目のように彼らを鋭く見つめていた。その正体はかつてトウキとシンが星都に行く前に戦って取り逃してしまった魔導針に寄生していた屍異奴であった
魔導針「(キヒヒ…!集マレ…集マレ…殺セ…シンヲ…トウキヲ…殺セ!)」
以前トレッカーとして一度人間と一体化したこの屍異奴は、高い知性を持ち合わせている。なんと既に言語をマスターしていたのだ。そんな魔導針に寄生している屍異奴=ガイドは自身から放たれる炎を道標の代わりとし、自身の正面延長線上にいるトウキとシンにゴースト達を憑依させようと画策していた。
ガイド「(サッキは泉ニ潜ッタガキカラ出タ屍異奴ヲ俺ノ異能デ複製シタガ、コイツラハ便利ダ。散レバ散ルホド勝手ニドンドン増エテクレル…。コイツラヲ使ッて今度コソ、オマエ達ヲ…!俺ヲコンナ惨メナ姿ニサセタオマエ達ヲ…必ズ殺ス…!復讐シテヤル…!)」
光届かぬ木陰の中、不気味な笑みを浮かべているようなガイドがその炎をさらに怪しく揺らめかせていくのであった。
シン「シルバさん!俺がまとめて倒すから、あんたとグレイで奴らの動きを止めてくれ!」
シルバ「はぁ…。やるしかないわね」
シルバはグレイに銃弾を投げ渡し、それを装填するよう促した
シルバ「同時に撃って!一気に動きを止めるわよ!」
グレイ「!…なるほど!そういうことか!」
グレイは渡された弾が一度撃ったことのあるものだと即座に理解した。そして2人は声を合わせて引き金を引く
2人「巨人拘束弾!」
ゴースト達の足元に着弾し、炸裂すると同時に溢れ出したセメントは足元を固め拘束することに成功した。
シン「帯流電・地走り!」
地面に突き刺した麒麟剣から雷が駈ける。身動きが取れず感電したゴースト達は跡形もなく消え去っていった…
トウキ「…すごい。あの数を屍異奴をこんな簡単に…!」
シン「手際の良さ、即座の対処…さすがだな。2人が屍異奴の動きを止めながら集めて固めてくれたおかげで大事に至らなかった…。助かったよ。」
シルバ「礼には及ばないわ。ただ単純にドロニンギョウじゃなかったから。集まっても合体する心配はないと判断しただけよ。」
シン「2人が入ってる組織…カラーバレッツってのも結構屍異奴に詳しいものなんだな…。」
シルバ「ええ。でもゴーストの件は盲点だったわ。今度ノワールに問いたださないといけないわね。」
グレイ「…。」
そんなやり取りをしていると雷を帯びた屍異奴の残骸がふと斬鮫に触れた。そしてシンとトウキが初めて旅立った時に見たようなビジョンが脳裏を過ぎる
トウキ「これは…オロチの記憶…!?」
6つの首を既に斬り落とされた巨大なオロチ。
そしてその目前には雷の剣を構える戦士が立ち塞がっている。
剣身から左右段違いで3本ずつの枝刃を持った雷の剣は刃は黒く染まりつつも雷鳴を轟かせる青い雷を纏っていた…
オロチ「創られし者達よ、いくら我の首を落としたとて、完全に滅することなど出来はしない。それにお前の持つその剣、我が首を1つ斬り落とす度に刃が1つずつ黒く染まっていっただろう…?それは力を封じる呪いを込めた我が血だ。…我は…!いや、“私”は…その力を失いし刃のように脆弱なアナタ達創られし者達をこの地もろとも黒く染め尽くします…いつか…必ず!!」
戦士「首を斬られ続け力をも失いつつある中で、残ったものがこれとは…。まさに“傲慢”…。それに『私』とな?最後の最後で自我までもが芽生えるとは…相変わらず底知れぬ存在ぞ。」
オロチ「黙れェェェ!!」
2つの首が残るオロチは巨大な口を開く。鋭利に尖った牙が戦士に迫る。
戦士は雷のマナを握った剣に注ぎ込むと剣身にはさらに激しく雷が迸る
戦士「おおおおおお!」
最初に迫った首の牙を一本斬り落とし、そのまま“傲慢”、自我が芽生えたと称した首の根本から斬り裂く。
しかしその返り血を浴びると同時に剣は遠くまで弾き飛ばされてしまう。雷を失った剣は枝刃も消失していき、やがて輝きを失い、石と化していく。なんとそれは今シンが携えている剣そのものであった。
斬られた首「ぐ…ッ。し、しかしこれでお前はもう残った1つの首を斬ることはできません。『私』は斬られましたが、もうアナタに成す術は有りはしない…残念でしたね…!創られし者よ…!」
斬られた首は夜空を這うように飛び去っていく。それはやがて力尽き、流れ星のようにアスティルカの地へと落ちていくのであった。
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そこでビジョンは途切れた。
お読み頂きありがとうございました。
もしも
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皆さんに見て頂けること自体が嬉しいことですし、これからも貴重なお時間を共に過ごせるよう頑張って書いていければと思いますので応援よろしくお願いします_(:3 」∠)_




