声の元へ
グレイ「因果応報だな。ったく…文字通り自分で蒔いた種じゃないか」
シン「だが、歌を介して…それも人数を絞って掛ける幻惑のまじないなんて聞いたことがない!」
トウキ「僕が夢で聞いた歌もそうなのかな?」
グレイ「詳しくは知らん。だが強いて言えるのは、俺たちは村で寝ていた時は聞けていないってことだ…。朝になって他の村人達もそれらしい話は一切している様子はなかった…。まぁ、それはそれとして」
破壊された村の様子を見渡しながらグレイは静かに憤る
モーカッナー「…あの、本当に…すまなかったと思ってる。可能な限り元に戻せるよう全力で協力を…させてください」
グレイ「当然だ。お前のエゴで村の皆をこれ以上苦しめさせてたまるか。これに懲りたら今後は相手を思い遣る商いをすることだな。でなければ…」
拳を固めてビッグフィストの積み上げた残骸の山に叩き込む
グレイ「…容赦はしない。」
モーカッナー「…は、はひぃ…」
拳1つで残骸を吹き飛ばしたグレイは振り向き、鋭い眼光で睨みつける。その姿を目の当たりにしたモーカッナーは恐怖を覚え失禁した
シン「…おい、アイツ…武器がなくても十分強いんじゃないか?」
トウキ「拳が妙に丈夫ってレベルじゃあない…よね」
グレイ「…おいそこ!何をこそこそ話している?!」
シンとトウキ「いえ!なにも!」
コソコソ話している2人を一喝するグレイであった。そして辺りが静まり返った瞬間、地面が大きく揺れ始める
シン「地震?!」
グレイ「タムンさん!逃げ遅れた人たちも!モレッカナー、お前も!高い場所に避難を!」
モーカッナー「そ、そんな風に呼ばないでくれ!」
村人たちを引き連れて高台に避難する一行。そして地震が収まったかと思うと次は海面から巨大な柱のような渦が現れる。
村長「海が…こんなに荒れるなんて今まで見たことがない…」
村長がそう呟く中、背後からアンダダが姿を現した。フラフラと足元がおぼつかない様子で歩み寄ってくる彼の首筋には、怪しげな貝殻が食い込むように付いていた
アンダダ?「我が力の一部を与えし島の安寧を奪う者現れし時、古の盟約に則り島を母なる海の底へ沈める。」
村長「アンダダ!長になる者にしか伝えられて来なかった事を何故お前が知っているんじゃ!?」
グレイ「待て!コイツ、明らかに様子がおかしい!」
シン「それにさっき彼が言っていたこと…盟約?それは一体どういうことなんですか?」
村長「…本来は掟で他人には話さぬ決まりじゃが、こうなった以上隠しても仕方ないじゃろうな…。
この島はもともと海風に晒され続け、た今以上に痩せこけた地が広がるだけじゃった。そんな島に偶然流れ着いたワシらの祖先にあたるその者達は、そのような死にかけの土地でも諦めず生きる道を模索し続けていたのじゃ。
ある時、祖先である1人の女性がどこからか聞こえる声を耳にした。声の主は祖先達の生きる為の行動に興味を示し永遠の繁栄を提案してきたが、彼女は断った。身に余る豊かさは人々を堕落させる。更なる豊かさを限りなく求め続けることで生まれた欲望は人を…ひいては島をも滅ぼしかねない事を説明したそうじゃ。声の主は豊かになるのに滅びるということに疑問を呈すが、彼女の言葉にも興味を示したらしく、行く末を見守る代わりに最小限の恵みを提供する事を持ちかけた。条件は3つ。1つは彼女が人としての生を全うした後に死した体を海に送ることじゃった。」
シン「それが今の亡くなった人を海に送る風習に繋がっていくわけか。」
村長「彼女が死した後に、その体を使い、島の行く末を見守っていきたいという声の主の条件を聞き入れたその時から彼女の首筋には盟約の印が浮かび上がり、島は徐々に豊かさを手に入れたそうなんじゃ。」
トウキ「…盟約の印。」
トウキは自身の胸に刻まれたセイリュウの刻印と似た物であると察し、胸に手を当てる
村長「2つ目は島の安寧が乱されるようであれば容赦なく与えた恵みと共に海の中に帰すことを代々長となる者のみに伝え続ける事。3つ目はこれら全ての事柄を他の者達に口外することを禁ずること。そうして今に至るのじゃ。」
アンダダ?「村を守りし長よ、今一度ここで問う。何故人は他を己の利の糧とする?」
村長「そ、それは…」
アンダダ?「我が長きに渡り、島の者達の営みを見守ってきた。そして確信した。人は己の欲の為に他を犠牲にする存在である。次の長となる此奴がそうであったように!」
グレイ「…急に出てきて、何を分かったようなツラしてほざいてんだ!」
アンダダ?「何だと?」
グレイ「お前がアンダダ本人でなく、何者なのかは全く知らん!だから教えてやる!人には欲望だけでなく信念っつうモノもあるって事を!
確かにソイツはやり方こそ間違えたかもしれない…。だがな、自分の手で村をより良くしたいっていう信念を持っていた!知ってるか?ソイツの夢を…」
アンダダ?「夢…とな?」
グレイ「日が沈むまで農耕作業を教えている時に言ってた…」
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アンダダ「俺、夢ができた!…まだ先の話だけど、俺が長になったらモーカッナーの作ったリゾート施設で働く!もちろん長としての仕事もしながらね!
…正直なところ、この先そういう施設が出来たとしたら、さっきの父さんみたいに外から来た人を簡単に受け入れられない村の人が少なからず出てくると思うんだ。せっかく同じ場所に居るのにお互い不審な目で見合うのは嫌なんだよ…。だから村と施設の橋渡し役になって、俺が島を紹介するガイド役になろうと思う!そしてこの野菜達をご馳走したいなぁ…!
来る人にさらに楽しいって思って貰いたいし、物資も届けば村の人たちの生活も少しは楽になるかもしれないし…今以上に幸せになれるかもしれないだろ?!俺、アンタに色々教えてもらえて気づけたことがあるんだ…」
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グレイ「人は、分かち合うことができる。人は!助け合うことで強くなれる!共に支え合い、生きていける存在なんだよ!
…これは俺もさっき気づいたんだが、力を合わせれば、今まで出来なかったことが出来るようになるんだぜ?な、トウキ!」
トウキ「グレイ…」
思いを訴えたグレイはトウキの肩を持ち、今まで見せたことのないような笑顔を浮かべていた
シン「おい、モーカッナー、聞いていたか?」
モーカッナー「…ああ。」
タムン「ワシの娘はアンダダのそういう所に惚れておったんじゃよ。家に帰れば今日はアンダダがアンダダが…っての。体の弱い子なのに話している姿はとても輝いて見えたわい。アンダダの体に宿し者よ、若者の達の過ちはワシ達年寄り共の責任じゃ。どうか罰はこのワシ…老ぼれ1人に与えるだけで勘弁してはくれないだろうか?」
グレイ「おい、タムンさん、何もそこまで…」
村長「いや!息子の過ちは親であるワシの不甲斐なさ故…罰するならワシを!」
村人A「…あ、あたしゃ2人が夜に浜辺で話しているのを見かけたけど、見て見ぬふりをした!罰ならあたしが受けるよ!」
村人B「それなら俺だって!アンダダが村長の部屋に入って村長の印を持ち去ったのを見ていた…。でも村長に報告するのは明日の朝でいいやって先延ばしで考えてた!せがれを止められなかった俺が代わりに罰を!」
タムンと村長の姿を見た村人達は声をあげてだんだんと集まり始める
トウキ「ねぇ、シン」
シン「なんだい?」
トウキ「僕、こういう村で育ちたかったってつくづく思うよ…。本当にこの村の人たちは心優しい人達でいっぱいだね…」
シン「…ああ。」
アンダダ?「…盟約は…」
グレイ「ん?」
アンダダ?「絶対なり!」
アンダダが彼らの言葉を遮るように叫ぶと、海に現れた渦の柱は勢いを保ちながら徐々に島へと近づいて来る。そしてアンダダは張り詰めた糸が切れたかのようにその場へ倒れてしまう。
それと同時に首筋に付着していた貝殻は跡形もなく消え去っていった。
村長「アンダダ!アンダダ!」
シン「…気を失っているだけみたいだ。さてさて、どうやら声の主は相当頭にきているようだね…?」
グレイ「あんなの、俺たちでどうにかできるものだろうか…」
トウキ「どうにかするしかないさ…何が何でも止めたい!…この場所を壊させたりなんてさせるものか!」
トウキとシンとグレイ。3人は高台に避難した村人たちに隠れているよう指示した後に迫る巨大な渦の柱に立ち向かう為に再び浜辺に戻ってきた。
グレイ「レーザー・バレット!」
グレイは自身の持つ火属性のマナを放つが渦に着弾するも無力化されてしまう
グレイ「くっそ…効かない…屍異奴とはワケが違うぞ!」
シン「だったらこれでどうだ!限界突破!麒麟剣タテガミ!翔けろ!雷刃斬!」
雷のマナが溢れる剣身を振りかざすと雷の斬撃が一直線に飛んでいく
トウキ「これは?!」
シン「トウキの技を応用した俺バージョンさ!」
渦の柱に命中すると見事に吹き飛んだ
グレイ「おいおい一撃かよ…これじゃあ俺の立場がないじゃないか…」
シン「あんな半端ないパワーの拳を見せておいて何言ってんだか…」
グレイ「やめてくれ…。あの時はカッとなってついやってしまったが、組織に入ると決めてからは…ずっと使わずに封じてる拳だ…」
シン「そうなのか…ちょっともったいない気もするなぁ…」
グレイ「なあに、俺にはこれがある。父さんが託してくれたこの銃で、俺は戦い続けて、いつか父さんのように力強い男になるって決めているのでな…」
そんな話をしていると再び渦が現れる
トウキ「渦が!?」
シン「まずい、また近づいてくるぞ!!」
勢いを増した渦は周囲の海水を巻き込みながらさらに巨大になっていく
トウキ「シン、もう一度あれを!僕も合わせて水刃斬を放つ!」
シンとトウキはそれぞれの剣にマナを注ぎ刃の斬撃を放つ。しかし、斬撃を与え消し飛ばしても、渦の柱は何度も復活する
シン「…くそ!キリがない!」
グレイ「アレを作り出している本体を叩かない限り、終わらないぞ…」
トウキ「グレイ…あの拳、もう一度使えないか?」
唐突にトウキはグレイにそう言うが
グレイ「無理だ!俺は…」
グレイは頑なに首を縦に振ろうとしない
トウキ「お前に何があったかは詳しく知らない!!でも!強いて言うならお前のあの拳くらいすごい力がなきゃ、今の僕たちじゃアレに歯が立たないことくらい実戦経験の少ない僕でも分かってるつもりだよ…!一度で瓦礫の山を吹き飛ばすくらいの威力で活路を見出すしか方法が…」
グレイ「…しかし…俺は…俺は…」
?「いつまでそうやって過去から目を背け、己に蓋をしているつもりだ?」
グレイが俯くと心象空間に意識が移っていくのであった。
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