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Dialogue Engage-ダイアローグエンゲージ-   作者: ZoRa
藍色の首【レヴィアタン】
29/49

並び立つセナカ、向き合うカラダ

再び再会するも不穏な空気が流れる中、タムンの過去を聞いたことでさらに疑念を深めたシン。そんな中、グレイはその様子を見てある決意をした。


グレイ「この剣はしばらく俺が預かっておく。」


トウキ「…わかった。それで2人が納得するのなら。」


トウキも自分の知らないうちに溝が深まってしまっていたことに困惑しているが、冷静に堪えていた。


グレイ「それはそうとトウキ、お前何で海に来ていたんだ?シンの剣以外で探し物でもしていたのか?」


トウキ「ちょっと人魚をね…」


シン「見たのか!?」


トウキ「うーん、見たって言えば見たけど…夢…みたいな感じだったし…なんともいえなくって…。それを確かめにね」


シン「また夢か。でも村で話していた人魚を知らないトウキが見たってことは、実在する確率は上がったぞ…」


シンが明るい表情を取り戻した瞬間、背後で爆音が響く


グレイ「なんだ今の音は!?」


タムン「村の方角からじゃ…!!」


トウキ「そんな!タムンさんの亡くなった娘さんが大事にしていた場所…守らなくちゃ!!」


堪らずトウキは走り出す。


シン「トウキ!」


そんな様子を海に面した岩陰から隠れるようにしながら黒い髪の女性が見つめていたのであった


村へ着くと巨大なゴリラのような生き物が暴れ回っていた


グレイ「これもさっき言ってたリバーサーか?!」


シン「いや、ちがう!これは…屍異奴だ!」


トウキ「ん?見て!背中に何か刺さってる?!」


巨大化した腕を振り回す黒い塊で覆われた屍異奴の背中には杭のような物が突き刺さっている。


グレイ「黒鍵(こっけん)だ…アイツは別の存在に無理矢理屍異奴にさせられたタイプだ!」


トウキ「じゃあアレを壊せば元に戻るのか!!」


グレイ「詳しくは知らんが、俺が戦った時、アレを撃ち抜いて破壊したら元の人も死んだ!強いて言えばアレがヤツの存在を構成する核になっているんだ!」


トウキ「そうか!だとしたらそれを引っこ抜けば…!」


トウキは何も持たないまま屍異奴に向かって走り出す


グレイ「引き抜くって…。正気かアイツは…。なぁシン、俺はアイツにこの剣を返すべきだったろうか?」


シン「分からない…。夢の中でアイツはツノの生えた仮面をつけていて、実際にそれに近い姿で戦ってもいた…。でも普段のアイツはどんな状況でも誰かのために戦えるヤツだってことに変わりないんだよな…。あの時、わたしの剣を取り戻しに行ってくれたみたいに…今だって屍異奴に取り憑かれた人を助けようと必死になっている…」


グレイ「だとしたら俺たちがやるべき事は…」


シン「…!」


シンとグレイは向き合い頷くと、トウキを追うように走り出した


屍異奴「壊ス!キ麗ニ…シナキャ!」


屍異奴…ビッグフィストは周囲を破壊しながら一直線に進んでいく。

しかし何か作業をしているかのように壊した小屋や木の残骸を一箇所に纏めていた

そんなビッグフィストに向かって行ったトウキは掌からマナリス、ウォルターを放ち牽制して注意を引きつけるが、大した効果はなくビッグフィストは村を壊し続ける


タムン「ああ…村が…壊されていく…」


惨状を目の当たりにしたタムンは膝をつく


タムン「あそこでは祭りの時、小さな舞台を作って娘が歌を披露していた…。あの場所は娘が好きだった甘味処…ああ、ああ…。」


トウキ「タムンさん…。おい!もう、もうこれ以上村を壊すのはやめてくれ!」


涙を流しながら絶望するタムンを見たトウキは暴れるビッグフィストの前に立ち訴えるが


ビッグフィスト「邪魔ナ物は壊サなキャ…」


巨大な腕を大地に叩きつけた衝撃で生まれた風圧でトウキは吹き飛ばされる


トウキ「くっ!負けてたまるか!守るんだ…タムンさんの娘さんが好きだったこの場所を!」


顔についた泥を拭い、足に水属性のマナを纏うと、勢いよく噴射して巨体に急接近する


ビッグフィスト「仕事ノ…ジャマ!」


巨大な腕で目障りな羽虫を叩き落すようにトウキをはたき落とした


トウキ「ぐあ!!」


トウキは勢いよく地面に叩きつけられ、身動きが取れなくなってしまう


ビッグフィスト「潰レちゃエ!」


地面にめり込んだトウキ目掛けて固められた巨大な拳が迫る


トウキ「!!」


巨大イカ戦の時に感じた恐怖を思い出し、身が固まってしまう


トウキ「このままじゃ…死ぬ…。逃げなきゃ…!ダメだ…体が動かない…」


トウキは目を閉じ死を覚悟するが、


グレイ「諦めるなって言ってるだろ!」


船上での戦いのように一筋の赤い弾光がビッグフィストを直撃した


トウキ「グレイ…?」


グレイ「お楽しみのところ悪いが、俺たちも仲間に入れてもらおうか」


シン「久々の屍異奴戦だからな…気を引き締めて行くぞ!」


トウキ「二人共…!来てくれたのか…」


シン「当然さ!」


グレイ「確かにお前は、俺たちの前で鬼みたいな姿になった。それが事実だ。あれが何なのかは詳しくは知らんが、気づいたこともある。そうならないように、俺たちがカバーしていけばいいってな!」


シン「トウキ、ごめん!わたし、わたしが知ってるトウキがトウキじゃなくなっていくようで怖かった…。でもトウキはトウキなんだよね!今みたいに誰かの為に立ち向かっていく姿を見て思い出した!トウキが誰かのために戦うなら、わたしは…わたし達はトウキの為に戦う!」


グレイ「…ま、そういうこった…。それとコレ…戦うのに荷物になっちまうから、預かっててくれないか?」


頭を掻きながら照れ臭そうな様子のグレイは起き上がったトウキに斬鮫を手渡した


トウキ「シン、グレイ…ありがとう!一緒にあの屍異奴を止めよう!」


差し出されたシンの手を掴み立ち上がったトウキは共に、肩を並べる。

そんな様子を見たビッグフィストは咆哮をあげ、再び巨大な腕を振り上げた。


グレイ「散開して動きを止める!その隙に…」


トウキ「黒鍵を引き抜く!」


振り下ろされた巨大な拳を躱すと三方向へ散っていく


グレイ「赤熱弾光・レーザーバレット!!」


シン「限界突破!麒麟剣・タテガミ!」


グレイは熱気が溢れ出る銃を構えながら右腕に銃弾を放つ。

シンは雷を帯びた剣で左腕に斬撃を与えたのちに足に剣を突き刺す


シン「帯流電(たいりゅうでん)!」


剣を纏っている雷がビッグフィストの体に迸る。拳を地につけ、跪いた隙をグレイは見逃さなかった。


グレイ「よし、動きが鈍った!こっちも負けてられないな…。属性弾装填!動きを止めよ!巨人拘束弾(ガリバーバインド)!」


グレイの持つ銃には、普段より自身の持つ火の属性が付与されたマナを擬似的に弾の形に圧縮して形成、装填されている。引き金を引く事で圧縮したマナに引火させ、発生した燃焼ガスにより内部圧力は高まり、弾頭が押し出されていくように加速し発射される仕組みだ。

対して今回は実弾を装填し放っている。実弾のボディ部分に自身のマナを込め、放たれた弾頭はビッグフィストの拳に当たると爆発し、周囲にコンクリートのような物質が網のように拡がっていった。

雷撃を受け、さらに両腕までも固められたことで完全に動きを封じられたビッグフィスト。トウキは足に纏ったマナを使って黒鍵目掛けて飛んでいく


トウキ「(すごい、仲間と一緒に戦うのってこんなにも心強いんだ…)」


グレイ「(ずいぶん昔にシルバからお試しサンプルとして貰ったこの実弾、1人じゃ役に立たないとばかり思っていた。今日までずっと使うことは無いと思っていたが…仲間がいる今、コレがとてつもなく心強く感じる…!)」


シン「(屍異奴は根絶やしにする…それがわたしのこれまでの旅の理由だった。グレイだってそうだ。忌むべき存在だって蜘蛛の姿をした屍異奴と戦った時に言っていたけど、わたし達は今…倒す以外の方法を選ぼうとしている…。屍異奴にされた人ですらも助けようとする…誰かの為に立ち向かうトウキの姿に、いつの間にか影響されていたみたいね…。)」


グレイとシン「行けぇぇ!トウキィィィ!」


トウキ「うおおおお!」


ビッグフィストの背に乗り、黒鍵に手を握るトウキ。そして一気にそれを引き抜き宙投げる


トウキ「斬鮫!頼む!」


マナを流し放たれた斬鮫は、黒鍵を強靭な顎で破壊した。すると要を失った扇のようにビッグフィストの体は崩れていき、取り込まれていた人間の姿が露わになった


シン「こいつは!?」


グレイ「成金野郎…」


なんとそれは村長に儲け話をけしかけていたモーカッナーであった。


モーカッナー「…うう。あ、あれ?ここは…?」


トウキ「…生きてる!生きてるよ!!よかった…!シン、グレイ!成功だよ!」


グレイ「そうみたいだな。まったく、1人で戦っている時じゃ思いつかなかった事をコイツは簡単にやってくれたな…」


モーカッナー「…なきゃ。もっと綺麗に…整備しなきゃ…新しい建物を建て…られない…!」


膝をつき満身創痍な状態のモーカッナーだったが、そう呟きながら自身の周囲の砂をかき集め始める


シン「やめろ!お前!いい加減にしろ!」


そんな姿を見かねたシンはモーカッナーの胸ぐらを掴み無理矢理立ち上がらせる


モーカッナー「ひぃぃぃ!金ならいくらでも出す!だから助けてくれぇ!」


頭に血が上りキレる寸前のシンをグレイは諫める。そして掴んだ手を離すとモーカッナーは観念したのか再び地にペタンと足をついて座りこんだ


グレイ「…ったく絵に描いたような小物っぷりだな。おいアンタ、さっきの黒鍵、どっから手に入れた?」


モーカッナー「アレは以前に取引をした相手から貰ったんだ!名前までは聞かなかったが、白衣を着た風変わりな男だった!『埋め込まれた者の自由を奪い、埋め込んだ者の手足となり、願いを叶える力を解放させる鍵』…そう言われて受け取ったけど、そんな訳分からない物を自分で自分に使うなんてバカなマネ…するはずがないだろう?!」


・

・

・

時は昨晩に遡る


モーカッナー「とすると?つまり…村長の息子である君は、私の事業計画に賛成すると?」


アンダダ「ああ。父さんはああ言ってたけど、俺は悪くないと思うんだ。むしろ絶海の孤島であるこの島に物資が運ばれるなら俺たちにとってメリットしかない。それに、あんたらが売り上げの一部を分けてくれるなら俺たちの生活も確保されるし…ぜひ手伝わせて欲しいんだ。」


モーカッナー「うーん。しかし困ったねぇ…。一度断った案件をそっちの都合でやっぱりやりたいって言われてもなぁ…。これは商談を行う上で信頼感が得られないとは思わないかね?」


アンダダ「…なるべくあんたの希望に沿って進めてもらって構わない。それでそうだろうか?」


モーカッナー「ほぉ…。よろしい!では早速契約といきましょう。あ、いや、しかし判が押せなくてはどうにも…」


アンダダ「それなら持ってきている!父さんの…村長の持っている判だ!」


モーカッナー「いいのかい?勝手に持ってきて…」


アンダダ「もちろん大丈夫さ!なんてったって次の長は何を隠そうこの俺なんだから!」


モーカッナー「…では。ここに捺印を」


アンダダが判を押した瞬間、モーカッナーは態度を一変する


モーカッナー「…。では詳しい内容を話していこう。まず今ある村は取り壊して、その土地に宿泊施設を建設する。コスト面の関係上、全島民に協力してもらう。さらに船の停泊施設を建設する為に島の80%を譲渡してもらう。その見返りとして毎月の収益の10パーセントを提供しよう。以上だ」


アンダダ「ま、待て!そんな条件のめるわけがないだろう!?村を壊す?そんな事できるわけない!」


モーカッナー「契約は既に判は押され完了している。こちらの希望に沿って構わないのだろう?そういう形で作った交わされた契約なのだが?」


アンダダ「それにしたって酷すぎる!これじゃあ俺たちの住む場所が無いじゃないか!!」


モーカッナー「残った土地で新しい住居を作ればいいさ。完成後に余った建築資材は自由に使ってくれて構わないし、そうだ!近くに確か洞窟もあっただろうから雨風も凌げるし問題ないだろう?」


アンダダ「…俺たちに洞穴で暮らせってか…?ふざけんな!!下手に出てれば調子に乗りやがって!」


冷静さを欠き、飛びかかるアンダダをモーカッナーは軽くいなし、砂浜に押し倒す。そして髪を掴み、波が打ちつける海へと引きずっていき、頭を海に押さえつける


モーカッナー「商談はねェ、何も机の上だけでするもんじゃないんだよ。如何にして契約書に書かれた内容を相手に承諾してもらうか…そこに至る全てのプロセスこそが全てなのだよ。

権力者の息子に生まれてきただけの君に教えてあげよう。大人の真似事をしていても君はただのションベン小僧!島の外を知らず、長の息子ってだけで偉いと思い込み、目先の利益に釣られる君みたいな子は…こういう悪い大人の格好のエサになるんだよ!!」


アンダダ「ぷはっ…ぐっ…くそっ…くっそおおお」


モーカッナー「そういえば、ちょうどいいタイミングでちょうどいい貰い物があったな…。ぜひ、私の手足となって、邪魔な村を壊して綺麗にしておくれ…。」


黒鍵を取り出してアンダダに突き刺そうとした瞬間


モーカッナー「…何だ?この声は…」


どこからともなく歌が聞こえる。

どこか寂し気だが気品に溢れ、色気すら感じるその声にモーカッナーは聴き入っていた


アンダダ「に、人魚…様?」


モーカッナー「そうか…コレが!この声が人魚サマってやつか…素晴らしい!音楽堂を作って聞かせればさらに儲けが…いや、こんな辺鄙な島に置いておくのは勿体無い!むしろ王都や星都、主要都市に連れ回してコンサートをしよう!…おい、アンダダ君。ついでだ。村の取り壊しが済んだら人魚を捕まえて貰うよ。多少地形が変わってもこの際どうでもいい!!ぜひともこの人魚を…ん?」


周囲を見渡すと今まで見ていたどこまでも広がる海は無く、いたぶっていたアンダダの姿も見当たらない。気付くと波の音すらも聞こえなくなっていた


モーカッナー「…なんだ?耳が…歌以外の音が聞こえない!それにアイツ、どこへ行ったんだ!」


周囲を見回すと何者かの背中が見えた


モーカッナー「なんだよォ…アンダダ君…そんなところにいたのか…じゃ、そろそろお仕事、よろしく…ね!」


モーカッナーは勢いよく黒鍵をアンダダと思われる者の背に突き刺す


が、


モーカッナー「ぅえ?」


なんと黒鍵は自身の背に突き刺さっていた


モーカッナー「…おいおいおいおいおいおい!なんんんんなんだこれ…一体なんなんだ!?」


歌を聴いてから明らかに様子がおかしくなっている、その事実に気づいた頃には既にもう後戻りはできない状況に陥っていた


モーカッナー「…クククク…ハハハハ!謀りやがったなァ…。

おい、人魚ォ!この私に幻惑のまじないをかけるとはいい度胸だ!コソコソ隠れてないでいい加減出てこい!とっ捕まえてお前を奴隷商に売りつけてやる!そしてお前の身体でトコトン愉しませて貰ってから八つ裂きに…いや、三枚におろしてやる!そしてお前の肉を肥えた貴族共に高値で売り払ってやる!!そして、そして、そして…」


『邪魔ナ村ヲ壊サナキャ』


モーカッナーは心象空間の中で自身の影に似た存在を認知する

それは黒鍵に込めた自身の欲望そのものであった


モーカッナー「おい、来るなよ…。

止まれ!」


『ソノ後ハ…綺麗ニ…シナキャ…』


モーカッナー「…金か!ああああ、そうだよな!い、違約金ならくれてやる!だ、だからこの件は一度白紙に戻…いや、撤回しよう!」


『人魚ヲ探シテ捕マエテ…』


モーカッナー「来るな…来ないで!待って!助けて!お願い!」


『モット、オカネモチニ…ナルゥゥゥ』


モーカッナー「うわああああああ!」


そこから彼の意識は消え去り今に至るのであった…

お読み頂きありがとうございました。


もしも

・面白い

・続きが気になる

・なんじゃこりゃあ!

などと思いましたらブックマーク、お気に入り登録お願いします!


皆さんに見て頂けること自体が嬉しいことですし、これからも貴重なお時間を共に過ごせるよう頑張って書いていければと思いますので応援よろしくお願いします_(:3 」∠)_

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