紫色と燻んだ鉛
所変わって別の街の路地裏。
ここではカラーバレッツの1人であるアマランスが屍異奴と対峙していた
アマランス「はぁ…今回はパラサイトかぁ…」
屍異奴「ドウだ!?オレをコロしタインだろウガ、ニンゲンが一緒じゃアそうモいかネェだろ!!」
アマランス「んー?何言っちゃってるわけ?それよりお前…頭が高いンだけど…」
アマランスは躊躇なく手に持った銃で侵蝕され続けている人間ごと撃ち抜いた
屍異奴「ぐぁ!?」
アマランス「だいたいさぁ、何でキミ達みたいな卑しいヤツらと王様の僕がァ?!話さなきゃいけないわけ?ありえないんだけど!オマエらが出続けるからシルバとも全然会えないしぃ!オマエらのせいだぞ!オマエら!オマエら!オマエらのせいだ!屍異奴を出す原因になった人間も一緒だ!オマエらのせいで僕は…」
頭を何度も踏みながら罵声を浴びせ続ける
屍異奴「ぐぅ…!チョ…調子に乗ルなよ!」
腕を鋭利な棘に変化させ、伸ばし突き刺そうとするが、
アマランス「…そろそろかな」
屍異奴「ゔゥ?!」
屍異奴は急に苦しみ出す
アマランス「咲きな。」
屍異奴「アアアアアア!!」
地に伏せ苦しむ屍異奴の背中から小さな紫色の花が一輪咲くと同時に、屍異奴は沈黙した
アマランス「紫毒陽花…相変わらず汚い花だな」
咲いた花を踏みつけ、その場を後にするのだった。
アマランス「…今回の仕事はこんなもんかな。
はぁ…。早くシルバに膝枕してもらいたいなぁ。…ん!?」
雑踏の中、呟きながら歩くアマランスは背後から気配を感じて振り向く。すると目の前に立っていた白衣を着た男が話しかけてきた
白衣の男「…籠の中の鳥が外に出たがっているようですね…ごきげんよう。ブラド王国第6王子、ウィルヘイム・ジョルキーア様。」
アマランス「気に入らないね…何なの?見ず知らずのキミが王様の僕をその名前で呼ばないでよ。誰なのさ、キミ。」
白衣の男「失敬。しがないヤブ医者ですよ…。いずれにせよ解放しましょう。その籠から…」
アマランス「はぁ?訳わかんない…卑しい奴め。話すだけ無駄だね」
背を向け立ち去ろうとしたアマランスだったが
白衣の男「限界突破。狂科学者…転生」
白衣の男はそう呟くとアマランスの頭に乗っている欠けた王冠へ触れた
アマランス「!? 僕の王冠に…触るな!」
激昂したアマランスは銃を構え弾を放つが、弾は別の人間に当たり先程の屍異奴戦のように小さな花を咲かせ絶命させる。
急に人が死んだ場面に居合わせた周囲の人々は恐怖し、四方へ逃げるように散って行った
白衣の男「愚かな王子よ、その小さく欠けた王冠はまるでキミの器を表しているようじゃないか。さてさて、そんな王子が持つ籠からは一体どんなモノが飛び出してくるのか…じっくりと観察させて貰おうかね。クククク…ハハハハハ!」
死体が倒れた路地に男の声がこだまする
アマランス「黙れ…黙れぇぇ!」
紫毒陽花が生えた死体は土塊のように崩れ去っていく。
白衣の男「…急なこととはいえ、誰一人倒れた人を助けようとしない。やはり人は己の生に固執する生き物ですよ…ね、師匠…。マスターウラヌス。」
大声で叫ぶアマランスをよそに白衣の男はそう呟き、手を布で拭いながらその場を立ち去っていく。薄暗い路地には彼の靴音だけが鈍く響き渡っていった
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ウラヌス(ノワール)「む、この気配…ダビルか…。よりにもよってアマランスに接触するとは…。」
遠く離れた星都にて秘かにカラーバレッツを率いているノワールことウラヌス。そんな彼を師と呼ぶ白衣の男、ダビルの接近を察知したのか、大急ぎでアマランスに対して召集命令のまじないを発動させる。
一方、アマランスはダビルの接触により錯乱していた。姿無き存在を求めて周囲を手に持った銃で撃ち抜こうとした瞬間に銃に彩られた紫色の刻印が光り出す
その瞬間に我に返ったアマランスはため息をつきながら絵筆を取り出し、地面に円を描いてノワールの呼びかけに応える。
やがて身は沈んでいき、特殊な空間に移っていく。しかし以前のように他のカラーバレッツのメンバーの姿は見当たらない。
アマランス「…何さ、来ているのは僕だけか。それに随分といいタイミングで呼んでくれたじゃあないか…ノワール。」
ノワール「契約通りしっかり呼びかけに応えてくれたことは評価しよう。じゃが街中で暴れ回るのはよくないのう…」
アマランス「与えられた武具に刻まれた印が光る時、いかなる場合でも地に円を描き、その呼びかけに応じなければならない。それがこの力を得る条件として交わした契約。
だけどそんな文句を言われるためだけに呼び出さないで欲しいなぁ!こっちにもプライベートってのはあるわけだしさあ!?」
ノワール「最大限の努力はしておるつもりじゃよ。しかし、それ以前に、我々の目的は屍異奴を抹殺することだということを忘れないで欲しい。
その為に与えたソレは使い方を誤れば最も簡単に人を殺めてしまう。そして容易に人を生命の危機に陥れる。そこから予想できる事は…何じゃと思う?」
アマランス「あーはいはい。撃たれた者や周囲の者達から生じる“生への執着”から新たな屍異奴が生まれる…でしょ?」
ノワール「そういうことじゃ。…さて説教は終わりじゃ。本題に移ろう。お主、あの男に何をされた?」
アマランス「お見通しってわけか。まったく、わざわざ聞く必要があるのかねぇ…僕の王冠に気安く触ってきた上に、僕を本当の名前で呼んだんだよ。気に入らないヤツだから殺してやらないと気が済まないんだよ!!」
ノワール「そうか…。限界突破!星詠…アンドロメダ!」
暗い空間が眩い光に包まれ、星座の力を解放すると青白く輝いた鎖が現れる
ノワール「言霊より出し記憶を封じよ…メモリアルチェイン。」
鎖はアマランスの頭部を透過して入り込み、消えていった。
人間は記憶を持ち、それを言語化する。発した言葉は言霊と呼ばれ、時には新しい力を呼び起こす鍵になることもある。
アンドロメダ座の鎖にはいくつかの能力があるが、その1つであるこのメモリアルチェインは相手が発した言霊を辿り、元となっている記憶を繋ぎ、封印する一種の封印術。
しかし使用後に自身と相手に多大な負荷が掛かることから、安易に使用しないよう己自身も封印している。
以前にフィリアが掛かっていた強い言霊を発することで解放される成長阻害とは相反するまじないである。
ノワール「あまり使いたくは無いが、ダビルと遭遇した記憶は封じさせて貰うぞ。未熟なお主の持つ物にヤツが触れた以上、それを認知したことから始まり生まれる“何か”。このまま捨て置くわけにはいかん…」
記憶の封印を受けたアマランスは意識を失うと膝を折り、その場に倒れ込む。
そんな彼を優しく包み込むように抱きかかえる者がいた
シルバ「おっとっと…」
力なく身を委ねているアマランスをシルバは抱え寄せ、座り込んだ自身の膝の上に乗せる
シルバ「ふふふ…よしよし」
母親が子供をあやすように頭を撫でるとアマランスの表情も自然と和らいでいった
ノワール「すまんの。急に呼び出したりして…すまんがあとは任せる…」
シルバ「はいは〜い。可愛い顔でぐっすり寝てるから…静かにね…」
人差し指を口元で立てるシルバを見たノワールはよろめきながら先に空間から立ち去って行く
シルバ「最初から見てはいたけれど、荒んでるね…。欠けた王冠も、国を追われ、名乗ることを禁じられた王子としての名前、どっちもまだ捨てきれないんだよね…。そういう覚悟が決まらない優柔不断な子…好きよ。いつか戻れるかもしれないっていう淡い期待を持ち続けて四苦八苦してるところ、とてつもなく愛おしい…ああ、愛おしい…」
狂気にも近い恍惚とした表情を浮かべたシルバはアマランスを見つめながら頭を撫でる。細く伸びた指が不意に王冠に触れると王冠に埋め込まれた宝石から蔦のような物が具現化し、指を絡めた。
気づいたシルバはまるでゴミを払うかのように手で払うと蔦は力なく指から離れ、だんだんと消えて行った
シルバ「…汚い。」
先程の表情から一変し、冷めた目で睨みながら小さな声で呟く。
そして静かにアマランスの顔を自身の膝から下ろし、足速に空間から去っていった
アマランス「…寒いよ…寒いよ…母さん…」
特殊な空間に取り残されたアマランスはうずくまりながら眠り続けている。
震えて悲しげな寝言を唱えながら…
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