秘める思いは誰が為に
一方その頃、斬鮫を背負うグレイと石の剣を取り戻したシンは小さな村に辿り着いていた
村人「うーん…そんな人は見てないなぁ…悪いね。」
シン「そうですか…。すみません、ありがとうございます。」
グレイ「…それにしても何やら騒がしいですが、何かあったんですか?」
村人「ああ、実は…人魚様の歌が聞こえたんだよ!」
シン「人魚?」
村人「昔っから人魚様は恵みをお与えになる存在だって言い伝えられてるだよ…。この間、病死した村外れに住んでる娘を弔ったんだが、海から聞こえてきた歌声がその娘の声ソックリでな…。娘の呪いなんじゃないかって騒ぐ者もいて、真偽を確かめに探しに行こうかって話していたんだよ。」
シン「そうですか…そうだ!あの、もしよければ我々も同行させてくれませんか?!」
グレイ「シン?」
シン「流れついた我々はこの島の地理に詳しくない…。それにこちらも人を探してますし!よかったらお手伝いさせてくれませんか?」
村人「なるほど…見たところ悪い方ではなさそうですし、村長に相談してみましょう!あいにく今は別のお客人も来ていますが…」
村長の居る小屋まで案内されるが、先約が居たそうだ。声が漏れており、一行は聞き耳を立てる
村長「…ではこの島をその…りぞーとあいらんど?にされるとのことですかな?モーカッナー殿。」
モーカッナー「ええ。この島は実にいい…。自然に溢れ資源も豊富。私はもっと多くの人々に知って貰いたいんです!今、世の中の人々は疲弊しきっております…そこで!この島に豪華な宿泊施設を作り、我々の客船でご案内し、お客様に優雅なひと時を提供する…。ご協力いただけるのであれば、もちろん村に毎月その売り上げをお分けしますし、人の往来が増えれば、この村に物資を運べて生活もより豊かになりますよ?悪い話ではないかと…」
村長「しかしなぁ…」
村長の息子「父さん!ぜひやろうよ!今よりいい暮らしができるんだよ?!」
村長「アンダダよ、今は人魚様の一件もある。今はこれ以上騒ぎ立てるのは…」
アンダダ「あんなの聞き間違いだって!だいたい彼女は死んだんだ…。海に送った彼女が戻ってくるはずないだろう?」
モーカッナー「ん?何です?人魚?!」
アンダダ「あ、いえね、先日亡くなった村1番の歌声を持つ娘の声にソックリな声がこの間、海から聞こえてきたそうなんですよ…。村の者の中には人魚様の歌声だと言う者もおりまして…」
モーカッナー「実に素晴らしい!それがもし本当ならば、是非ともその人魚にも我々のリゾートアイランドの歌姫になってもらいましょう!」
村長「…。せっかく来てもらって申し訳ないが、帰られよ。」
モーカッナー「し、しかしこういったプロジェクトをアジャストするならスピード感が大事でして…」
村長「帰られよ」
モーカッナー「え…ええ。で、では今回はひとまず帰りましょう…また日を改めて…。ぜひ前向きにご検討くださいね…」
不貞腐れた態度で呟き、ため息をついたモーカッナーは荷物をまとめて出て行った
アンダダ「父さん!なんで断ったんだ?!」
村長「この島は自然と共にある…。我々が島を生かしておるわけではない。島から恵みを分け与えて貰うことで生きながらえておるんじゃよ。この関係が崩れた時どうなると思う?自然は壊され、人が踏み荒らした地には芽は生えて来ず、潰えてしまうのじゃぞ?」
アンダダ「そうならないように物資を運んでもらう環境を整えていけばいいんだよ!だいたいそんな村外れの漂流者みたいな考え方はもう古いんだよ!」
村長「先のことを考えると、お前の言っておることは間違ってないのやもしれん…。じゃがワシはどうにも解せん。嫌な予感がするのじゃ…。それに、ヤツの…タムンの娘が愛した島を守ってやろうという気持ちは無いのか?仮にもお前の婚約相手じゃろうが…」
アンダダ「ふん!馬鹿馬鹿しい!もうこの世にいない人間の言葉に縛られてずっと生き続けられるかってんだ!まったく、話になりゃしないぜ!」
机を叩き、激しく言い捨てたアンダダは勢いよく部屋を飛び出して行く
村長「ま、待てぃ!まだ話は…うっ!」
追いかけようと椅子から立ち上がった村長は立ちくらみを起こし、よろめいた。
村人「村長!無理しなさんな!」
村長「むぅ…すまんの…。ん?一緒に居るおふたりさんは一体…?」
シンとグレイは事情を説明した
村長「なるほどのう…お仲間がのう…探すのは良いと思うが、どうか人魚様の件については深入りせんでくれないかの…。」
シン「なぜです?不安に思われてる村人もいると伺いました。彼らの為にも真偽を明らかにすべきでは?」
村長「…分かっておる。じゃが、今はタイミングが悪い。見つけて捕まえようとする輩がおる限りはな…。」
グレイ「さっきの成金野郎か…。まったく都合の良いことだけ吐き散らかす信用ならんやつだったな…」
村長「そう悪くは言わんでくだされ。確かにあの提案は島民にとっては…いや、ワシ個人としてはとても魅力的な内容だったんじゃ…。じゃが、人魚様までも商売道具にされてしまっては困るのでな。」
シン「…それは『人魚様の為』…ですか?」
シンは鋭い目つきで問いかけた
村長「んむぅ…勘のいいお方じゃ。さっきも言った通りワシ個人…いや、この場合は『島に住む我々の為』と言うべきかの。見ての通りこの島は海に囲まれた孤島。生きて行くには過酷な地じゃ。人魚様がもしも見つかってどこかへ連れていかれてでもしたら、この島は…我々は飢えて死んでしまうのではないかと思っての…。」
グレイ「…詳しくは知らんが強いて言うなら、そうならないように別の方法を考えていくことが、村を…島を守る長としてすべきことだと思うぞ?
ちなみに農作などは…やっているのか?」
村長「ええ。ですが、つたないものでして…」
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グレイは村長に案内された畑で土を触っていた
グレイ「イモを育てるならあまり肥料は入れない方がいい。葉っぱだけ大きくなってしまってイモが大きくなりにくいんだ」
村人「なんと!そうでしたか…」
グレイ「あとは…」
あっという間に日が暮れてしまった
グレイ「…ん?もう日が…」
シン「申し訳ない…。あまりにも熱心だったから口出し出来なくて…」
グレイ「い、いやこっちこそすまない。つい昔を思い出してしまった…」
村人「いやぁ色々教えて頂きありがとうございます…。せっかくですから今夜はウチに泊まって行ってくださいな。」
グレイ「あ、ああ、しかし俺達は…」
村人「村長から伝言を預かってますよ!「好きにしていい」って。気が済むまでやってみなさいってさ!」
シンとグレイは拳を合わせた
一方その頃…
モーカッナー「何かな?話とは?」
アンダダ「さっき話してくれた計画、ぜひ進めて欲しいんだ。」
薄暗い海辺。潮が満ちている浜にて2人の男は密かに話を進め始めた…
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